日本安楽死法案
(目的)
第一条 この法律は、治療できない身体的または精神的病気によって死ぬまで耐え難い苦痛を受ける国民が安楽死の施術を受けるのに必要な事項を規定することにより、「日本国憲法」第13条に基づき、すべての国民に人生の最後まで幸せを追求する権利を保障することを目的とする。*
* 「日本国憲法」第13条 すべて国民は、個人として尊重される。生命、自由及び幸福追求に対する国民の権利については、公共の福祉に反しない限り、立法その他の国政の上で、最大の尊重を必要とする。
(定義)
第二条 この法律で使用する用語の意味は次のとおりである。
一 「安楽死」(尊厳死と称することもできる。)とは、医学的施術を通じて身体的苦痛なしに至る死をいう。
二 「安楽死担当機関」とは安楽死希望者の審査、安楽死手術の許可と施行、事前安楽死施術意向書管理業務を担当する政府機関をいう。
三 「安楽死対象者」とは安楽死担当機関に安楽死施術を申請して許可を受けた者をいう。
四 「担当医」とは、医療法に基づく医師で患者を直接診療する医師をいう。
五 「安楽死施術計画書」とは、患者の意思により安楽死担当機関が患者に対する安楽死手術に関する事項を計画し、文書で作成したものをいう。
六 「事前安楽死施術意向書」とは、意思表現ができない医学的状態となり、それから回復する可能性がほとんどなくなった場合、安楽死手術を受けることを希望するかどうかをその意思を示した文書をいう。
(他の法律との関係)
第三条 この法は安楽死手術に関して他の法律に優先して適用する。*
* (自殺関与及び同意殺人)
第二百二条 人を教唆し若しくは幇助して自殺させ、又は人をその嘱託を受け若しくはその承諾を得て殺した者は、六月以上七年以下の懲役又は禁錮に処する。
(未遂罪)
第二百三条 第百九十九条及び前条の罪の未遂は、罰する。
(正当行為)
第三十五条 法令又は正当な業務による行為は、罰しない。
(安楽死対象者の資格)
第四条 安楽死対象者になるために患者が備えなければならない要件は次の各号のとおりである。
一 幸福を追求する目的で安楽死手術を希望すること
二 上級総合病院の担当医及び当該分児の専門医1名から、治療できない身体的又は精神的疾病により死ぬまで耐え難い苦痛を受けることと診断されること
三 担当医師又は安楽死担当機関から安楽死手術及びその代案について説明を受け、内容を理解したことの確認を受けること。 この場合、当該患者が未成年者であるときは、患者及びその法定代理人が一緒に説明を受けて確認を受けなければならない。*
四 自分が患っている傷病の状態と予後および安楽死手術とその代案について正しく理解し安楽死手術を受けることを決定する精神的能力に問題がないこと
五 安楽死の施術を希望する意思表示があること。 意思表示は患者になじみのある方法で行う。
六 患者が意思を表現できない医学的状態となり、それから回復する可能性がほとんどなくなった場合、そのような状態になれば安楽死手術を希望するとの意思表示があったり、事前安楽死施術意向書があること
(安楽死担当機関)
第五条 この法律による安楽死希望者の審査、安楽死手術の許可と施行、事前安楽死施術意向書管理業務は安楽死申請を受けた特別自治道知事·市長·郡守·区庁長が行う。 *
② 厚生労働大臣は、この法律による安楽死希望者の審査、安楽死手術の許可及び施行、事前安楽死施術意向書の管理業務を行う担当公務員(以下「安楽死担当公務員」という。)を指定しなければならない。
(事前安楽死施術意向書の管理)
第六条 次の各号の条件を満たす国民は、いつでも事前安楽死施術意向書を作成して安楽死担当機関に登録し、又は変更、撤回することができる。
一 意思表現ができない医学的状態および安楽死手術とその代案について説明を受け、内容を理解する人
二 未成年者である場合に作成する事前安楽死施術意向書の内容について法定代理人の確認を受けた者
② 安楽死担当機関は、作成者にその作成前に次の各号の事項を説明し、内容を理解したことを確認してもらわなければならない。
一 意思表現ができない医学的状態と安楽死手術の施行に関する事項
二 安楽死手術の代案及び利用に関する事項
三 事前安楽死施術意向書の効力及び効力喪失に関する事項
四 事前安楽死施術意向書の変更·撤回及びそれに伴う措置に関する事項
五 その他厚生労働省令で定める事項
③ 安楽死担当機関は毎年、全国の小学生、中学生と最初の住民登録対象者に安楽死手術関連教育を実施し、事前安楽死施術意向書を作成する機会を提供しなければならない。
④ 事前安楽死意思表示の書式及び作成·登録·保管·通報等に必要な事項は、厚生労働省令で定める。
⑤ 事前安楽死施術意向書を作成した者は、いつでもその意思を変更し、又は撤回することができる。 この場合、安楽死担当機関の長は、遅滞なく事前安楽死施術意向書を変更し、又は登録を抹消しなければならない。
(安楽死施術の申請及び届出)
第七条 安楽死施術を希望する者及びその代理人は、安楽死手術申請書、上級総合病院の担当医師並びに当該分野の専門医1名から受けた診断書、担当医師又は安楽死担当機関から安楽死施術及びその代案について説明を受け、内容を理解したことが確認された確認書等を添付して厚生労働大臣に安楽死手術を申請することができる。
② やむを得ない事情がある場合、口頭で安楽死手術を申請することができる。
③ 第四条6項に該当する患者の場合において、誰でも患者の代理として安楽死の施術を申請することができる。
④ 何人も安楽死手術希望者を発見した場合には、厚生労働大臣に届け出なければならない。
⑤ 次の各号のいずれかに該当する者は、診療·相談等職務遂行過程において安楽死手術希望者がいることを知った場合には、厚生労働大臣にこれを届け出なければならない。
一 医療法に基づく医療機関の従事者
二 社会福祉法に基づく社会福祉施設の従事者及び同法第8条により委嘱された福祉委員
三 国家公務員法及び地方自治法に基づく公務員
(安楽死施術希望者の審査及び許可等)
第八条 厚生労働大臣は、第6条の規定による安楽死施術の申請又は届出を受け、又は安楽死施術希望者を発見した場合には、遅滞なく安楽死担当公務員に安楽死手術希望者を訪問してその状況を確認させ、第4条による資格を審査しなければならない。
② 厚生労働大臣は、安楽死手術希望者の状況を確認し、第四条の規定による資格を審査するため必要がある場合には、関係行政機関及び医療機関の長に必要な資料の提出、関係人面談、精神科診療依頼等協力を要請することができる。 この場合、要請を受けた機関は特別な理由がなければ遅滞なくその要請に従わなければならない。
③ 厚生労働大臣は、第1項の規定による安楽死手術希望者の確認及び第4条の規定による資格の審査を通じて安楽死手術の許可可否を決定し、その内容を遅滞なく通知しなければならない。
④ 第1項と第2項により安楽死施術希望者の状況を確認し、資格を審査する安楽死担当公務員は権限を表示する証票を持ってこれを関係人に示さなければならない。