名作プレイバック「どうなる?磯野家の未来」#1 | 週刊サザエさん

名作プレイバック「どうなる?磯野家の未来」#1

●未来のフグ田家?(想像)


病床のサザエ(70代くらい)、孫の手で背中をかいている。
その横にはタバコを吸っているカツオ(60代くらい)の姿。


サザエは白髪にしわだらけ、カツオはハゲて口ひげを生やしている。


サザエ「フン!サザエ記念日にしか顔を見せず、この薄情者!」
カツオ「けど、姉さん。俺も生活に追われちゃってさ」


カツオ、目敏くフジテレビから送られてきた目録を見つける。


カツオ「テレビ局からお祝いが来てるなあ。ああ、ちょっと貸してくんない?ここんとこ、不景気でさ」
サザエ「まあ、カツオ!」


●磯野家・サザエの部屋


パジャマ姿で布団を片付けているサザエ。何だか、怒っている。


サザエ「あんたの事、見損なったわ!」
カツオ「なんだいなんだい!そっちこそ勝手な夢見て!」


「どうなる?磯野家の未来」(1994年放送)
脚本:井上知幸 演出:山岸博
原画:村沢英治 背景:久保陽彦


●下校路

カツオ、中島、橋本が帰路に就いている。
中島、道端の掲示板に目を留める。


中島「ん?おい、ちょっと、これ見てみろよ。児童懸賞作文の募集だってさ」
カツオ「へえ、25年後の私達の社会、か」
橋本「25年後がどうなっているのか、どうなっていてほしいのかがテーマか」
カツオ「おー!?見ろよ。金賞入選作は海外旅行ご招待だって」
中島・橋本「へ~」
カツオ「なあ、僕達も作文書いて応募しないか?」
中島「うん、宿題と違って懸賞付きだものな」
橋本「でも、25年後ってどうなっているんだろうな?」
カツオ「そうだなあ、中島と僕の未来なら予想できるな」


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★カツオの想像。

夕暮れの教室で、カツオと中島が手を取り合っている。


中島「クラスが変わっても仲良くしような」
カツオ「一生変わらない友情を誓うよ」

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カツオと中島が仲良く肩を組み始める。


カツオ「中島が何回落第しても」
中島「えー?」


ボロボロの姿で赤ん坊を抱えている中島に、お金を渡している社長風のカツオのイメージ。


カツオ「君がどんなに困っても、僕は絶対見捨てないぞ」
中島「(怒)むー!磯野!」
カツオ「え?」
中島「オマエとは、もう絶交だ!」


怒った中島が駆け去っていく。


カツオ「な、な、中島!」
橋本「まずいよ、今の例えは」
カツオ「全く、話のわからないヤツだ」


●磯野家・居間


一家揃っておやつ(プリン)の時間。


サザエ「まあ、それで中島くんと喧嘩したの?」
カツオ「うん・・・」
フネ「そりゃあ、カツオが悪いわよ」
カツオ「僕も、ちょっと言い過ぎたと思っているんだ。作文の事考えていたら閃いちゃって」
サザエ「明日にでも謝っておきなさいよ」
カツオ「うん、そうするよ。それはそうと、25年後の我が家ってどうなっているのかな?おやつなんて、もっと豪華になっているだろうなあ」
サザエ「あら、残念ねえ。アタシはその逆だと思うけど」
カツオ「えー!?」


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★サザエの想像。


サザエ「お待たせー。おやつ出来たわよ。今日はチョコレートパフェにアップルパイ、特別に餡蜜もつけちゃう」


そう言って、サザエが差し出したものはカプセル状のサプリメントである。

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サザエ「なーんて事になってるんじゃないかしらねえ?」
カツオ「そんなの、やだよ」
タラヲ「つまんないです」
サザエ「(笑)」


●公園


カツオと中島が仲直りの握手。横には橋本もいる。


カツオ「昨日はゴメンよ、中島」
中島「いやあ、僕の方こそ悪かったよ」
橋本「よかった。早いトコ、仲直りしてくれて」
中島「ところで、例の懸賞作文、何かいいアイデア思いついたかい?」
カツオ「全然ダメさ。いざとなると、何にも思い浮かばなくて」
橋本「うん、僕もさ」
中島「やっぱり、橋本もか」
カツオ「大体、作文なんて元々苦手だものな」
中島・橋本「うん」
ウキエの声「カツオくーん」
カツオ「あ、ウキエさーん」


そこにハチを散歩に連れたウキエがやって来る。
みんな、ベンチに腰掛けてウキエを囲み話し始める。


ウキエ「へえ、25年後の事を作文にねえ」
カツオ「ウキエさんはどうなっていると思いますか?」
ウキエ「それは私にもわからないけど・・・」
中島「どんな風に変わっているだろう?」
カツオ「何か調べる方法はないかなあ?」
ウキエ「じゃあ、みんなで図書館にでも行ってごらんなさいよ」
カツオ「図書館?」
ウキエ「私も困るとよく行くんだけど、何かヒントが見つかるかも知れないわよ」
カツオ「なるほど、さすがウキエさん。早速行ってみます」


●あさひが丘図書館


あまり人もおらず、静かな図書館。


中島「うわー、本がたくさんあるなー」
橋本「当たり前じゃないか」←橋本、冷静すぎ
中島「何しろ、図書館なんてあまり来ないものな」
カツオ「あーあ、調べる前にイヤになっちゃうなあ」


そこに本を抱えた西原がやって来る。


西原「やあ」
カツオ「西原?」
西原「君達も例の作文の資料探しかい?」
カツオ「うん。まあね」
中島「西原も応募するのかい?」
西原「ああ。前々から興味のある分野だからね・・・で、何か参考になりそうな分野はあったかい?」
カツオ「いやあ、それが・・・」
中島「どこから手をつけていいのか、見当もつかなくて」
西原「だったら、これから僕の家へ来ないか?」
一同「え?」
西原「君達に面白いものを見せてあげるよ」
一同「???」


●西原の部屋


キレイな洋室。本棚には本がギッシリ、机の上にはパソコンが置かれている。


カツオ「へえ、パソコンかー」
中島「すごいなー」
西原「実は、これを使って、25年後の社会がどうなるか、予想を立てている所なんだ」
一同「へ~」
カツオ「さすが西原だなあ」
西原「例えば・・・これが僕の予想する25年の磯野だ」


ディスプレイにカツオの姿が映し出される。
西原がキーボードを叩くと、カツオの姿が徐々に老けていき、36歳時点でヒゲが生えて、頭がハゲる。


カツオ「えー??これが僕ー?」
中島「ヒゲを生やすんだ?」
橋本「やっぱり、お父さんに似ているなー」
西原「遺伝のデータを考えると、どうしてもこうなっちゃうな」
カツオ「ちぇー」
西原「それから、きっと学校へは通わなくてもよくなっているよ」
カツオ「本当かい!?」
西原「ああ、コンピュータ通信を使用していけば簡単だよ」
カツオ「学校行かなければ、立たされる心配はないや」
中島「そうだな」
西原「残念ながら、そう上手くはいかないんじゃないかな?」
カツオ「どうして?」


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★西原の想像。


マンガを読んでサボっているカツオを、パソコンの画面上から担任が怒っている。


担任「磯野!しばらく立っていなさい」


すると、天井からマジックハンドが降りてきて、カツオを吊り上げる。


カツオ「ひゃあー!」


そして、部屋の前に放り出される。
その光景をタマが不思議そうに見ている。


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カツオ「えー?変な事、予想しないでよ」
中島「いやあ、案外当たっているかも知れないぞ」
カツオ「な、中島・・・」
一同「(笑)」


●夕暮れの路地


カツオがとぼとぼと歩いている。


カツオ「ちぇ。西原にはとっても敵いそうにないけど、僕は身近な所から研究してみるか」


●磯野家・台所


サザエとフネが料理中。


サザエ「ねえ、母さん」
フネ「何だい?」
サザエ「今夜、ご飯、どのくらい炊こうかしら?」
フネ「そうだねえ。お父さんが腹八分目が体に一番と言ってたから」
サザエ「マスオさんも僕もそうすると言って、毎日、ご飯が余ったり足りなかったり」
フネ「困ったねえ・・・」


その光景を冷蔵庫の陰から見ていたカツオ、何かが閃く。


●磯野家・廊下


波平が電話中。


波平「いやあ、ご無沙汰いたしております。ええ、カツオもワカメもすっかり大きくなりまして、一度、ご覧になっていただきたいくらいです」


その様子を見ていたカツオ、何かが閃く。


カツオ「よーし、これだー!」


●磯野家・カツオの部屋


カツオが机に向かっている。


ワカメ「お兄ちゃん、ご飯前に勉強?」
カツオ「違うよ。海外旅行目指して頑張っているのさ」
ワカメ「あー、例の作文ね」
カツオ「そう言う事」


●磯野家・居間


一家揃って夕食。波平はビールを飲んでいる。


波平「ほお。25年後の我が家か」
カツオ「まずは身の回りの生活の変化を予想してみたんだ」
マスオ「へえ」
サザエ「で、我が家の暮らしはどう変わるわけ?」
カツオ「うん、例えば、食事の場合なんかは・・・」


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★カツオの想像。


サザエが台所で栗ご飯を作っている。


サザエ「栗ご飯に入れる栗、幾つずつにする?」
カツオ「お父さん5つ、お母さん3つ、僕7つ、ワカメとタラちゃんが6つね」

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カツオ「なーんて言ってたのが、カロリー計算なんかがパッとわかって」

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★カツオの想像。

台所に置かれたパソコンに「波平1.5個」と表示されている。


波平「ほお。ワシの適量は一個半か」


続けて、夕食にサンマを食べている波平。


波平「サンマについてはどう言っとる?」
サザエ「聞いてくるわ」

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カツオ「と言う具合に、食事は全てコンピュータが管理してくれるんだ」
波平「ほお?」
カツオ「そして、電話は当然、テレビ電話になっているんだ」

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★カツオの想像。


壁にかけられているディスプレイに相手の姿が表示されている。


波平「いやあ、ご無沙汰いたしております」
子供達「こんにちはー」


もちろん、相手方にも姿が表示される。


電話の相手「おお、カツオくんにワカメちゃんにタラちゃんかな?3人ともすっかり大きくなって」

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フネ「へえ。便利だろうねえ」
波平「ああ、百聞は一見にしかずだからな」
マスオ「ああ、じゃあ、こんな利用法もきっとあるかも知れませんよ、お父さん」

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★マスオの想像。


映画の看板を塗っている男。


看板塗り「はあ、映画も不況で仕事が減ったなあ」
上司「おーい、捨てる神あれば拾う神だ」
看板塗り「??」


看板塗り、会議中の光景を大きく描き始める。


看板塗り「・・・何に使うんだろう?」


マスオ、その看板をバックに電話をしている。


マスオ「あー、サザエかい?いやあ、会議が延びちゃってねえ」


その後ろではキャバクラ嬢が看板を持って、電話口の向こうのサザエに見せている。更にその後ろでは水割り片手にアナゴくんが笑っている。


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波平「ほお、なるほど、そりゃあいい」←カツオだったらバカモン言うくせに
サザエ「まー、呆れた!」


●磯野家・カツオの部屋


深夜。カツオ、鉢巻をして机に向かっている。
そこに波平がやってくる。


波平「ほお。随分頑張っているようだな、カツオ」
カツオ「他にもいろいろと未来を予想しているんだ。やり始めたら面白くて」
波平「(うれしそうに)うむ」


●磯野家・居間


大人たちが卓袱台を囲んでいる。


フネ「まあ、まだ起きているんですか、カツオは」
波平「うん」
サザエ「普段の勉強もそれくらい頑張ってくれたらいいんだけどなあ」
フネ「本当だわねえ」
波平「ま、よかろう、何事も勉強の内だ」


●磯野家・カツオの部屋


すっかりワカメが寝入っている中、カツオは寝床に入りながら、未だに頑張っている。


カツオ「(あくび)ふわ~。もうちょっともうちょっと」


この話続く
次回、怒涛の展開が??