―繋がり―
雨が強く降り始める前に地下鉄の駅に向かおうと、小走りにビルを出た。最初の交差点で信号が赤になりピッポー・・・ピッポー・・・ピッポー・・・と音が鳴り始めた。
少し顔をしかめながら立っていると
「部長♪」
ん???振り向くと
「どうしていつも周りを見ないんですか!部長の視野って狭くなってるんじゃないですか?♪」
と麻里恵が駆け寄ってきた。彼女は傘を差し掛けながら言った。
「よう。お疲れ様。おおー。。。ありがとう。それじゃご厚意に甘えて駅まで。すまんな」
そのときもう一人。。。
「部長!!!お疲れっす!」
と元気のいい声が駆け寄ってきた。今、やっと仕事が終わったばかりの二人だが元気そのものだ。走り寄ってきた若者は部下の速水健太。彼は元気印で有名な若手だ。声も大きく体格もいい。スポーツ万能な青年といったところだ。
(ん?。。。この青年も虫観るチームにはいなかったな~。まあ。。。やつれた錬太郎とは正反対だな。。。初々しくていいな♪)
「まただ。。。静かにしてくれよ。。。お願いだから。。。アッ君。。。頼むから。。。ね!」
健太は、わが部署でも人気の高い麻里恵に積極果敢とも言えるアプローチを慣行し続けているのだった。麻里恵もまんざらではないのだろうが、彼は少し落ち着きがない。若さ故?。。。まぁ、仕方ない。しかし、錬太郎から見れば二人はお似合いのカップルと言える。
<あっ。カックイイ♪ヒマの好みだな。。。縁結びしちゃおっかなー♪>
「ヒマちゃんまで。。。いつからいたの?あわてんぼうだから。。。余計なことしちゃダメ!」
「さて。。。着いたな。。。どうだ!三人でコーヒーで一杯飲む?」
(錬太郎。少し息切れしてるんじゃないか?体力ないよな~)
駅の地下鉄乗り場の途中にあるカフェに立ち寄った。
「あのね、健太!。。。昨日のお昼、部長とゆうちゃんと二人でベランチしてたんだよ」
とまたまた悪戯っぽく麻理恵が言うと、健太が
「あっそう。別にいいじゃん♪まりちゃんもさぁ。。。健太とベランチしようよ♪」
「あのね、そうじゃなくって。もう。。。健太はすぐそうなるんだから」
と麻里恵が言うと
「あっ、部長!そういえば今日、ゆうちゃんがさっき常務と深刻そうな顔で話してましたよ。何かあったんですか?部長何か聞いてません?」
「いや。何も聞いてないな。。。そんな深刻な話を打ち明けられるほどの会話はしたこともないしな。。。」
錬太郎は、やや複雑そうな顔をしていると
「あらっ、ベランチのことじゃない?フフッ」
麻里恵がからかいながら言うと
「そんなわけないだろう!」
と健太が言うと
「まぁ、なんにしても本人の問題だろう」
(うそつけ。。。錬太郎。。。内心心配で心配で。。。仕方ないんだうろ♪)
自分に相談してくれなかったのかなとも思ったが、彼女なりの理由があるのだろうと。。。
だが、やっぱり寂しいようだった。
(ほら、その感情はなんなんだよ♪おかしいだろろう。。。錬太郎♪)
「アッ君!うるさい。。。」
と少し声が出てしまった。すると健太が
「部長、何か言いました?」
「いや、なにでもない」
三人は雑談を30分程度して店を出て、それぞれ家路に着いた。
帰宅し、風呂に入り書斎で休んでいると。。。携帯にメール着信が一件あったことに気付いた。
んんん。。。あれ?もしかして。。。そう。。。誰あろう。。。裕子からだった。メール内容を確認しようとしていると多香子から電話が掛かってきた。
「明日よろしくお願いします。太助さんから電話がありました。来てくれるそうです。すみません。。。夜分にお電話して。でも、声を聞くだけでもホットとするんです」
「うん、タカちゃん。しっかり!大丈夫だからね!じゃ。。。明日」
「はい、少し落ち着きました。おやすみなさい」
錬太郎は電話を切り二階の窓から外を眺めていた。そのとき
「あなた、ちょっといい?」
んんん。。。?二階から降り居間に向かうと
「あなた。。。これ♪」
ん?
「何変な顔してるのよ!誕生日。。。今日でしょ♪ホラッ!父の入院があるから下着を買うついでに貴方へ夏物♪あててみてよっか♪」
錬太郎。。。人生。。。真っ盛り!!!
「泉ありがとう♪」
普段の錬太郎にすれば素直な態度だった。さすがに嬉しかったのだろう。
(そうだよな。。。現実じゃ。。。ありえないことだもんな。。。)
「うるさいうるさい。。。今、。。気分いいんだから!」
寝室に戻り。。。
携帯のメールを見ていなかったことを思い出した。
(錬太郎!夕方自販機に寄らなかっただろう!。。。今日は寄るって言ってただろう)
「あっ、そうだった。。。」
(裕子さん自販機に来てたかもよ~♪)
錬太郎の心の中で、何か不思議な感覚が生まれていた。そう、自販機のそばにあった額紫陽花。。。裕子。。。紫陽花裕子。。。ん?
(おーい!錬太郎!メールの内容。。。教えろよ♪)
錬太郎はアッ君の言葉を無視するかのように、裕子からのメールを読んでいた。。。
心にバランスがあるなら、いまは天秤の支点からステップを踏み、左右へジャンプしている感じかもしれない。。。
(錬太郎!。。。歳なんだから。。。ジャンプは止めといたほうがいいおー♪。。。あっ、いいよー♪)
つづく