31.「記憶の歯車」 | 我ここに在りてここに無し

我ここに在りてここに無し

青きBOUGAの果て

ひとりごとのように

詩と小説を書き綴ります。

何か心に響くものがあれば

それだけで。





 朝のコーヒーは最近とても濃くなっている。錬太郎は恭子の母が気に掛かり、実家の母に電話を入れた。

「おふくろ。。。あのさぁ。。。恭ちゃんのお母さんって。。。今どうしてるの?元気なの?」

 と聞いた。すると

「何言ってるの?。。。元気よ。。。今もお花のお師匠さんよ♪この前。。。恭子ちゃんが帰って来た日はお父さん七回忌だったのよ。。。それでたまたま深森神社の火災に出くわしたの。だから焼け跡に来てたのよ」

 と慌しく母が言った。

「えっ?七回忌?変だ。。。なぜ七回忌?」。。。

あの時、恭子は“死んだおとうさんが。。。”と言ってたはず。。。おいおい。。。この前会ったのは40年ぶりだぞ!おかしいだろう?。。。

「あ。。。お母さんは再婚したのよ。。。前のお父さんが亡くなたのはもっと前。。。恭子ちゃんが5歳か6歳くらいの時じゃなかったかな?」

 水曜日の午後、錬太郎は休みを取り、恭子の母に会って。。。あの日のことを聞いてみることにした。実家までは電車で二時間ほど揺られ窓の外の景色をぼんやりと眺めていた。恭子の実家へ向かう前に深森神社の焼け跡に向かった。すでに新しい社を建てるための整地作業が進んでいた。やけに暑い午後だった。

 また。。。“7”が頭に浮かびだしていた。ラッキーセブン?・・・あるある。

 百年以上前の大リーグの優勝を決める試合の七回で、高いフライになった球がうまく風に乗ってそのままホームランになり、それがその試合の勝負を決めたという出来事から来ているそうだ。その時の勝利投手がその出来事を「ラッキー・セブンス」と呼び、それが流行してラッキー7が出来上がったとか。

 虹の七色。。。七福神。。。七洋。。。七草。。。あっ、、、映画もあったな~“荒野の七人”。。。一週間は7日だし。。。ん。。。七転八倒、七転び八起き。。。あまりいい意味ばかりじゃなさそうだが。。。おっと。。。ONE PIECE:尾田栄一郎の漫画作品。。。世界政府公認の7人の海賊「王下七武海」もあるな!あれあれ。。。

 と、色々頭に浮かべながら歩いた。しばらく歩き松林を抜けると眼前に海か広がり。。。錬太郎は大きく深呼吸せずにいられなかった。少し額に汗が滲んでいた。

 潮風が心地よく身体を撫でてくれていた。足元に横たわる大きな流木に腰を降ろし一息ついた。水平線をじっと眺め、沖を通る貨物船が揺らいでいた。恭子の心の揺らぎかな?。。。と思ったり。。。静かな潮風の音を聞きながら自分を振り返った。

 俺って。。。結局今まで何やってたんだろう。。。自分自身。。。何かの役に立っていたつもり?生かされているつもり?でいたの?結局は自己満足だったのか。。。ただひたすら仕事に打ち込み。。。何が残っているんだ。。。

 と自分を振り返りながらため息をついた。独りよがりの人生だったのかな。。。これから少しは人の役に立てるよう頑張るか。。。と。。。錬太郎は中年の背中を丸くしながら砂を手につかんだ。その時だった。。。

「やっと来たか。。。君。。。」

 と背中から声がした。

 振り返ると80歳は過ぎていると思える男性が立っていた。白のワイシャツにグレーのブレザーとスラックス。ガッチリとした体格。背筋はピンと伸び、眼光は鋭く。。。錬太郎の背後に立っていた。

「僕が分るかい?」

 と男性に聞かれ

「ん?いや。。。どこかでお会いしましたか?昔?。。。」

 と錬太郎が言った。すると

「月光三銃士の旅は。。。これからだね。。。」

 と。。。

 「えっ?」

と錬太郎は驚きながら彼を凝視した。いったい彼は。。。誰。。。?


 記憶を辿る糸を紡ぐ歯車が。。。また。。。一つ。それも要となる歯車になる予感がした。。。

つづく