名作プレイバック「ドーンと一家でハワイ旅行」#2
※この作品は1998年11月に放映された30周年記念スペシャルです。詳細は前エントリをご覧下さい。
●マウイ島沖・遊覧ボート内
キャッシーの写真を前に、カツオは笑いが止まらない。
父親であるヒゲ紳士は、娘に電話をしている。
カツオ「グフフフフ・・・」
ヒゲ紳士「オーケーキャッシー。(カツオに)学校が終わったらすぐ来るように言っておいたヨ」
カツオ「サンキュー!世の中にはこんな偶然ってあるんだなあ」
サザエ「さっきまで萎れてたくせに」
ワカメ「私がこの船に乗ろうって言ったおかげよ」
タラヲ「ボクも言ったです~」
カツオ「わかったわかった」
ヒゲ紳士「(外を指して)ほら、イルカだヨ」
ワカメ「わー、イルカー!」
タラヲ「速いです~」
ヒゲ紳士「(サザエに)こんなかわいい子を、3人もいてナイスね」
サザエ「えー!?ノーノー!2人は妹と弟ですー」
ヒゲ紳士「(カツオに)だったら、ユーのパパとママはどうしたの?」
カツオ「今頃、ホノルルで鄙びた温泉でも探していると思います」
ヒゲ紳士「ホワット?」
カツオ「ひ・な・び・た・お・ん・せ・ん」
●ホノルル市内・市街地
街をぶらぶらしている波平とフネ。
やがて、ブランドショップを発見する。
フネ「日本人が多いですねえ」
波平「そう言うワシらも日本人だろうが」
フネ「そうですねえ」
波平「おお、ここに入ろう」
フネ「まあ、でも、ここは・・・お父さん!」
●ホノルル市内・ブランドショップ
誰もいない店内は、高そうな装飾品が並んでいる。
2人はバッグ売り場の前に位置取る。
波平「好きなバッグを選びなさい」
フネ「あたしはいいですよ」
波平「遠慮する事はない・・・(売り物を手に取って)此れなんかどうだ?」
フネ「派手過ぎますよ」
波平「じゃあ、どれがいいんだ?」
フネ、カバンを開ける。
波平「金はワシが払うと言っとるだろう?」
フネ「いえ、メガネをかけないと値札が見えませんから」
波平「値札は気にせんでよろしい」
フネ「お父さん・・・」
やがて、フネは黄色いハンドバッグを手に取る。
そんな彼らの様子に、笑顔の店員が近寄ってくる。
フネ「これは幾らになってます?」
波平「気にせんでいいと言っとるだろうが」
フネ「でも・・・」
波平「(店員に)あー。。。ジス・・・バッグ・・・えーと、あー・・・」
店員「いらっしゃいませ。奥様にとてもお似合いですよ」
波平「なぁんだ、日本語が出来るのか」
フネ「あなた、値段を見ないと」
波平「(クレジットカードを差し出して)キミ、これで頼む」
店員「かしこまりました」
そんな2人を、店の外から例の大男がじっと様子を伺っている。
●ホノルル市内・寿司屋
カウンター形式の寿司屋。
波平とフネは座敷に座って、寿司をつまんでいる。
波平「いやあ、まるで日本にいるようだな」
フネ「お父さん、幾らだったんですか?」
波平「まだ、そんな事言っとるのかい」
フネ、カウンターに座っている大男に気付く。
フネ「あ!(小声で)お父さん、あの人、ずっとあたし達を尾けているような気がして・・・」
波平「偶然だろう?」
2人の会話に気付いた大男、巨体を揺らしながら笑顔で近寄ってくる。
大男「スミマセン~尾けてました」
フネ「ええ!?やっぱり」
波平「(毅然と)ワシらに何か!」
大男「(指を2本立てて)もしや、これをやられるんじゃないかと」
波平「(同じように指を立てて)これ・・・?囲碁ですか?」
大男「ハーイ!囲碁ですー」
波平「嗜む程度ですが・・・」
大男「やっぱり、ワタシの勘が当たりました!一局お願いします」
波平「ここでやるんですか?」
大男、懐から折りたたんだ碁盤を取り出す。
●マウイ島・波止場
停泊している遊覧ボート。
遠くからキャッシーが嬉しそうに駆けて来る。
キャッシー「ヘーイ!カツオー!カツオー!」
カツオ「キャッシー!また会えるなんて夢みたいだよ」
キャッシー「クジラ見れた?」
カツオ「イルカしか見れなかったよ」
キャッシー「オウ、残念」
ワカメ「本当に花沢さんそっくりな声」
サザエ「かわいい子じゃないの」
ヒゲ紳士「私、仕事あるので・・・後はキャッシーに案内させるヨ」
サザエ「すみません、助かりますわ」
ヒゲ紳士「今度、日本に行ったら世話になるヨ」
マスオ「どうぞどうぞ」
●マウイ島・蒸気機関車内
自然の中を走る蒸気機関車。
珍しい乗り物にワカメとタラヲは興奮気味である。
タラヲ「かっこいいです~」
マスオ「タラちゃんもワカメちゃんも、初めてじゃないのかい?SLに乗るの」
ワカメ「うん、初めて!」
カツオ・キャッシー「(笑いながら打ち解けている)」
マスオ「すっかり、盛り上がっているみたいじゃないか」
サザエ「キャッシーが日本語を喋れるおかげよね」
マスオ「うん、おばあちゃんが日本人だって言うからね」
カツオは飛行機内とホノルルで見かけた大男の話を持ち出す。
キャッシー「またあの男が?」
カツオ「ボクをマークしているんじゃないのかな?」
キャッシー「どうして?」
カツオ「大金持ちの息子と誤解してたりして」
キャッシー「(大爆笑)」
カツオ「キャッシー・・・?」
キャッシー「それはないよ、絶対」
カツオ「はっきり言ってくれるなあ・・・」
●ホノルル市内・公園
緑溢れる公園のベンチで、フネが優雅にソフトクリームを舐めている。
そこにおっとり刀の波平が駆けつける。
波平「母さん」
フネ「終わりましたか、日米対決は?」
波平「いやあ、危うく負けるところだった。(ソフトクリームを見て)どうしたんだ?」
フネ「もちろん買ったんですよ」
波平「よく通じたな」
フネ「あたしだってソフトクリームくらい買えますよ」
波平「よし!ワシも挑戦してみるか・・・(ポケットを探って)あ、あー?」
フネ「ないんですか、お財布?」
波平「ん・・・ん・・・。やられたようだ・・・」
フネ「まさか、あの人が・・・?」
波平「どうも馴れ馴れしいと思った・・・(ため息)」
フネ「(小笑い)」
波平「母さん、幾ら持ってる?」
フネ「(持ち金を見せて)ドルはこれだけしか」
波平「タクシーにも乗れんな」
フネ「バスなら1ドルで乗れるそうですよ」
●マウイ島・ラハイナ
広場にはバニヤンツリーが雄雄しくそびえている。
それを見上げている磯野家一同とキャッシー。
キャッシー「バニヤンツリーは、ハワイで一番大きな木よ。百年以上立ってるって」
タラヲ「おじいちゃんみたいな木です」
カツオ「ウチの庭くらいの広さかなあ」
キャッシー「??」
タラヲ「はい???」
サザエ「見栄張らなくていいのよ」
キャッシー「(大爆笑)」
カツオ「(照)ね・・・姉さん」
マスオ「(時計を見て)サザエ、そろそろ空港に行かないと」
キャッシー「もう?ディナー一緒に食べられると思ったのに」
カツオ「何だったら、ボクは後から」
サザエ「飛行機はもう予約してあるのよ」
マスオ「(カメラを手に)カツオくん、そこに2人並んで」
キャッシー「オッケー!カツオー!」
マスオ「撮るよ~」
キャッシー「ハーイ!」
かくして、束の間の再会は一枚の写真にて幕を閉じる。
●マウイ島~ホノルル・飛行機内
大空を往く飛行機内。
窓際のカツオは独り沈んでいる。
ワカメ「お兄ちゃん、ジュース」
カツオ「いらない・・・」
サザエ「どうしたの?珍しいわね、カツオが」
マスオ「お腹でも痛いのかい?」
カツオ「胸を痛めてるんだよ・・・やっぱり、反対するだろうな、お父さん」
マスオ「何をだい?」
カツオ「国際結婚」
マスオ「えー??」
サザエ「誰が国際結婚するの?」
カツオ「ボクに決まってるじゃないか」
サザエ・マスオ「・・・(含み笑い)」
カツオ「何がおかしいのさ!」
サザエ「だって~」
マスオ「ごめんごめん」
サザエ・マスオ・ワカメ「(含み笑い)」
カツオ「(不機嫌)」
●ホテル・ロビー
ホテルに帰り着いたサザエ達。
しかし、波平とフネの姿が見当たらず・・・
マスオ「まだ、帰っていないそうだよ、お父さん達」
サザエ「メッセージもないの?」
マスオ「うん・・・」
カツオ「きっと、鄙びた温泉でも見つけたんじゃないの?」
タラヲ「お腹空いたです」
ワカメ「アタシも」
カツオ「ボク達は鄙びていないところで、ディナーと洒落込もうよ」
マスオ「胸の痛みは、治ったのかい?」
カツオ「食べて忘れる事にするよ」
サザエ「じゃあ、シャワーでも浴びて出かけましょうか」
●ホノルル市内・市街地
辺りはすっかり日が暮れている。
どうやら道に迷っているらしい波平が公衆電話の受話器を手にしている。
波平「ジャッパニーズ、プリーズ!イエース・・・あ、もしもし、磯野ですが・・・メッセージ?皆で食事に行く?・・・そうですか・・・」
フネ「出かけたんですか、サザエ達」
波平「(受話器を置いて)ワシらが一文無しで困ってるのも知らんで」
フネ「仕方ないですよ、事情を知らないんですから」
波平「暢気な事言いおって」
フネ「いいじゃありませんか。バスを乗り間違えたおかげで、お父さんと知らない町を歩けるんですから」
フネ、笑顔で波平の腕を取る。
波平「(照れて)お、おい・・・よさんか」
フネ「誰も知っている人はいませんよ」
●ホテル・ロビー
食事を終えて帰って来たサザエ達。
そんな彼らを待ち受けるように、カウンターに大男の姿があった。
ワカメ「帰ってるかしら。お父さん達」
カツオ「うわあああああああああ」
マスオ「お、おい、どうしたんだい、カツオくん」
カツオ「あの男だよ、ボクを尾けまわしてるの」
サザエ「飛行機の中で会ったって言う?」
大男、彼らの姿を見つけると親しげに近寄ってくる。
カツオ「来た~~!!」
サザエ「(毅然と)弟に何か御用ですか!!」
大男「あなた方、磯野さんのご家族ですか?」
サザエ「そうです!」
大男「(ポケットから財布を出して)これ、届けに来ました」
サザエ「まあ!父さんの財布!」
大男「お寿司屋さんに、落ちてました」
サザエ「え、ええ~!?」
●磯野家・廊下
受話器を手にしているノリスケ。
その足元には、じゃれ付くようにイクラの姿がある。
ノリスケ「はい、磯野ですが・・・え?コレクトコール?ハワイから?」
●ホノルル市内・市街地
公衆電話から磯野家に通話をしている波平。
その傍らにはフネと金髪長身の女性の姿がある。
波平「ノリスケか。実は道に迷ってしまってな」
ノリスケの声「おじさん、ボクは日本にいるんですよ?」
波平「だから通訳してほしいんだ。今、代わるから・・・(女性に受話器を差し出して)プリーズ」
フネ「すみませんねえ」
女性「NOPUROBREM~Hi・・・」
●ホテル・廊下
クタクタになった様子でエレベーターから降りてくる波平とフネ。
いち早く、カツオが見つける。
カツオ「父さん達が帰ってきたよ!」
ワカメ「迷子になってノリスケおじさんに聞いたんですって」
サザエ「ノリスケさんが来てるの!?」
●ホテルの部屋
ベッドに座り込んだ波平を、磯野家一同がぐるりと囲んでいる。
カツオ「説明してよ、お父さん」
波平「(照)いや、その、あの、つまりだな・・・」
フネ「(小笑い)
<第3パート終了>
●磯野家・台所
家事をしているタイコと、邪魔するように遊んでいるイクラ。
そこに御用聞きを兼ねてサブちゃんがやって来る。
サブ「えー?ハワイからホテルの場所を聞いてきたんですか?」
タイコ「道を教えてくれたのは向こうの人なんだけど、ノリスケさんが通訳して」
サブ「要するに、衛星中継みたいなもんですね」
タイコ「そうねえ」
イクラ「ハーイ」
サブ「やあイクラちゃん。タラちゃんの家の住み心地はどうだい?」
イクラ「ちゃーん!」
タイコ「それがすっかり気に入っちゃったみたいなの」
イクラ「(喜)ハーイ」
●ホテルの部屋
窓から海を臨みながら、サザエが電話をかけている。
サザエ「あー、タイコさん。ありがとう、おかげで父さん達無事に帰ってきたわ」
●磯野家・廊下
電話を受けているタイコ。
足元ではイクラが、タイコのスカートを引っ張っている。
タイコ「お役に立ててよかったわ」
イクラ「チャーンチャーン!」
タイコ「はいはい・・・(サザエに)イクラがタラちゃんと話したいみたい」
●ホテルの部屋
サザエ「それが父さん達と出かけちゃったのよ。刑事さんのお家に」
タイコの声「刑事さんって・・・何か事件でも?」
サザエ「父さんの囲碁友達なの」
タイコ「(゚Д゚)ハァ ?」
●ホノルル市内・赤いバン
大男(ビリー)が運転する赤いデラックスバン。
そこに、波平、フネ、タラヲが同乗している。
波平「いやあ、まさか刑事さんとは思いませんでした」
ビリー「てっきり、泥棒だと?」
波平「い、いえいえ(汗」
フネ「おかげさまで、財布が戻って」
刑事「観光客を狙う悪いヤツを取り締まるの、私の仕事ネ」
車は市街地から住宅街に入る。
タラヲ「きれいなお家ばっかりですね」
フネ「ホントだねえ」
●ビリーの家・駐車場
車から降りてきた一同を出迎えるように、タマそっくりのネコが姿を見せる。
ネコ「ニャ~」
タラヲ「あー、タマですー」
フネ「ホントにそっくりだね」
波平「日本から飛行機で飛んできたのかも知れんぞ」←んなわけあるか
タラヲ「タマー」
ネコ「ニャ~」
タラヲ「本物のタマです!」
ビリー「ハハハ、こいつは何と言われても返事をするネ。(ネコを呼ぶ)カツオ~」
ネコ「ニャ~」
タラヲ「自分の名前がわからないですか?」
ビリー「どうもそうらしい」
家の中から、小錦のようなご婦人が姿を現す。
ビリーの妻「ハーイ!ビリー!」
ビリー「ワイフでーす!」
ビリーの妻「ウェールカームー♪」
フネ「お邪魔します・・・」
タラヲ「こんにちは!」
ビリーの妻「(頭を撫でて)オウ!可愛い息子さん!」
波平「いやあ、孫でして」
ビリーの妻「ホワット?・・・オウ!ミステイク!」
●ビリーの家・庭
箱庭のような東京の住宅事情からは考えられない広い邸宅。
やしの木がそびえる庭では、早速、波平とビリーが碁を打っている。
波平「いやあこんないい景色を見ながら碁を打てるなんて夢のようです」
ビリー「私こそ夢のようヨ!」
波平「は?」
ビリー「こうして、2日連続で碁を打てるなんてネ!」
タラヲ「おじいちゃーん」
波平「おう、タラちゃん。おばあちゃんはどうしてる?」
タラヲ「お料理を教えてます」
●ビリーの家・キッチン
フネとビリーの妻が稲荷寿司を作っている。
フネ「ハワイで油揚げが手に入るなんて」
ビリーの妻「ハワイ、日本食ブームネ」
フネ「あーあー。そんなに強く握らないで、そうっと」
ビリーの妻「オウ!そうっとネ」
●ビリーの家・庭
どうやら、ビリーを囲碁でやり込めているらしい波平、余裕の表情である。
そこに大量の稲荷寿司を持って、フネとビリーの妻がやって来る。
ビリー「(碁盤を見て悩んでいる)うーむ・・・」
ビリーの妻「ヘイ!ビリー!ルック!」
ビリー「オウ!お稲荷さーん!」
波平「稲荷寿司がお好きなんですか?」
ビリー「ノーノー。呼び捨て失礼ヨ、お稲荷さん!」
一同「(爆笑)」
●ワイキキ沖・連絡船内
その頃、サザエ達は別行動。
青い海原を小さな連絡線が走っている。
ワカメ「この船が潜るの?」
カツオ「この船が潜ったら沈没しちゃうよ」
マスオ「沖で潜水艦に乗り換えるんだ」
行く先に体半分海に沈めた潜水艦の姿が見える。
サザエ「あれじゃないの?」
カツオ「うわー、本格的ー」
●ワイキキ沖・アトランティス号内
かくして、潜水艦・アトランティス号に乗り込んだ一同。
艦内に、女性ガイドのアナウンスが流れる。
アナウンス「皆様、ようこそおいで下さいました。ただいまより、水深百フィートを越す海底旅行にご案内いたします」
カツオ・ワカメ「(喜)わー」
アナウンス「この潜水艦は時々故障して浮き上がらない事がありますので、予め覚悟を決めておいて下さい」
ワカメ「(驚)うっそー?」
カツオ「あはは、ジョークだよジョーク」
沈み始めるアトランティス号。
丸窓の先には、沈没した船や飛行機に混じって、優雅に泳ぐ熱帯魚の群れが見える。
サザエ「きれいー、タラちゃんに見せたかったわ」
アナウンス「この海底にある船や飛行機は、魚達のアパートにするために沈められたものです」
サザエ「へえ」
カツオ「あー、気持ち良さそうだなあ。よーし、今度来る時は自分で潜るぞ」
ワカメ「今度っていつ?」
カツオ「もちろん新婚旅行だよ」
●ワイキキビーチ
観光を終えて、テラスで一服しているサザエ達。
ここで、カツオがある提案を持ち出して・・・。
サザエ「ホントにタラちゃんに見せたかったわ」
マスオ「きっと、興奮しただろうねえ」
カツオ「少しはタラちゃんの事忘れたら?」
ワカメ「今頃、お父さん達と楽しんでるわよ」
カツオ「姉さん、夕飯まで別行動にしない?」
サザエ「独りでどこに行くの?」
カツオ「ボクはワカメと一緒だよ」
ワカメ「え!?お兄ちゃんと?」
カツオ「その辺、ぶらぶら歩いてみたいんだ」
マスオ「大丈夫かい?」
サザエ「あんまり遠くに行かないようにね」
カツオ「了解。さ、ワカメ、行くぞ」
サザエ「本当に大丈夫?」
カツオ「父さんと一緒にしないでよね。ちゃんとホテルに帰って来るよ」
●ホノルル市内・市街地
堂々と町を往くカツオ。馴れない街にワカメは戸惑い気味である。
カツオ「どうせ姉さん達と居ても、買い物に付き合わされるだけさ」
ワカメ「心配だなあ。お兄ちゃんと2人だけで」
カツオ「ハワイなんて、日本みたいなものさ。ほら、ちゃんとお寿司屋さんだってあるだろう?」
ワカメ「ふーん・・・あ?」
カツオ、近くにいたご婦人にバス停の場所を尋ねる。
カツオ「エクスキューズミー。プリーズテルミーバスストップ」
ご婦人「オウ」
真上を指差すご婦人。この場所こそがバス停であった。
カツオ・ワカメ「(恥)あー・・・」
●ホノルル市内・バス内
軽快に走るバス。
相変わらずカツオは堂々としていて、ワカメはビクビクしている。
カツオ「こう言うのを本当の社会科見学って言うんだ」
ワカメ「どこまで行くの?」
カツオ「とりあえず終点まで」
ワカメ「えー!?」
カツオ「ホノルルのバスは、どこまで乗っても2人で1ドルなんだ」
●どこかの海岸
釣りをしている波平とビリー。
2人の丁度中間には、双眼鏡を目に当てたタラヲの姿がある。
ビリー「ヘーイ、ボーイ!鯨は見えたかー」
タラヲ「見えないですー」
波平「山の方を見ても鯨はおらんぞ、タラちゃん」
タラヲ、遠くの山道を走るバス内に、不安そうな表情のカツオとワカメを見つける。
タラヲ「あ、カツオ兄ちゃんです!」
波平「まさかあ?」
タラヲ「ワカメお姉ちゃんも乗ってるです」
波平「(双眼鏡を奪って)ちょっと貸しなさい」
タラヲ「ホントですよ」
●ホテルの部屋
いち早く、帰って来ているサザエとマスオ。
真っ赤な夕焼けの灯りが、窓から注ぎ込んでいる。
サザエ「きれいな夕日・・・」
マスオ「お父さん達も、どっかで見てるんじゃないかな」
サザエ「問題はカツオ達よ」
マスオ「心配ないよ。買い物でもしてるんだろう」
サザエ「昨日の父さんの事もあるし」
●バス終点地点
山の中に作られているバスのロータリー。
人気のない中、ポツンとカツオとワカメの姿がある。
ワカメ「バス来ないね・・・」
カツオ「ハワイのバス停には時刻表がないからなあ」
ワカメ「来なかったらどうするの?」
カツオ「50セントでこんなに遠くに来ちゃうなんて思わなかったよ」
カツオ「よーし!こうなったらヒッチハイクだ・・・(近寄ってきた赤いバンに)エクスキューズミー!」
驚いた様子でバンから降りてくる波平達。
波平「カツオ、ワカメ!?」
カツオ「父さん!?」
波平「お前達、こんな所で何をしとるんだ?」
ビリー「バスは明日の朝まで来ないゾ~」
●ホテルの部屋
電話を受けていたマスオ、サザエの元にやって来る。
サザエ「父さん達?」
マスオ「ビリーさんの家で、夕飯をご馳走になって帰って来るってさ。カツオくんとワカメちゃんも一緒らしい」
サザエ「どう言う事?」
マスオ「さあ?わかってるのは、今夜の夕飯は2人だけって事だ」
●高層レストラン
夜景を一望できるムードたっぷりのレストラン。
着飾ったマスオとサザエが、ワイングラスを重ね合わせている。
マスオ「2人だけのハワイにカンパーイ」
ボーイ「アーユー、ヒアイズハネムーン?」
サザエ「(適当に)オー、イエース!」
ボーイ「ン~」
ボーイが指を鳴らすと、店員達が奥から「HAPPYWEDING」と書かれたケーキを運んでくる。更に、店員達から記念のレイを首から掛けられる。思いっきり、歓迎ムードである。
マスオ「もしかしたら、新婚旅行ですかって聞かれたんじゃないかな?」
サザエ「ええ~!?」
時既に遅し、スポットライトが2人を照らし、周囲のお客さんから歓迎の拍手が一斉に贈られる。
罰が悪そうに照れ笑いしながら、2人は周囲に頭を下げまくる。
<第4パート終了>
==
~インターミッション
着飾って勢揃いしている磯野家一同。
カツオ「えー、突然ではございますが、ここで・・・」
サザエ「(カツオを突き飛ばして)どいて!えー、サザエさん放送30周年記念スペシャル、お楽しみいただいているでしょうか?さて、皆さんからご応募頂きました、サザエさん一家の似顔絵当選者を発表いたしまーす。本当にたくさんのご応募を頂きまして、ワタクシ、フグ田サザエ、心より・・・」
波平「(咳払い)長々喋っとらんで、早く発表しなさい」
サザエ「失礼致しました。さあ、それではサザエさん一家の各賞から発表してまいりまーす。
サザエ賞:原田沙穂里さん(北海道札幌市・13才)
マスオ賞:西岡史枝さん(福岡県福岡市・19才)
ワカメ賞:関川千穂さん(東京都板橋区・13才)
タラちゃん賞:近藤尚子ちゃん(岐阜県羽島郡・5才)
カツオ賞:酒井裕子ちゃん(神奈川県横須賀市・9才)→オッサンみたいなタラちゃんがツボ
フネ賞:神中輝子さん(愛知県東海市・69才)
波平賞:上原史之さん(千葉県千葉市・13才)
~それぞれの選評
カツオ「この笑顔、姉さんらしいや」
フネ「マスオさんの優しさが伝わってきますよ」
マスオ「あはは、かわいいなあ」
ワカメ「タラちゃんと同じ年くらいの子が描いてくれたのよ」
カツオ「やっぱり、磯野家を支えているのは僕だね」
波平「ほう、母さんの雰囲気が実によく出とる」
タラヲ「おじいちゃんのお顔、面白いです」←毒
サザエ「以上、ご覧の7つの作品が各賞に決定いたしました」
カツオ「この中から、グランプリが決まるんだよね」
ワカメ「はあ、ドキドキしちゃう」
サザエ「さあ、この中から見事グランプリに輝いたのは・・・」
鳴り響くドラムロール。やがて、スポットライトがワカメを照らし出す。
ワカメ「(喜)わあ」
サザエ「東京都板橋区、関川千穂さんの作品でーす」
一同「おめでとうございまーす」
サザエ「グランプリ受賞作品には、株式会社東芝よりフラットテレビFACEを。そして、各賞受賞の皆様にも素敵な商品が送られます。更に、作品を送って頂いた皆様の中から、優秀な作品には、サザエさん放送30周年記念テレホンカードをお送りいたします。たくさんのご応募・・・」
一同「ありがとうございました」
タマ「にゃ~」
==
勝手に次回予告
長かったハワイ旅行も遂に終焉。しかし、最後の最後でとんでもない事態が発生する。果たして、磯野家は救われるのか。今、ハワイを人の意識の共振による奇跡の光が包み込む。