11/12放映分「銭湯のぬくもり」他
●『銭湯のぬくもり』脚本:城山昇
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波平は銭湯から出てくるカップルを見て、若かりし頃の自分達の姿を思い起こす。そして、その日から、郷愁を求めて波平の銭湯通いが始まった。
銭湯で繰り広げられる様々な人情劇。時代は移ろおうとも、人情は未だ冷めやらずである事を波平は改めて確認するのであった。
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ワンテーマ作品。波平型。
「波平が銭湯に行く」・・・本当にそれだけの話です。余計なものは一切ありません。これで話を構成できるのですから、たいしたものです。
銭湯の玄関で彼女があがってくるのを待っている男性。それを見た波平は、若い頃、同じようにフネさんを待っていた自分の姿を重ね合わせます。本人曰く、サザエが生まれるまではこうしてよく2人で銭湯に通っていたのだとか。
回想シーンでは、永井一郎が無理やり若い声作り。でも、先週出て来た若い頃の波平の写真とまるで違うのはどうしたものか。やっぱり、あの写真は別人で、その男を忘れられないフネさんが、思い出に残しておいたものなのでは?などと考えてしまいました。
それから、赤ちゃんの頃のサザエが出てきますが、生まれた時からお団子カール頭(笑)もっとも、あくまでも「波平の回想」ですから、本人の記憶力を考えれば、少々の誤差がある事は仕方がありません。赤ちゃん時のサザエを思い出している時に、現在のサザエに声をかけられて「いきなり大きくなった顔を出すな!」と理不尽な怒りを見せる波平さんが単純に面白いシーン。
こうして、郷愁を求めて銭湯通いを始める波平。そのため、磯野家ではカツオが一番風呂になります。しかし、外はまだ日が明るいのに、休日の磯野家は昼から風呂に入る習慣があるのでしょうか。
波平は番台に10円を払い忘れたり、他の人のカゴに自分の着物を脱ぎ捨てるなど、大ボケを連発。終いには、他の人の石鹸を自分のものと勘違いして、それを手に取ろうとした持ち主を睨みつけたりします。おじいちゃんを独りで出歩かせては、何かと危ないです。
磯野家では、マスオやタラちゃんも風呂に入ってきて、ちょっとした銭湯気分。そこにワカメがガラリと扉を開けて「レディーが入るんだから、早く出てよ!」と、そんな彼らに文句を言います。「レディーって?」と言う当然のカツオの疑問に、ワカメは「アタシよー
」としなを作ったりします。お前は、JRAのCMの真鍋かをりか!なお、それを聞いたマスオが「ワカメちゃん、独りで入るのかい?」と驚きますが、じゃあ、いつもは誰と入っているのでしょう?波平か(笑)
銭湯では、波平がわざとカコーンと湯桶を叩いたり、富士山の絵に見入ったり、雰囲気をたっぷりと堪能中。まだ、昼のはずですが、結構お客さんが入っています。昼の銭湯と言うと、どうしてもおじいちゃん達の社交場と言う感じがするのですが、波平もお年寄りの仲間入りか。
すると、すごいデブが浴槽に入ったため、お湯が津波のように押し寄せて「うわーわー」と波平は、もろくも押し流されます。なお、このデブ、後半のリングオブクライム(後述)のシーンにはいません。やっぱり、気まずかったんでしょうね。
銭湯では、波平が向かいにいたおじいさんの背中を流してあげます。すると、横にいたオッサンもまた「孝行したい時に親はなし」と、おじいさんの体を洗い始めます。2人がかりで体を洗われるおじいさんが、まるで介護を受けている老人のようです。
すると、どこからかやってきた若者が「田舎の親を思い出して」と、波平の背中を流し始めます。そして、銭湯ではまるでドミノ倒しのように、客どうしによる背中流しの輪が。それを見た番台のおかみが「まるで昔のよう」と感慨にふけります。てか、おかみさん、男湯を覗きに来るなよ(笑)先頭のおじいさんを張り倒せば、連鎖的に全員をノックアウトできます。これを「魁!男塾」の世界ではリングオブクライムと言います。
波平が銭湯から出ると、もう夜。「当時のような星は見えぬが、人情未だ冷めやらず」と一句(五七五ではないな、コリャ)。一体、波平さん、何時間風呂に入っていたんだ?ただでさえ、ふにゃけた体が更にふにゃけるぞ。
ラストは数日後、すっかり銭湯にハマってしまった波平。ここで前述した石鹸強奪シーン。カツオが石鹸を届けに来た事により、それが他の人の物である事に初めて気づきます。
カツオとの帰り道、バッタリ出会ったイササカ先生に銭湯のよさを説いたりします。そして、最後はカツオが波平に「今度は一緒に入りに行こうよ」と誘い、波平もそれを承諾してほのぼのと終わりです。おいおい、石鹸は?と思いきや、最後の最後で持ち主に頭を下げて返すカットが挿入されてホッとしました。てか、誤りに気付いたらすぐに返しなさい。
よくスーパー銭湯に行くのですが、こうした下町情緒溢れる銭湯はご無沙汰です。何でも、東京都内の銭湯は激減の一途で、1000軒を割っているのだとか。スーパー銭湯でサウナやリラックスチェアーを楽しむのもいいのですが、こうした「ただ単純に風呂に入る」目的の施設が減っている事は寂しい現実でもありますね。
サザエさんでは、銭湯を舞台にした作品が結構存在します。最近では、カツオが見知らぬおばあちゃんに銭湯に誘われる話とか、タラちゃんが銭湯の壁に絵を描いたりとか。せめて、サザエさん世界の中では末永く生き続けてほしい存在であります。
☆磯野家豆知識==================================================
○松竹湯
近所の銭湯。430円也。月曜日定休。そう言えば「タラちゃん大浴場」(前述のタラちゃんが壁に絵を描いた話)に登場した銭湯とは別のような。やっぱり潰れたのか?
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●『突然のお客さま』脚本:雪室俊一
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深夜にマスオが会社の同僚を引き連れて磯野家にやって来る。サザエがおつまみに困っていると、カツオがどこからかコンビーフの缶を差し出す。
翌日、その出所について、カツオが磯野家一同から詰問される。しかし、カツオは決して口を割らない。一方、ノリスケ家でもそれと全く同じコンビーフ缶が発見されて、ますます謎が深まる。
実は、それはノリスケとマスオがデパートの試食コーナーのお姉さんの気を惹く為に購入した物だった。そして、やり場に困っているマスオにカツオが助け舟を出したと言うオチであった。
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ストーリー作品。磯野家型。
あんまり、タイトルと内容に関係ない気がしますね。せめて「疑惑のコンビーフ」とか「カツオは見た!コンビーフにまつわる愛憎、今、磯野家に怨恨と嫉妬が巻き起こる」とかならすんなりいくと思います。
久々登場のアナゴくんですが、マスオの連れてきた客の1人と言う大雑把な役どころ。磯野家に入る際、サザエがマスオと勘違いして同僚の1人を睨みつけます。確かにマスオとよく似ていますが、旦那を間違えるか?実は酔っ払っているのは、サザエ、お前じゃないのか?タイトルバックで肩身狭そうにしているマスオ似の彼が憐れ過ぎます。
翌日、サザエから話を聞いた(と思われる)波平が、カツオにコンビーフの出所を問い詰めますが、カツオは「守秘義務がありますから」と答えようとしません。その後も、カツオはサザエやフネさんからひたすらコンビーフに対して追及されます。この磯野家の執念をもっと世界平和に活かす事が出来れば。
そして、例によってノリスケ家に油を売りに行ったサザエは、そこでも同じコンビーフ缶を発見します。ここで、久々に元気なイクラちゃんの姿を拝めますが、全く動きません(笑)完全に背景と化しています。アニメーションしていません。大丈夫か、イクラ?
実は、それはノリスケとマスオがデパートの試食コーナーで買ったもの。火野正平みたいに女好きなノリスケが試食もせずにあっさり購入。マスオもそれに付き合わされた形です。何となく「仕方ないなーノリスケくんはー」と言いながらも、シッカリと鼻の下を伸ばしているマスオの顔が思い浮かびます。
帰りが遅くなる波平。また昨日のマスオのように客を連れてくるのでは?と戦々恐々なサザエですが、波平は独りで帰宅。車の音がしますが、みんなに送ってもらったとの事。それって、飲酒運転なのでは?
マスオから既にコンビーフの真相を聞いていた波平は、それ以上カツオを問い詰めずに釣りへと出かけてしまいます。
しかし、追及に命をかけているとしか思えない執念を見せるサザエは、訪ねて来たノリスケも交えて遂に真相を掴みます。買って来たはいいが、あまりに不自然に思ったマスオが、それを台所にこっそり隠そうとしたのですが、カツオに見られてしまったと言う流れ。
いや、マスオもそこまで卑屈にならなくても、美味しそうなのでつい買った、とか言えばここまで騒ぎにならなかったような気もします。なお、サザエと一緒になってマスオに苦言を呈するフネさんの存在が新鮮です。姑の婿いびり。アンタは藤田まことに対する菅井きんか。
なお、ここでノリスケにおぶわれてイクラちゃんが登場。「ちゃーん!」とのセリフもあり。しかし、2カットほどしか動かない上に、この後のシーンでは存在自体が抹消。まだまだ、本調子ではないようです。
「これはお父さんにも報告しないとね」と、サザエによってマスオは波平の前に連れ出されます。何だか、裁判を受けるみたいに縮こまっているマスオがかわいそう過ぎます。
結局、磯野家裁判の結果は、サザエがマスオの同僚に振舞ったジャガイモのコンビーフ和えが会社で評判になったと言う事から情状酌量が作用。無罪判決。と言うか、カツオを巻き込んだ事は確かによくない事かも知れませんが、そんなに目くじら立てるほどの事か?ただ1人、この中で血縁関係のないマスオがつるし上げを食らう姿は、ひたすらかわいそうでした。
ラストは「今日と言った」「明日と言った」と何やらもめている波平とフネさん。カツオの「そんな事よりも!」の言葉に慌てる一同。実は、波平が大量の酔っ払いのお客さんを連れて来ていたと言うオチ。
準備に手間取り、前述の怒鳴りあいや食器がひっくり返る音が響く中、気まずそうに6人に及ぶお客さんがタバコを吸いながら澄ましている姿で幕です。見た感じ、みんなヒゲを生やしていてなかなかに偉そうな風貌。飲み仲間と言うより、上司への接待と言う感じでした。そんな場面でこのドタバタ振りでは、また、波平の出世は遅れそうですね。
☆突撃!磯野家の晩ご飯==========================================
○コンビーフ
何かと物議を醸した今回のコンビーフ。コンビーフには一時期凝った事があったのですが、未だにあの「マキマキ」缶を不器用にしか開けられません。サザエは今回、ジャガイモと合わせたようですが、ビールのアテにはそのままマルかじりする方が絶対に美味しいです。あのベタベタする感じが、キレのあるビールに合うのですよね。
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●『もういちど七五三』脚本:山田由香
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ワカメの七五三から1年。去年、ワカメの写真を撮った写真館の主人は、今年もその写真を宣伝に使いたいと申し出る。かくして、写真館のウインドーに2年連続でワカメの写真が飾られる。かわいく撮られたワカメの写真は、町行く人々の評判になる。
そんな折、2丁目のミサキさんが磯野家にワカメが使った七五三の着物を貸してくれるようにお願いしてくる。娘であるサオリちゃんが、そのワカメの写真を見て、着物姿に憧れたからであった。
サザエのお下がりだった七五三の着物にちょっと不満だったワカメではあったが、こうしてサオリちゃんに着てもらえて、誰かに着てもらえるたびに七五三の事を思い出す喜びを認識するのであった。
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ストーリー作品。ワカメハッチャキ型。
手堅いお話。一番、若い(山田由香さんの事はよく知りませんが、少なくとも、雪室先生達よりは若いでしょう)人の書いたお話が一番手堅くまとまっている現実って面白いですね。
どこかの家庭に出かけているサザエ。そこのご主人から「女房は今何を着ていましたか?」と聞かれて即答できません。そのサザエの様子を見て、七五三に着ていく着物を新調したがっていた奥さんに、「そら見ろ。人間の記憶力なんてそんなもんだ」と得意がります。今、着ていた服も覚えていないのだから、2年前に着ていた着物なんて誰も覚えていないだろうと言うご主人の洞察に、憤慨する奥さんでオープニング。でも、昨日の夕食は忘れていても、特別な日の夕食は、何年経っても案外に覚えているものですけどね。
去年の七五三に撮ったと言うワカメの写真。でっかりリボンに赤の着物、口紅までつけております。ただし、着物はサザエのお下がり。計算すると、20年近く眠っていた事になります。磯野家物持ちよすぎ。
コンビーフ花沢が七五三の思い出を語ったりして、舞台は写真館に。ショーウインドーに飾られているワカメの1年前の写真を、ある少女(サオリ)が見入っています。オーバーオールに萎びたリボンと、見るからに貧乏っぽい風貌。ここで(おそらく)写真を見に来たワカメと歴史的遭遇をします。この時点では、この少女が着物を着たいけど貧乏で買えないと言う昭和枯れすすき的展開になるんじゃないか、と思ってしまいました。
自分の写真を見て悦に浸るワカメ。「もう一度七五三をやりたくなっちゃった」と言います。7歳の設定だったら、毎年、七五三をやれたのにね。そして、それを受けてサザエが「次は成人式」と言います。更にその後は結婚式。それを聞いた波平が「いかんいかんまだ早い!」と狼狽するオチ。相変わらず、波平はかわいいです。
さて、2丁目のミサキさんが、「急に娘が着物を着たいと言い出して」と、娘を連れて磯野家にやって来ます。その娘が前述のサオリちゃん。ワカメの写真を見て、「ワカメお姉さんみたいになりたい」と、憧れたのだとか。急に言い出して準備が出来なかった、と語られますが、やっぱり、ここは貧乏で着物を買うお金が無かったと取りたい。
サザエやフネさんに着付けをしてもらうサオリちゃん。それを覗くカツオとタラちゃん(笑)カツオが波平に戒められると、今度はタラちゃんがタマと一緒に様子を覗いて、「きれいになったですー」と、女性を見る目を養います。それにしても、女児の着替えを好んで覗くなんて、タラちゃんに変な嗜好が身につかないか心配です。
最後はみんなでお土産の千歳飴を食べてお終い。ラストカットは、カツオの「同じ着物で七五三」と言う言葉と共に、サオリちゃんとワカメ、そして7歳時のサザエが、同じ着物で一枚に収まる姿です。なお、サザエはこの時も、お団子頭。カールしているものと思いきや、案外と天然なのかも知れません。
手堅くて、あんまり突っ込みどころがないお話でした。
来週は「すごいキノコがやってきた」・・・どういうお話なのか想像もつきません(笑)
☆突撃!磯野家の晩ご飯==========================================
○オムレツ(夕食)
意外にも、食卓には初登場じゃないのでしょうかね。さすがに、ここ連続してハンバーグでしたから、いい加減にみんなから不満が出たものと思われます。