63.The first civilization | 我ここに在りてここに無し

我ここに在りてここに無し

青きBOUGAの果て

ひとりごとのように

詩と小説を書き綴ります。

何か心に響くものがあれば

それだけで。





 自販機の扉が開いた。




 錬太郎は、扉が開いた瞬間、自分の中の記憶が呼び起される感覚を覚えた。特に驚きもなく、穏やかな世界へと引き込まれるかのように。。。自然な。。。そして穏やかな。。。


 


 扉の向こうは漆黒の闇に包まれていた。暫くして僅かな光が扉の奥の遥か彼方からオレンジ色の光が錬太郎へと向かってきた。








「よっ♪錬太郎ちゃん」








 ヒマちゃんだった。









「あのさぁ。。。少し落ち着かせてくれよ。。。ヒマちゃん。。。頼むよ。。。今やっと自宅に帰ってきたばかりなんだぞ。。。もう。。。勘弁してくれよ。。。」





「あっ、いいのいいの。気にしないで」



「それはヒマちゃんの台詞じゃないだろう!」



「もう、驚かないでしょ♪少し話があるから。。。ついて来て♪」



「はぁぁぁぁぁ。。。」









 ヒマちゃの服装は古代ローマ時代といえるような。。。映画で見たことがあるけど。。。ベンハーだったかな。。。と錬太郎はボーっとしながらヒマちゃんの後をついて自販機の中へ足を踏み入れた。




 錬太郎はヒマちゃんに促されるまま、光源へと漆黒の空間を進んだ。足元に何かがあるとは思えなかった。足底部からの感覚のフィードバックは無い。本来なら人間は深部感覚や表在感覚により脳内部の平衡感覚と情報を統合統制し、身体の各部位へ電気信号を送り筋肉等にフィードバックさせバランスよく歩行移動するものだろう。





 しかし、この空間では全く感覚が無いのだ。目は開いているが、そこから情報が入ってきているという感覚も無い。全てが脳の中、いや、心の中の自分が感じ取り歩いているようだった。肉体の感覚が無いのだ。





 光源に近づくにつれ視界は開け、海原と雲一つない空、そして。。。視界正面には。。。とてつもない。。。言葉では言い現すことのできない大きさの山。。。いや、神殿のようなものが海に浮かんでいた。







「もう、この空間が何を意味しているか。。。そして貴方が何者であるか。。。おおよそ理解できるでしょ。ね、錬太郎」








「そんなこと言われてもな。。。」








 二人は海の上を歩いていた。しかし、足元が濡れることもなく、音もなく圧倒されるほどの大きさの塊に向かって進んでいた。







「前にも、貴方は自分の体のことで何か気付いたことがあるよね」




「あぁ、確かにあるよ。怪我とか病気とかしたこと一度もないんだ。誰にも言えなかったけど」




「そう。人類の起源は肉体では無いのよ。。。自分の心を物質に投射しているだけのことなの。錬太郎は今、1000万年も前の地上に存在していことを走馬灯のように記憶から呼び起そうとしているの」


 

 錬太郎は、自然にヒマちゃんの話を聞きながらあるいていた。歩く速さなど、風よりも鳥よりも、そして時間さえ、刻まれぬ時でもあるかのように空間を移動しているといった状態だった。







「ねぇ、ミノア文明って知ってるよね。エーゲ海のセラ島で9000メートルの火山灰に埋もれていたミノア文明のこと。プラトンも言ってたでしょ、9000年前に大西洋に沈没した巨大島のこと。。。錬太郎なら知ってるでしょ」







「あぁ、知ってる」







 彼の記憶は呼び起されつつあった。








「ここが、どこかも理解できるね」







「あぁ、わかるさ」









 
 いったい、錬太郎はどの時代の人間なのだろう。。。






 そして。。。この世界は。。。自販機伯爵。。。



 いや、アッ君とヒマちゃんの世界であることは確かだが。。。





 The first civilization。。。?




 ここに何があるのか。。。錬太郎は誰なのか。。。




つづく