第三話 「二人で一人」 - ② | 我ここに在りてここに無し

我ここに在りてここに無し

青きBOUGAの果て

ひとりごとのように

詩と小説を書き綴ります。

何か心に響くものがあれば

それだけで。



『Stone and leaf』



 石ころ君と葉っぱさんは一つの身体になり、お散歩も食事もいつも一緒です。そして、森の仲間達とも楽しくお話しできるようになり、毎日が楽しくてたまりません。葉っぱさんは、いつも手足になってくれている石ころ君に心の中に感謝しながら話し掛け二人は幸せでした。

 ある日、葉っぱさんにお手紙が届きました。

「拝啓 葉っぱさん。隣の森の葉っぱです。とても素敵な鳥君と一緒に暮らすことになりました。満月の夜、仲間の葉っぱさんたちがお祝いをしてくれるというので、葉っぱさんも是非いらしてください」

 という内容でした。

そして、葉っぱの手紙と一緒に隣の森の葉っぱさんと暮らすことになった鳥君の似顔絵が添えられていました。

 葉っぱさんは隣の森の葉っぱさんの家まで出かけることにしました。まだ、満月の夜まで3日あります。翌日、日が昇ると葉っぱさんは朝露で身体を洗い、おめかしをしてテクテクと森を歩いて行きました。心の中いる石ころ君はいつも一緒です。すると、そこへカラスさんが声を掛けてきました。




「葉っぱさん、そんなにおめかししてどちらへお出かけ?」



 葉っぱさんは




「隣の森の葉っぱさんのお家まで行くんです。友達の葉っぱさんが鳥君と暮らすことになったの♪」




 と答えた。カラスさんは




「そうですか。それは素晴らしい♪葉っぱさん、今日はとても笑顔で楽しそうに見えますよ!気をつけていってらっしゃい♪」




 と言いました。


 するとカラスさんが言い忘れたように戻ってきて




「そのお友達の葉っぱさんと鳥君は何というお名前ですか?私も隣の森に明日出かける用事があるので仲間のカラス達にもお祝いを贈るよう話しておきますから」




 と言った。すると葉っぱさんは




「名前は、隣の森の葉っぱさんです。鳥君は鳥君です」





 と答えた。するとカラスさんが言いました。





「おかしいな???それじゃわからない」




 と言われ、葉っぱさんは




「葉っぱさんとか鳥君じゃ駄目ですか?」




 とカラスさんに聞き返しました。カラスさんは





「葉っぱさんって呼んだら仲間の葉っぱさんが沢山振り向くと思う。カラスはみんな真っ黒だけどそれぞれ名前があるんだ。だから迷わない。名前を呼ぶと、呼ばれたカラスだけが飛んで来るよ~カァーカァーって!」




 と言いました。そう言ってカラスは山の奥の森へ飛んで去って行きました。


 葉っぱさんは森を出る前、神様に会いに行くことにしました。




「神様、どうして名前がいるの?」




 と聞きました。

 



「どうしてかな?この私の目の前にいる葉っぱさんは、たった一人の葉っぱさんだから話し掛ける時には葉っぱさんでいいけど、葉っぱさんの仲間が沢山いると、私が葉っぱさんと呼びかけてもみんなが私を見る。きっと、他の葉っぱさんじゃない、今私の目の前に居る葉っぱさんだけを皆の中から呼ぶために名前は必要かもしれないね。でも、今の葉っぱさんは石ころ君の硬い身体もあるし、歩いているから他の葉っぱさんとは違うよね」




 と神様はいいました。



 「でも、他のみんなと同じ呼び名のまま。私名前が欲しいわ。それに沢山の仲間の中で他の誰かを呼ぶときも大変なの。隣の森の葉っぱさんは私の中では一人だけど、隣の森に住んでいる葉っぱさんはみんな同じ呼び方だから。やっぱり、みんなの中からちゃんと選んで呼んでもらうために名前はあった方がいい」




 と葉っぱさんは神様に言った。すると神様は




「そうかぁ。私は葉っぱさんという名前しか考えていなかった。では、私ではなく森の他の仲間達に聞いてみてはどうかな?みんなから名前をつけてもらっては?」



 と神様は言いました。


 葉っぱさんは、歩きながら森のみんなに自分の名前をつけてもらおうと、色んな動物や草花や木々やお月様、そしてお日様にも聞きながら森の中を歩いていきました。

 石ころ君は、葉っぱさんの心の中で静にみんなの声を聞いていました。



 葉っぱさんは森のみんなに自分の名前を聞きながら歩きました。

 
 森の中を歩いていくとオオカミ君に会いました。オオカミ君は




「葉っぱさんは頭だけ葉っぱさんらしいけど、他は石ころみたいに硬そうだから名前をつけるのは難しいよ」




 と言いました。次に出合ったのはリスさんでした。リスさんも




「もとの葉っぱさんなら名前をつけてあげられるけど、今の葉っぱさんは歩いているから名前をつけるのは難しい」



 と言われました。


 次に小さなお花さんにであいました。お花さんは



「葉っぱさんらしい名前をつけてあげたい。だけど、葉っぱはフワフワヒラヒラ風になびいたりするのに葉っぱさんは歩いているし身体も硬くて重そうだから可愛い名前が浮かばないの」




 と言いました。


 葉っぱさんは大きな杉の木さんにも聞いてみました。すると大きな杉の木さんは




「葉っぱさん、僕は葉っぱさんがヒラヒラフワフワ風になびいているのが好きなんだ。手足があって人間のように歩いている葉っぱさんに似合う名前は思い浮かばないよ」




 と言いました。



 葉っぱさんは、誰も名前をつけてくれないので悲しくなりました。心の中の石ころ君が言いました。




 「葉っぱさん、僕達一つになって歩けるし、顔も首も手足も揃った。他のみんなと同じように声も出せるし笑ったり泣いたり怒ったり、そして花の香りもわかる。美味しいものも食べられるようになった。神様が言ってたように心を一つにして幸せに過ごしていると思った。でも、葉っぱさんは悲しそう?やっぱり、もとの葉っぱさんがいいのかな?みんなは、きっとフワフワヒラヒラ舞ってる葉っぱさんがいいんだよ」




 すると葉っぱさんは




「石ころ君もそう思うの?私がもとの身体にもどった方がいいと思う?」




 と悲しそうな声で石ころ君に心の声で語りかけました。
 


 夜になり、二人は少し疲れたので休むことにしました。二人はなかなか眠れません。夜空には星さんがキラキラ輝きながら遊んでいました。すると、とても明るい大きなお月様が葉っぱさんに話しかけてきました。






「おやおやどうしたの葉っぱさん?どうしてそんなに悲しい顔をしているの?」




 葉っぱさんは




「私に似合う名前が無いんです。仲間は誰も私に似合う名前をつけてくれません」




 と泣きながら言った。お月様は




「そうかぁ、今の葉っぱさんは歩けるし首も胴体も手足もある。泣いたり笑ったり怒ったり、人間と同じように振舞うことができる。でも、葉っぱさん。。。できることが沢山増えたら幸せになったかい?」




「えっ?お月様?それはどういうことですか?出来ることが沢山増えたら幸せでしょ!だって、今までみんなに会って私には無いものを神様から貰ったんです。幸せだと思っています」




 と葉っぱさんは言った。




「そうかな?。。。それぞれに。。。それぞれの心と姿があるんだよ。。。自分に無いものを欲しがるとき。。。悲しみが訪れ。。。そして。。。争いが起こる。。。葉っぱさんの今の心はどうして悲しみが生まれているのだろうね?解るかい?」




 お月様は葉っぱさんに静に語りはじめた。





 つづく