澤井錬太郎は医療関連のシステム開発会社に勤める中年サラリーマンだった。自宅マンション近くにあるアイスの自販機にコインを挿入するところから、彼の非現実的な世界を行き来する旅が始まった。
自宅マンションから飛び出してきた男と玄関でぶつかり、彼が落としたと思われるUSBメモリーを拾い、好奇心からそのファイルを自宅にあるPCで開いた。
その途端、彼は南海の孤島に放り出されMUSIMIRU-TM・・・虫観るチームという紀元前1億300年頃に地球に来たという彼らと出会い、彼らは錬太郎の脳内部にモニターを装着し彼を通して人間の行動からその思考過程を観察をし始めたのだった。
虫観るチームのメンバーは直に人間の思考過程に触れながら奇妙な生活が始まった。
彼らは、錬太郎の過去の恋人で大学時代付き合っていた今野美由紀という女性との再会を機にした感情の変化、そして友人の茂木和也が錬太郎のマンションに転がり込んで来た様子などを観察しながらミィーティングを行っていた。錬太郎自身もそのミィーティングに参加し始め、錬太郎の思考過程の曖昧さに虫観るチームのメンバーが触れ、理解不可能な感情が芽生え始めていた。
彼らには感情は無かったのだ。そこで、彼らは錬太郎自身が創りたす架空の物語の中に虫観るチーム自身を置き、直接錬太郎との関わり合う中で心という摩訶不思議な脳内に於ける感情を体験しようとしたのだった。
更に、過去の人類において人間の中に住んでいた、より人間に近い特徴的な思考から生まれたとされる”いたずら”と”あわてんぼう”という虫観るチームには無い要素を持つウイルスが既に錬太郎の体内に仕込まれていた。それは、錬太郎が無人島に飛ばされた時、虫観るチームがモニターを装着する儀式なるものを行い、その際錬太郎にビールを飲ませていた。
そのコップに入ったビールに、人間の特徴的な思考を持つウイルスが仕込まれていたのたった。
虫観るチームのメンバーは、それぞれの分野で秀でていたのは確か?だが、どうもその観察方法や思考過程が偏っていしまう傾向にあった。この実験は過去の文明において幾度も行われていたらしい。そこには必ず進化したウイルスがて仕込まれていたのだった。それが、いたずら好きのアッ君とあわてんぼうのヒマちゃんだった。
やがて、アッ君とひまちゃんが人類を創造した真の創造主であることを錬太郎は知ることになる。
アッ君は人間を創造し、現代社会の中でどこにでも存在する無機質な自販機を通し、人間世界を観察し続けて来たのだった。そこに笑顔で言葉を交わす一人の中年男性を彼は見た。想像主であるかれらは過去の人類において幾度も実験を重ねてきたが、自分たちが作り出した人間のプログラムに無い感情というものに戸惑っていた。
創造主らは、自ら考え、こうありたいと望む全てのことを現実化し具現化する能力があった。しかし、彼らはその能力に甘えるが故、人類を幾度となく滅亡の危機に陥れていた。そのことに気付き、自らが創り育て上げてきた人間から、今、自分たちに無い”愛”というものを一人の中年の思考から学ぼうとしていたのだった。
そして、もう一人の創造主であるヒマちゃんは、草木や花といった自然界に生息する植物や動物を創造して来たのだった。彼女も、草木や花といったものに感情は存在しないと考えていた。しかし、錬太郎がそれらに感情があるかのように微笑み語り掛ける姿を見て、過去、死に至る寸前の錬太郎を生き返らせていたのだった。自らの分身を使い錬太郎の感情をもっとも近くて観察していたのだった。
錬太郎は、虫観るチームから出された課題として自分の創る物語り、彼ら虫観るチームと心を交わしながら紫陽花裕子、泉、そして仲間たちを必死に支えていた。そして、自らの命と引き換えに彼らの消滅を回避しようとした。
その時、錬太郎はマウントと呼ばれる廃墟となった旅館で、創造主であるアッ君と”愛”について語ることとなった。アッ君は、自らが創りだした夏菊瑠菜を消し去り”愛”という曖昧な感情を強く感じ始め錬太郎が創った世界に留まることを決めたのだった。
一方、錬太郎はマウントから自分が創りだした世界へ戻ることを選び、虫観るチームと再会したが、紫陽花裕子と泉の二人はヒマちゃんの分身であることを知ることとなる。
彼ら創造主の二人はいたずら好きと慌てん坊。錬太郎は翻弄されながらも、二人の創造主に”愛”を感じさせていった。こんな曖昧な中年男が”愛”を語り、全ての人を支えようとしていたのだった。
錬太郎は自分が創った物語の世界に生きる意味を失いかけていた。それを感じ取ったあわてん坊のヒマちゃんは、こともあろうに二つの世界を一つにしてしまったと言った。
錬太郎が以前住んでいた世界と彼が創りだした物語の世界を一つにしてしまったのだ。
再び、整合性が取れるはずもない世界へ錬太郎は入り込むことになる。
人を守りたいと、誰一人自分の知る世界から消し去りたくないと自分を消し、再び自分の創り出した物語の世界へ戻ることができたが、その多くの人たちに支え助けられた世界で愛する人を再度目の前で失うことになる。
たとえ擬似的な体験だと自分を納得させようとしても、余りにも心が疲れ果てていた。
そして、今、ヒマちゃんという額紫陽花の植木鉢を抱え、深夜の自宅マンションの前に辿りついたのだった。
果たして、一つになった世界に、どんな錬太郎の生活が待ち受けているのだろう。
創造主らと、ごく普通の独身中年おやじの奇妙な生活が今新たに始まろうとしていた。
Sorrow後編のスタートです^^
掲載頻度は不確定ですが、ご容赦の程を^^