国際中医師アカデミー とうぎ【中医学日記】 -4ページ目

朝起きて、「『よく寝た!』という気分があまりない」「なかなか起きられない」「眠くて、いつまでもぼーっとしてしまう」「夢を見ることが多い…」という人は、よい睡眠をとれていない、いわゆる「かくれ不眠症」かもしれません。

「夢を見たから寝てるはず」と思うかもしれませんが、結論からいうと、朝、元気に起きられないのであれば、それは陽気(精気)が上昇していない証拠で、“寝た”(良い睡眠をとれた)とは、言えません。

精気は睡眠中に作られますので、夜よく眠れなければ精気をたくさん作ることができません。
すると朝になっても精気が陽気となって上昇もできず、元気が出ないのです。

逆に、夜にちゃんと眠れるということは、精気をたくさん作れますから、朝すっきりと気持ちよく起きられるわけです。

「朝すっきりしない状態」が困るのは、眠くて仕事の効率があがらないことだけではありません。
この状態が続くと、だんだん精気不足がひどくなっていきます。

そして精気不足の問題は、単に元気が出ないことだけではなく、もっと怖いのはさまざまな病気の根源になることです。

たとえば認知症やそのほかの老化現象も、普通よりも早く出てくるでしょう。

精気は体を動かす原動力です。
睡眠の質が良くないと、病気への抵抗力や自然治癒力が弱まり、生命力までも弱っていくことになるのです。

では質のよい睡眠をとるにはどうしたらいいか。

睡眠薬に頼る? いえいえ、ここは漢方薬の出番です。

漢方薬での治療の原則は、無理やり眠らせるものではなく、かくれ不眠の原因をつかんで治療することです。

そうすることで、夜になり暗くなって体が休む時間になると、自然と眠くなっていくのです。

手荒れは家事にも非常にストレスになりますし、つらい症状です。
保湿クリームなどの商品もいろいろと出ていますが、悩んでいる人はとても多いようです。

手は外部との接触が一番多いため、中医学でも原因はこれとはいえない難しい部分があります。
ただ、中医学では手荒れには3つのタイプがあると考えています。

1.もともとアトピーの原因を持っている。

アトピーといってもいろいろなタイプがありますので、診断は複雑です。
治療には、基本的なアトピーの治療法と個々人の症状の弁証に基づく治療が必要になります。

2.アトピーではなく、天気が寒くなると荒れる

この場合は陽虚であることが多いです。
陽気がしっかりあれば、温めるだけでなく潤す役割があり、これを温煦(おんく)作用<体を囲んで温める>、温潤(おんじゅん)作用<温めながら潤す>、といいます。

陽気が足りないから荒れるんですね。

肌につやがあるかどうかで正常な温煦作用が行われているかわかります。

陽気が通れば水や血液を運んでくれますから潤いますし、運ぶ力が弱いと手荒れ、肌荒れになっていく可能性は高い。
さらに陽気が寒いと水も血も通りにくくなります。ですから、補陽と通陽の方法で治療することが原則になっていきます。

3.不眠や疲れることで手荒れる

もう一つ、アトピーではなく、不眠や疲れで手が荒れる場合、気血が不足していることが考えられます。
気血は睡眠時間に作られますから、まずはきちんと睡眠をとることが重要な治療の一つと考えられます。

少なくとも、この3種類は原因が違う手荒れであるということを知っていただきたいと思います。

普段の養生としては、ハンドクリームなどでの表皮の保湿も大事ですが、同時に体内のバランスを整えて中から治すことも大事です。手は本来、ハンドクリームがなくてもツルツルでいられるものなのです。

花粉症の人には「目がかゆい」「くしゃみ鼻水がとまらない」と辛い時期になってきました。

春のこの時期のアレルギー疾患はI型アレルギーの病気といわれます。
日本ではそのアレルゲンがスギ花粉によるものが多く、花粉症として定着していますが、皆さんどのように対策されていますか。

多々の症状・炎症を引き起こすこれらの花粉も、中医学では異気の一つと考えています。
異気の特徴の一つは、あるシーズンに多くの人に同じ病気を発生させることです。

異気に対抗する手段として2つ考えられます。
1.避ける  
2.正気(病気への抵抗力と自然治癒力)を高める

1の「避けた方がいい」場合とは、コレラやペストなど、体内の正気がいくら強くても対応できないほど異気が強過ぎるときです。
一方、感染者を全滅させるような強烈な異気でない場合は、2の「正気を高める」ことが身を守る大きな手段です。

では花粉症はどうかというと、マスクなどで花粉の侵入を防ぐと同時に、正気を高める(体を丈夫にする)ことが対抗策となるでしょう。

正気が弱まる原因には、臓腑の虚弱や気血の流れの異常などがあります。
正気の不足は様々な病気の発症に繋がり、花粉症もそのひとつと考えられます。

正気不足をそのままにしていると、徐々に通年性のアレルギー疾患にかかりやすくなっていきます。

つまり花粉症だけでなく、蕁麻疹やぜんそくになる可能性が高くなるのです。
このような現象は自然治癒力がどんどん下がっている表れなのです。

漢方を使って正気を高めるには、正気が弱まる原因となる臓腑や部位を見つけて治療することが原則です。
そして臨床では、正気を補いながら邪気を追い出す方法をとるのが主流で、これを扶正袪邪と言います。
「漢方」というのは大きく分けると2つの中身があります。

1つは、道具(漢方薬、鍼灸といった治療道具)。
もう1つは、病気の分析、判断(弁証論治)です。

道具を使いこなそうと思ったら、まず何よりきちんと病気の分析ができることが、適切に使う大前提になります。

今、日本で道具は既にそろっています。

ただ、残念なことに漢方薬や鍼灸を西洋医学的に見ていることが多いと感じます。

これでは残念ながら漢方の力を最大限に発揮するのは難しいでしょう。

なぜなら、「病気の部位は?」「性質は?」「どの程度発展しているのか、もしくは回復しているのか」、などなど細部にわたって患者さんの病状の変化を見て判断する中医学による分析こそが、漢方の生命力だからです。

言い換えれば、漢方の生命力は“分析できる人材”といっても過言ではありません。

薬だけあってもだめで、中医学の人材を育てることが薬を活かすことにつながります。

「弁証論治」こそが漢方の生命力であることを、どうぞ忘れないでください。

先日あるテレビ番組で、バレエダンサーの熊川哲也さんが、ご自身のバレエ団(スクール)で指導する意義について、「バレエの素晴らしさと同時に、難しさ・大変さを伝えたい」と語っていました。

それも日本に野球が浸透しているのと同じぐらいの認知度で、と。私はこれを聞いて、なるほど!と、とても共感しました。

日本では、野球がどういうものなのか、どこがすごいのか、多くの人がわかっている。
つまり野球は、通(つう)の人しかわからない特殊なものではなく、もはや宣伝しなくても浸透していて、観戦するファンの目も肥えています。

一方、バレエは今や習い事のトップになるほど人気があり、有名な舞台のチケットは高額にもかかわらず即完売になるほどですが、それでもまだ、日本ではバレエと野球の間には、理解度のアベレージ、文化としての浸透性に大きな差がある、ということです。

いわんや漢方をや!です。バレエの足元にも及びません。
野球チームについて語るように、どれだけの方が「漢方のここが好き、すごいと思う」「あそこの薬局の腕はまあまあだ」といった“贔屓の漢方談義”をしているでしょうか?

私も熊川さんがバレエ理解者(プロだけでない)を増やしたいのと同じく、野球を観戦するのと同等レベルの“漢方を見る目”を是非たくさんの方に持って頂けるといいなと思います。

プロでなければ良し悪しの見極めができないわけではない、というのは野球の世界で一目瞭然です。プロ選手のようには打てないけれど、でも今のスイングがいいか悪いかはわかる、という“見る目”は、たとえプロ選手にならなくても身に付きます。

漢方についても同じです。
漢方薬局を開くわけではなくても、自分や家族のために、“鑑賞できるレベル”、つまり漢方薬や漢方薬局の良し悪しがわかる“目利き”になるために学んでみることもお勧めです。

中医学の基本である陰陽五行学説や臓腑、病因病理の内容について知れば、自分である程度分析できるようになり、漢方薬局での説明にも合点がいきます。

医療関係者の言いなりにならずとも、「この漢方薬剤師なら」と、自分の目で納得して弁証を受けることもできるし、逆に腕の悪い漢方薬局にごまかされずにすむでしょう。
何より、わかると楽しくなるものです。

少なくとも、「漢方薬には副作用が無い」とか、「長く飲まないと効かない」などということはナンセンスだということが、きっとお分かりいただけると思います。