36.A contract | 我ここに在りてここに無し

我ここに在りてここに無し

青きBOUGAの果て

ひとりごとのように

詩と小説を書き綴ります。

何か心に響くものがあれば

それだけで。






電車が一駅過ぎて錬太郎は。。。




「あっ!マリちゃんとの約束。。。しまった。。。」





 と、電車の中で声を出して言った。



 明日のことを考え、裕子からのメールを見て電車に乗ってしまっていた。急いで社に戻りオフィスに向かった。



 麻里恵が一人デスクでPCに向かいキーボードを軽く叩いていた。






「お。。。っ!。。。マリちゃん。。。ごめんごめん。。。」






 と、自分のデスクの椅子に腰を下ろしながら言った。すると麻里恵が






「はい♪。。。コーヒー♪。。。お疲れさまでした。夕方、部長が見えなかったので帰られたのかと思っていましたよ!」






 錬太郎は忘れていたとも言えず、頭を掻きながら苦笑いした。






「どうします?私はいつでもOKですよ♪書類は明日へ回せばいいんだし」






 と、かがみながら錬太郎の顔を覗き込んだ。錬太郎はコーヒーを口に含み一息ついて






「う。。。ん。マリちゃんさ。。。速水健太のことだけど。。。どう思っているの?」






「え~。。。部長そんなこと聞いて、変?どうして?」







 と少し戸惑いながら麻里恵はデスクを片付けていた手を止めた。






「マリちゃんは、最近何か感じない?彼のこと。。。気になったりすることとかないかな?」






 と錬太郎が麻里恵の方を見て言った。







「気になっています。だって、デートに誘ってくるし。。。この前なんかデスクの上にメモ置いてくし。。。会いたいって。。。携帯番号とアドレス書いてあったし」




「そっか~好きじゃないの?彼のこと。彼とっても君のこと好きみたいだよ」








 と。







「分ってます。。。私も彼のこと嫌いじゃないんです。でも何か引っ掛かっているんです。。。好きとかの前に。。。何か。。。」






 と麻里恵が戸惑いながら言うと






「何が?」






 と、錬太郎が聞き返した。







「実は、彼と会社で出会う前に、以前どこかで出会っているような気がするんです。それが。。。私が2年前に地方の支社に半年間いた頃のこ。。。どうやらその時の町に関係があるような。。。」




「えっ?どうしてそう思うの?マリちゃん。。。あのさ。。。頭の中で誰か別の人間に話しかけられてるようなこと感じたことなかったかな?」




「部長も?それが不思議なんです。もう一人の自分なのかどうかも分からないけど。。。そんなこと語り掛けてくるんです。さっきも一人でPCに向かっていたら、いつも自分と反対のことを言ってくる声が聞こえてきて。。。」








 錬太郎は思った。まだ、彼を人間にした自販機としっかりコンタクトできていないと。でも、これは彼女自身が気付かなきゃならない。彼女がコンタクトできる自販機がどの場所にあるのかも知らないのだろう。




「うん、実はさぁ。。。」




 と自分の体験を話し始めた。話している途中、麻里恵は何かを感じつつあった。


 理解するのにそれほど時間は掛からなかった。






「わかった。解りましたよ!部長!。。。あの時だわ。。。きっと!あの時私を照らしてくれていたんだ。。。わかった♪健太だ。。。それが健太なんだ」







 麻里恵は踊るようにはしゃいだ。雲が一瞬にして消え澄み切った青空のように。。。



 麻里恵は二年前地方支社にいた。その頃、震度5強の強い地震に遭遇していた。地震があったその日、彼女は一人社に残っていた。夜7時半過ぎに退社し、社を出て左手にあった道路脇の自販機の前に立ち止まって120円を投入しようとした。丁度その時だった。。。大きく縦にドン。。。ドン。。。と揺れ。。。それの揺れが暫く続いた。



 次の瞬間、辺りは真っ暗となっていた。地震の影響で街灯の灯りも自販機の灯りも全て消えていた。麻里恵は、地面の揺れで転倒し、倒れて来た自販機と土台のブロックの間に右脚を挟まれ身動きが取れなくなっていた。



 周囲は倉庫が立ち並び人影は殆ど無かった。バッグのサイドポケットに入れてあった携帯を手探りで取り出そうとしたが無かった。恐らく、転んだ拍子に落としたのだろう。。。



 その時、自販機の脇にあった街灯が麻里恵を照らした!その灯りを見て、近くの警備員が麻里恵を見つけだし救助されるに至ったのだった。




 麻里恵が話続けた。







「あの街灯の明かりだけが点いたの♪。。。とっても不思議でしょ。。。だから。。。通勤の時はいつも。。。助けてくれてありがとう。。。って言いながら左の手のひらでそっと触って撫でてたんです。。。あの灯りが点いてくれなかったら。。。私どうなっていたかわからなかったと思います」






 と、少し興奮ぎみに言った。







 「マリちゃん♪一緒に健太を救おうよ!健太には絶対に言っちゃダメだよ!消えちゃうからね。。。健太は街灯だった時のことは忘れているから。あと、彼を人間にした自販機を探さなきゃ」







 麻里恵のそばに近づき、錬太郎は麻里恵の両肩に手を置き、軽く力を込めた。

 


 帰りしな、いつもの自販機の前に立ち120円を入れた。その時







「お~い、久しぶりだな錬太郎♪」







 と自販機が言った。







「なにのんびり声掛けてんだよ!どこに行ってたんだ!まだ、聞かなきゃならないことが山ほどあるんだぞ!速水健太を人間にした自動販売機はどこにあるんだよ!麻里恵はまだ自動販売機とコンタクトとれてないから。。。速水健太を救えないんだぞ!」



「ハイハイ。そう。。。あせるなよ。錬太郎♪。。。だから、ちゃーんと捜して来たんだよ♪俺だって遊んでたわけじゃない。責任があると思ったし」




「でっ、解ったのか?場所?」





「それがさぁ。。。お前の会社の隣のビルの中にコンビニがあるだろう。。。そのコンビニの横に自動販売機が3台あるだろう。その中のどれかだよ♪」



「おいっ!その中のどれかって?特定できないのか?」




 錬太郎は憤りながら言うと





 「あ、少し故障していたらしい。なんでも地震のショックとかでな~。。。だから、少し梃子摺りそうなんだ。。。」



 裕子の期日も迫ってくる。速水健太との合同作戦も平行しなきゃ。。。






「おいっ♪自動販売機!いゃ、自動販売機様♪これからお前と契約を交わすぞ!」






 錬太郎は言葉に力を込めて言った!


 


「いいか、もし裕子と健太が助からなかったりしたら、俺と引き換えに二人を人間のままにしろ!いいな!それくらい出来るだろう!」




 と、錬太郎が言うと





「それが人にものを頼むときの言い方かよ(あれっ?人だったっけ?)何言ってるんだよ!錬太郎。。。お前がどうして代わりに消えなきゃならないんだ?だいたい二人分も一変になんてさぁ。。。」




「いいから、できるのか?できないのか?はっきりしろよ!」




「ん。。。ん。。。ん。。。なら、錬太郎に注文がある!」





「錬太郎の奥さん、泉さんだよな。彼女に協力をしてもらうことだ!裕子さんの話しを全てしろ!できるか錬太郎!これがおれの条件だ♪全て説明しろ。どうしても泉さんの力が必要なんだ。。。絶対だ!それができないなら、契約は無しだ!」





「わかった話す。今夜」






 そう言うと






「健太を人間にした自販機は特定しておくから。明日の夕方までには大丈夫!まかせろ!」








 自販機が答えた。







「なんか不安なんだよな。。。頼りないって言うか。。。アッ君は。。。」







 と言うと








「仮にも私は自動販売機様だ!一応これでも伯爵の称号を持っている。自動販売機の世界では由緒ある家柄なんだぞ!錬太郎!」







 錬太郎はポカ~ンと口を開けていた。。。







つづく