64. Unknown | 我ここに在りてここに無し

我ここに在りてここに無し

青きBOUGAの果て

ひとりごとのように

詩と小説を書き綴ります。

何か心に響くものがあれば

それだけで。





錬太郎とヒマちゃんは神殿のような建物に近づくと、錬太郎の手を握りながら言った。




「これから錬太郎が見たり聞いたりしたとを、貴方の記憶から消し去ることは簡単だけど、私はそれをしたくない。なぜなら、錬太郎がこの世界を知った上で、現実の生活の中で貴方がどう変わっていくのかを知りたいの。これはとても危険なことだけど。私は生きながらえる意味を失い掛けているの。死の訪れない世界、老いることの無い世界、実体の無い。。。この世界の意味を知りたくなったの。だから、錬太郎がその答えを見せてくれるような気がして。今までの貴方を見ていてそう思ったの。アッ君も貴方の行動を見て、そして言葉を聞いて変わった。もし、この世界の存在する意味を錬太郎から私が感じ取ることが出来たなら、私には。。。することがあるの。。。錬太郎が彼であると。。。私は信じているの。。。」




「彼?彼って誰だよ?。。。。ふーん。そっかぁ。なんだか難しそうだな。。。でも、まぁいっかぁー。いいよ。もう、何も驚かないさ。俺は自分が何者なのかを知ることができればいい。それから先はヒマちゃんが決めればいい。俺の記憶なんて消しても消さなくてもどっちでもいいよ。ただ、俺のそばにいて俺を支えてくれる仲間には何もしないでくれ!もう、これ以上仲間を失いたくない。目の前で消えるのは沢山だから」




「わかった。でも、錬太郎が自分の仲間と言っている人たちって。。。どこまでなの?」



「そんなの決まってる。人類だ!全てだよ!」



「そっかー。うん、わかった。じゃ、行こうか♪」





 ヒマちゃんは、寸分の隙間もなく石で精密に作られた高さ50メートル以上もあるような門の前に立ち両手を正面に向け手のひらをかざした。そして。。。








「ホイッ♪」








 と言った。




 すると、その正門と思える扉が奥へと、音もなく滑らかに静かに開いていた。




 扉の向こう正面には神殿のような建物、そして周囲を囲むように生い茂る木々が。。。ふと足元を見ると、石畳みの上を這う無数のアメーバのようなものがうごめいていた。




「あっ、錬太郎。。。それ踏まないようにね♪」





「えっ、何これ?」





 錬太郎はそれを見てヒマちゃんの顔見た。





「ふふ^^。。。あれはまだ男女の区別もなく人の形を成す前の姿よ。この世界には1億3000万くらいの魂があるのよ。その中で少しずつ粘体として成長し、その中から念体となり、より実体に近い姿に投射されていくのよ。ヒマも昔はあれだったのよ^^」





「えーーーーーーーーーーーーーーーーーーっ。。。ってことは。。。俺も?そうだったの?」






「まぁね^^。。。で、彼らは少しずつ成長していくなかで錬太郎の目に人間として映る形になっていくの。私たちはどんな実体にでもなれるのよ。どんな美しいものにも、そしてどんな醜いものにもね。。。人でも動物でも、そして化学的物質や機械にもね。自分の体に引き込みながら。。。物質の組成、形態を自分の中に取り込むって言った方がいいかな。。。そうして色んな実体に自分を投射し見えるようにするの。だから、今何かを取り込もうとしているのが、あのアメーバーみたいな粘体なの」





「ぐにゃぐにゃしてて、気持ち悪いぞ。。。」




「貴方も!そうだったの!♪」





「やっぱり、来なきゃよかったかな。。。」




「もう、遅い^^」









 石畳みの上をうごめくアメーバー。。。




「アダムとイヴの話は知ってるでしょ。彼らだって男女の区別なんて最初無かったんだから。アダムだって、初めは人間じゃなかったの。男女の区別が無かったから。でも、彼は自分の身体についた余分なものを削ぎ落とそうとしたのよ。でも、それを沈めたのがイヴ」



「沈めたって?」



「もう、いいから。その話はあとあと」



「あっ、はぁ。。。」





 アメーバーを踏まないようにしながらヒマちゃんと錬太郎は神殿の中に入った。空気が一瞬にして冷え込んでいた。体が身震いするようなくらいの冷え込みにも似た周囲からの威圧感だった。









「あれっ?錬太郎?どうしたの?」



「ここ。。。寒くないか?」



「あっ、そっかぁ。。。ごめんごめん」









 そう言うと、ヒマちゃんは錬太郎に両手をかざし









「ホイッ♪」









 と言った。


 

 すると錬太郎の体の冷えが消えた。








「何?今の?それと、そのホイッ♪って虫観るチームも言ってたけど、何か意味があるのかな?」





「あっ、今のは貴方の体の組成を変えたの。貴方も昔は出来たはずよ。でも、人間の世界に長くいたからね。私が手伝っただけ。ここは、空気がとても澄んでいるの。無菌室みたいなもの。風も無いし音も無い。熱を発するものも全て遮断しているの。”ホイッ”って、本当は”あっち向いてホイッ”のことよ^^」



「えーーーーーー!それってふざけるのか?」



「冗談よ^^意味なんか無いわよ。だつて、アッ君の洒落だったから♪錬太郎にも馴染みがある言葉でしょ!♪」



「おいおい、どこからどこまでが本当なんだよ。洒落にならないよ。。。まったく」



「まぁ、いいから。ねっ、正面の銀色の箱があるでしょ!乗って」




 二人は神殿の中央に置かれた銀色の鉄か何か素材の分らないものの箱に乗り込んだ。


 えっ、またいで乗るの?なんとも原始的だな。。。と錬太郎は思った。。。その次の瞬間。。。神殿の上階へと瞬時に移動していた。




 そこで見た空間とは。。。氷の世界だった。。。



 天井らしきものは無く、頭上には太陽と月が二つずつ並び。。。氷河期を思わせるほどの氷の山が二人を取り囲んでいた。。。




 しかし、寒さは感じない。。。



つづく