どれほどの悲しみに傷つけば君は戻ってくるのだろう。
いつも隣にいるのが当たり前だと思っていた。
出会いがあれば別れがあるのはいろんなメンバーが卒業していくのを見てわかっていたはずなのに。
あなたと離れ離れになるのはまだ理解できていないし実感もしていない。
どれほどの後悔を重ねれば私は気付けるんやろ。
本当に大切なものが何か。
たぶん。きっと。
頭のどこかで全てわかっていた。
でも私は気付かないふりをしていた。
『さやかちゃん』
そうやって私を呼ぶのは1人しかいない。
でもその人はもういないのになぜか私の頭の中から消えてくれない。
瞳を閉じればすぐ目の前にいて今までの思い出は昨日の出来事のように鮮明に覚えている。
『さやかちゃんってば!』
『…えっ』
『今日が終わったらもう会えなくなるね』
『……せやな』
『会えなくなっても応援してるから絶対シンガーさんになってや?』
『おう。』
『ま、有名になってもライブ行かんけどなー』
そう言ってケラケラ笑う姿は6年経っても変わっていない。
ライブぐらい来いよってツッコミをしたろうと思った時
ジリリリリッ
『…んやねん。夢かよ』
目覚ましのアラームが鳴った。
彼女との思い出は
いくらでもあるのに。
会おうと思えば今日だって会えるはず。
だけど彼女とは夢の中でしか会えないのはなぜだろう。
君の後ろ姿がだんだん遠くなっていく。
いつか『このまま2人を時が置き去りにしてくれればと』話したあの時間も遠くなって。
今もわからない。
なんで彼女にこんな切なく、悲しくされなければならないのか。
そんなことを考えながら収録現場に行き楽屋で待機をしていた
『な、彩』
『ん?』
『みるきーが“今ならば”すっごい気に入ってるみたいやで。
ほんまにいい曲よな』
『そっか』
『もういないんやな』
『………………』
岸野が話しかけて来たかと思えば…。
良い曲なんて言われなくても私が1番知ってる。
私が彼女のために作曲したんやから誰よりも知っている。
『岸野ー』
『ん?』
『夢の中に会いたい人が出てくるねんけどもう会えへんねん』
『みるきー?』
『こんなに寂しくなるならもっと一緒に いればよかった』
『大丈夫
あんたらは離れててもずっと一緒や』
『ずっと…ね』
『とりあえず彩は
卒業したらシンガーソングライターになってみるきーに会いに行きなさい』
『会ってくれたら良いけどな』
『運命の人が来たら誰でも会うやろ?
会わんやつなんかどこにもおらんわ』
『アホか。
言われなくても会いに行くわ』
知っている。
歌手になるのがどれだけ難しいのか。
すぐに認めてくれる人がたくさんいるとも思っていない。
でも彼女なら笑って
『やっと夢が叶ったね』って
私を褒めてくれるやろう。
そんな日が何年後、何十年後でも
私はシンガーソングライターになるまで走り続ける。
彼女と会える日まで。
あの日巡り会えたことは世界中では小さなことだとしても
私の中では大きい出来事。
彼女にはたくさんの笑顔と思い出をもらった。
だから今度は私が歌で全てを返していこうと思う。
『あのさ…』
『ん?』
『なんで彩はみるきーにだけ作曲したん?』
『は?』
『いや、菜々ちゃんとかおったやん』
『……なんでやろ
考えたこともなかったわ』
『そっか。』
『まー強いて言うなら…』
世界中探してもあなたに勝てるアイドルはいない。
儚くて、でも綺麗な笑顔。
そんなあなたは私の
『運命の人やから』
それは私の台詞やで。
なんて声が聞こえた気がした。
