33.How what turns out? | 我ここに在りてここに無し

我ここに在りてここに無し

青きBOUGAの果て

ひとりごとのように

詩と小説を書き綴ります。

何か心に響くものがあれば

それだけで。






「錬太郎!こっち、こっち。目の前にいるだろう。。。この自販機だよ」




錬太郎は一呼吸おいて





「こんばんは。でも、なんで会社の自販機なんだ?いつもの自販機じゃないぞ」






 と返事をした。






「まぁっ、それは気にするな」






 と自販機が言った。アッ君には違いない。




「昨日の夜なんとなくさ、君ら二人のこと。。。今まで自分の周りで起きたこととか。。。なんとなく繋がりそうなんだが、でも何かが足りないっていうか。。。自分の居場所が不安定だっていうか。。。現実には、とにかくあり得ない世界に俺はいるから。今頃になって、やっと不安と戸惑いを感じているっていうか。。。なぜ、俺なんかの頭の中に君らが入り込んで話し掛けていたのか?なぜ俺なんだって。。。」







 すると自販機の中からアッ君が言った。






「ああ。やっぱりな。。。なんか最近変だと思っていたよ。説明が少し長くなるけど。。。話そうか?」







 自販機の前に錬太郎は立ったままアッ君の声に耳を傾けていた。







「錬太郎さ。。。3年ほど前に田舎の廃虚になってた温泉旅館の写真。。。撮りに行っただろう?」



「行った。それって何か関係あるのか?」



「まぁ、聞けよ。。。」






 錬太郎は、観光地でなく誰も見向きもしない、世間が忘れ去った場所やそこにある廃墟、例えば旅館やホテル、レジャーランド。。。使われなくなった工場や煙突。。。そんな物を写真に撮り続けていた。



 錬太郎にとっては、目に映る新しくキラキラと輝くものより、古く錆びれたもの。。。その場所に立ち、かつての繁栄した時、栄華を極めた情景を想像することに楽しみを感じていた。


 3年前に訪れた田舎の旅館もその一つだった。かなり大きな旅館だった。




「錬太郎。。。お前。。。その時、喉が渇いて建物の脇にあった錆付いた自販機に120円入れただろう。出てきたのか?缶コーヒー?」


「いや、後で電気が来てないのに気付いて」


「丁度今頃、雨が降ってたけど、その前にしゃがんで自販機の脇の花を見てたよな。錬太郎。。。」


「ああ。そうだったな~額紫陽花だった。好きな花だったから写真に撮ったよ」


「そうだよ。それが裕子だよ」




「・・・」




「彼女は額紫陽花なんだよ。あんな場所に誰も訪れる人なんてないさ。でも、錬太郎はそこに暫くしゃがんで微笑んだだろう。。。彼女。。。嬉しかったんだよ」




「彼女の気持ちを知って、おれは自動販売機世界のネットワークを駆使し、彼女と一緒に錬太郎の家のそばに移ってきたのさ。彼女は錬太郎のそばで咲きたいっていうから。彼女とおれは、錬太郎が缶コーヒーを買いに来るのを待っていたのさ。錬太郎が120円を入れ、缶コーヒーを一口飲むと笑顔で会釈してくれたよな。。。いつも。それで俺は錬太郎を信頼できると核心したよ」



「ちょ、ちょっと待ってくれ。。。何言ってるんだ?虫観るチームはどうなるんだ?なんで物語なんか俺に始めさせたんだ?アッ君とヒマちゃんって何なんだよ?創造主の末裔じゃないのか?自販機のネットワーク?。。。何者なんだよ?」




 今頃、疑問を持ち始める錬太郎に少し呆れるが、彼の心境も理解できる。なにせ、虫観るチームの命と、自分の物語の中に出てくるメーンバーの裕子が額紫陽花だなんて。。。錬太郎の思考は停止寸前だった。




アッ君が話を続けた。






「落ち着け。彼女、いや額紫陽花は綺麗に雨の中。。。自販機のそばで花を咲かせていた。その時、不思議なことが起こったんだ。額紫陽花の周りが真昼のように明るく光り輝いて、額紫陽花の前に女性が立ってたんだよ。おれは天使かと思った」





 と、アッ君が言った。




 錬太郎は缶コーヒーを一口喉に流し込んだ。





「でも、アッ君が驚くのもおかしいだろう!」





 と錬太郎言った。




「だいたいさ、自販機がしゃべるなんてあり得ないし、いつも俺の頭の中からアッ君が語り掛けるし。。。おかしいだろう?今頃言う俺も変だけど。。。」




と言うと




「錬太郎さ。。。自販機って言うの止めてくんないかな。。。自動販売機ってフルネームで呼んでくれよ。。。傷つくんだよな」




「わかった。じゃアッ君って言うよ」


「ん。。。まぁ、いいか。許してやる。それでだな、私がその女性に誰だと聞くと、解らないって言うんだ。でも、確かに彼女は額紫陽花なんだよ。髪の色は薄紫。間違いなかった」


「自動販売機の世界では各自動販売機一台につき、俺らが廃棄されるまでの間に一度だけ社会の片隅で誰にも振り向かれないけど小さな幸せをくれる物を一人だけ人間にすることができるんだ。でも、それがいつ自分のそばで起きるかは解らない。それが額紫陽花だったんだ」



「ん?すると何か?あのアイスを買い損ねて無人島に行って頭に入り込む虫観るチームの儀式とかは?あれって。。。」




「あぁ、あれか♪おれのいたずらだ^^」



「なに~。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。」




 錬太郎は体の力が抜け、自販機の前にしゃがみ込んだ。




「アッ君とヒマちゃんって。。。君らは何?ちゃんと言ってくれよ!。。。自動販売機の世界の何かなの?彼らはどうなるんだ?虫観るチームは?この物語はどうなるんだ?何故物語を始めさせたんだ?俺に!」




 そして、あと一つ。。。錬太郎の心の中に裕子への感情が深まりつつあることを。。。感じ取っていた。


 額紫陽花。。。君だったのか。。。と。。。



 でも、どうして額紫陽花の名前が。。。裕子だったのか。。。虫観るチームの一人のコーディネーター裕。。。裕子。。。


 廉太郎の思考は黄色の信号が点飯していた。。。 





 つづく