30.Love's Theme | 我ここに在りてここに無し

我ここに在りてここに無し

青きBOUGAの果て

ひとりごとのように

詩と小説を書き綴ります。

何か心に響くものがあれば

それだけで。




翌日、錬太郎は社内で紫陽花裕子に傘を返した。丁度、昼時。近くの公園のベンチに座りサンドとカフェオレを♪





(錬太郎よ。。。余裕こいてる場合じゃないだろうが)



「いいだろう。泉もお昼おごってあげなさいって言ってたし」






その時、泉と父が公園内の池を挟んで反対側を。。。ゆっくり歩いていた。






(ホラホラ。。。来たぞ!錬太郎!)


「何ガだよ。。。!ん?ほんとだ!」






錬太郎はそのままベンチに座っていた。すると、裕子が






「私そろそろ社に戻ります♪」



「今度は別のお店で一緒させて下さい。あっ、これ私の携帯番号とメルアドです。。。じゃ♪」




(錬太郎。。。どうする?色々と重なってきたな!錬太郎!おい!しっかりしろ!。。。あぁぁぁダメだ。。。反応しない)








錬太郎は裕子から渡されたメモを見つめ、そっと内ポケットに入れた。


。。。そのつもりが。。。あああああぁぁぁぁぁ




 昼の日差しは、容赦なく錬太郎の頭皮に直接降り注いでいた。




(ハハーッ♪髪の毛最近薄くなったんじゃないか?♪)


「ほっとけ!」






錬太郎は、あえて空を見上げていた。



(うそだろう。おい!腰に手をやるなよ。。。何気取ってるんだ!おかしなヤツだな。。。もう)






 さっき見えていた泉とお父さんの姿も見えなくなっていた。そのまま社に戻ると、女子社員の麻里恵(まりちゃん)に後ろから声を掛けられた。







「あ。。。っ、さっき誰とベンチに座ってましたか?」






と悪戯っぽく聞いてきた。






「ゆうちゃんとお昼食べてたよ」







と無愛想に錬太郎が答えると







「お昼、二人で公園でベランチ(公園のベンチでランチをベランチと言う)してたんですか?ずるいな。。。ゆうちゃんは。。。」







錬太郎は何も気にせず







「傘を借りてたから。返すお礼がてらベランチしただけだよ♪まりちゃんも一緒すればよかったね♪」








 と言うと







「いいんです、そのかわり。。。こんどは麻里恵が傘貸しますから、その時はベランチじゃなく夕食をご馳走して下さい。いいでしょ♪」







 と甘える声で錬太郎の顔を覗き込み
 






「ハイハイ。。。わかりました。では、他のみんなも誘ってそのうち飲みに行こう♪」







 と言葉を交わした。








「部長はいつもそうやってね。。。ふ~んだ」







 と麻里恵はひとり言をつぶやきながらデスクに戻った。




(おいっ!錬太郎!。。。この女子社員。。。錬太郎に好意。。。持ってるんじゃないか?)




「うるさいな。。。ほっとけ。。。違うよ」







 麻里恵は裕子の一つ先輩で、闊達で明るく男子社員の中では話題によく出る。好意を持っている男子社員も多いようだが、錬太郎にとっては部下に過ぎない。



 今までは仕事人間で通してきたし、浮いた噂も無し。堅物だったが、なんとなくここ。。。二三日。。。表情が緩んでいる?



(たるんでる。。。だろう!)



「あぁぁぁぁ。。。うるさいぞ!あんまり出てくると、もう作者に頼んで出してやらないからな!」



(はいはい♪作者も廉太郎も一緒じやないのか?怪しいな?)







 さて、午後は一件だけクライアントに挨拶に出向き、出先から一度社に戻り早めに帰宅した。お昼、裕子から貰ったメモを思い出し内ポケットに手を入れて探る。


 あれっ?無い!


 無い。無い無い無い!!!!!ゆうちゃんから貰ったメモが無いぞ!




(ほ~ら。。。人間悪いことはできないもんだなよな。。。錬太郎♪)


「なんだよ!その嬉しそうな声は!」




 個人情報だし。。。




「泉、俺ちょっと社に今夜仕上げなきゃならない書類忘れてきたみたいだから。。。取りに行ってくるよ」




「明日にすれば?あぁぁ。。。ダメか。車でしょ?気をつけて」








 錬太郎は車を走らせた。50分位で公園に付いた。







(錬太郎。。。随分。。。スッ飛ばしたな)




「今忙しいから話し掛けないでくれ、アッ君!」







 錬太郎は、二人が座っていたベンチの周りを街灯の明かりを頼りに探した。




 やっぱり無くしたかぁぁぁぁぁ。。。困ったな~








(錬太郎。。。どうする?あ~あぁぁぁ。。。知らないぞ!彼女がっかりするな♪)






「なんで嬉しそうに言うかな。。。」






 錬太郎は必死だった。




 丁度、ベンチの後ろ手に紫陽花が街灯に照らしだされていた。そのときだった。


 錬太郎の目は一点を見つめた。







「あった♪あったぞ。。。ほら!あったぞ!。。。メモが♪」




 



 と少し声を出した。紫陽花の葉に引っかかっていた。メモを右手の中に包んだ。もう、夜の10時を過ぎていた。









(錬太郎。。。良かった良かった。。。ね~。。。でも変質者と間違われるぞ♪)






 自宅に戻ったときは11時半を過ぎていた。







「遅かったわね」



 



 と泉が錬太郎見ながら続けて言った。



「父の手術日明後日の木曜日になったから。私。。。付き添うから、あなた社の帰りにでも寄ってくださる?」




「ああ。わかった。急な用件が入らない限り寄るから。じゃ、シャワー浴びて寝るよ」




 と軽く返事をした。







「は~い♪」







 と泉はキッチンで軽く返事をした。

 


 翌日、社のデスクの椅子に座るやいなや、錬太郎の携帯が鳴った。多香子からだった。







「錬太郎さん。父が明日手術することになりました。お昼過ぎからなので、身内もいないし、できれば誰かそばにいて欲しくて。お願いできますか?」




 と。




「予定見て見る。後で帰り病院に寄るから」






 と言うと電話を切った。そうだ、助さんにも連絡しておいた方がいいな。




(錬太郎!。。。手術日が重ならなくて良かったじゃないか)




「あぁ。とりあえずはな~とにかく二人とも無事に手術終わることだけ願ってるよ」



(なんだか。。。まともな会話でつまらないな。。。錬太郎!)



「アッ君!俺はまともだ!アッ君と一緒にするなよ。これが普通なんだ」




(ふーん。。。そか。なら、そろそろ刺激的な悪戯でも考えよっかな~。。。♪)





「ヤメロー!今はヤメロー!アッ君。。。静かに静かに。。。ね!頼むから♪」




(仕方ねーなー。。。)




「今日の帰りには自販機に久しぶりに寄ろう♪絶対に寄るぞ♪あの120円の幸せを貰いにいくぞ♪」




(自販機じゃなくても、幸せみんなから貰ってるだろう!錬太郎!。。。最近は特に!。。。どうよ♪。。。ん!)



「確かにな。でも、額紫陽花がそろそろ終わりかけている。彼女に会わなきゃ」




 
(社員の麻里恵って。。。彼女は何かキーマンになるのか?虫観るチームにはいなかったような。。。)



「俺にも、はっきりしないんだ。。。」




 

 錬太郎はオフィスの窓の外を眺めた。



 小雨が降り始めていた。






 つづく