「私はアドリブの人生を送ってくきたわ♪。。。時には見た目も気になるし。。。いい男がいると心も体も動いちゃって。。。ふふっ♪。。。でもね。。。人と付き合う時。。。もう。。。先は見えてるのよ。この人とは。。。こんなふうになる。。。って。。。分ってる。そんなことない?どう?。。。恭ちんも錬ちゃんも?」。。。
タマさんに言葉を振られた二人は顔を見合わせ。。。
「確かに。。。それはあるかもしれない」
と錬太郎。
「恭ちゃんは?」
とタマさんに催促され
「うん。。。私もそれは感じる。でも。。。意識して押さえ込んでいるのか。。。あえて先を見ないようにしているのかもしれない」。。。
と言うと。。。
「ほらっ。。。ね♪付き合う前に先が分からない恋なんてないのよ。みんな知ってるのよ。。。心の奥でね。でも言えない。。。言わない。会話だってそうよ♪。。。もしかすると話す前に何を話すか互いに分かっている。。。ただ心で復唱しているだけかもしれない。。。でも。。。彼の言葉だけは復唱できなかった。彼だけは違っていた。。。ごめんね。。。それが恭ちゃんのお父さんだったの。。。彼がまだ結婚する前のことよ。。。」
とタマさんは写真を手に取ってみつめた。
「彼はいつも言っていたわ。。。未来こそ人間の存在を。。。もっとも明らかにするものだと。。。そして。。。それは。。。今。。。この瞬間に。。。既に決まっている。。。って。。。」。。。
「いつも、外見を気にし人と比べ、リスクをエネルギーにする社会。。。彼はそこに嫌気がさしていた。。。でも、その社会を。。。そこに生きる人間を。。。誰よりも愛していた。決して人の心を傷つけたり追い詰めたりする人じゃなかった」
「自分の身の回りにあるものすべてに心を与えていた。どんな小さな出来事も。。。精一杯。。。自分のこととして感じ取ろうとしていた。私は。。。そんな彼に引かれていった。私が何者で。。。どこから来たのか。。。そしてどこへ向かうのかも無意味だと彼は言ったわ。。。」
「そして。。。彼は言ったわ。。。“今。。。この瞬間に。。。君が目の前にいてこそ。。。自分が生きていると感じることができる。。。それだけで幸せだ”。。。と。。。」
「人を愛するのに身体の関係など不要だと思えるほど。。。それほど私にとって。。。彼はかけがいのないない人だった」
「私は。。。彼の。。。恭ちゃんのお父さんの。。。言葉を。。。初め理解できなかった。。。でも、今は解るの。見えない世界にあるのは過去の記憶ではなく。。。未来だと。。。それこそが。。。誰にも塗り替えることのできない。。。誰も触れることのできない。。。人の存在を。。。それぞれの違いを現すもの。。。だと。あなた達二人を見ていて。。。私には未来が分かるわ。。。それは誰でも分るようになるのよ。。。時さえ。。。意識しなければ。。。見えない世界で未来に触れることができるの。。。」
タマさんはグラスを手にした。
「恭ちゃん。。。あなたは記憶の中で。。。彼と会った。。。見えない世界でね。。。錬ちゃんは。。。未来を自分で決めた。。。そうでしょ。。。」。。。
タマさんは微笑んではいたが。。。目は悲しそうだった。。。そして。。。頬から大粒の涙を流した。。。
「錬ちゃん。。。未来の。。。何を決めたの?言ってよ。。。聞かせて。。。錬ちゃん?」。。。恭子は錬太郎を見て言った。。。
錬太郎は暫し沈黙した。
錬太郎は目頭が熱くなるのを感じた。。。恭子は何かを感じている。。。駄目だ。。。言えない。。。でも。。。俺が話さなくても彼女は。。。それが何を意味するかを。。。感じ取っているに違いない。。。と。。。
タマさんのグラスに涙が零れ落ちた。。。
その涙は。。。恭子の父と俺が。。。重なっているからだろう。。。と錬太郎は思った。。。
もう。。。隠せない。。。見えない世界を。。。
強く。。。そして強く恭子の心を抱きしめていたい。。。
心が軋むほどに。。。そして。。。
いま練太郎の心に暖かくも切ないほどの風が通り抜けていった。。。
つづく