weekend.

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単身赴任の彼。主婦の私。ありふれた田舎町。ありふれた不倫。でも最後の恋と思いたい。

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次の週末、

カズは約束通り、私を蕎麦を食べに、ドライブへ連れていった。

車内では、私の好きな音楽をかけてくれ、

親密に色々な話をした。

 

 

カズが話しがちなのは、

東京に居る娘の話。

 

22歳になる娘を溺愛している。

私に娘の写メを何枚も送ってくる。

 

正直笑ってしまったけれど

 

幼い女の子ならいざ知らず、

二十歳を超えた女性の写メを何枚も送るなんて、

やはりカズも父親なんだろう

 

カズには3人の子供がいる。

 

一人目の奥さんの間にできた息子

その息子とは2年で別れてから一度も会っていないそうだ

 

そして、今の奥さんの娘、

もう一人の息子は、今の奥さんの連れ子だ

もう30を過ぎて、家を出ているが、

多分関係は良好なんだと思う

だが、息子の話はほとんど出ない

自分の娘の話を止めなければ延々としている

 

なんとなく面白くはない

 

もうその話をやめて

 

そうは言えないから、

私はずっと黙る

 

鈍感なカズも、

ふと話をやめて、

私の機嫌を取る

 

ーーこんな子供みたいな態度、

取りたくないのに

彼の一番になりたくて、

奥さんより

息子より

娘より

誰より

私を見て

って

面倒臭い女になってしまう

 

そして

奥さんより

息子より

娘より

誰より

カズの色々な顔を知っている

そう

イニシアチブを取りたくなる

引き裂きたくなる

 

 

 

U市の有名な蕎麦屋は、まだ11時過ぎだというのに、

5、6人の客が並んでいた

 

ちょうど一台駐車場が空いていて、

私たちはハスラーを停めた

 

古民家のような蕎麦屋は、

店内が

おばあちゃんの家に来たような、

仏壇が置いてあったり、

代々の店主の写真が飾っていたり、

ちょっとびっくりするような内装だった

 

それでも蕎麦はなるほど美味しかった。

どんぶり一面に春菊の天ぷらが乗っている

春菊といえば若干の苦味が特徴だが、

苦味がなく、春菊のフレッシュさを残したまま、

カリッという良い音と風味がして、

とても美味しく、

機嫌も良くなった

 

帰りの車で、カズは

 

「泊まり嬉しいね

寝かせないよ

野獣に

なっちゃおうかな」

 

私の機嫌を取るための言葉でも、

私はキュンと胸が高鳴った。

 

まだ雪の残っているアスファルトが

夕闇に光っている

 

大人の二人には

さまざまな事情があって

乗り越えられないものがたくさんあって

全部をわかったように飲み込んで

それでも

ただ

好きとか

そういう気持ちの前に

何もなくて

 

だって

目の前にあなたがいる

 

それだけが事実で

真実だから

 

to be continued...

 

 

 

 

もう随分おなじみになった

週末のベッドで、

カズは言った。

 

「そろそろ雪が溶けてきたね

来週末は泊まれるんだろう?

U市に旨い蕎麦屋があるんだ

蕎麦食べにいかないか?

ドライブがてら

響子を連れて行きたい」

 

来週は、主人が出張で土日、

カズの家に泊まる予定にしていた。

 

「U市まで車でどのくらい?」

 

「1時間半かな」

 

「午前に出てランチに蕎麦って感じ?」

 

「そう

いや?」

 

「ううん

嫌じゃない

ずっと雪に閉じ込められてたから、

デートらしいデートはしたことないし、

楽しみだよ」

 

「この部屋で一日中セックス三昧って手もある」

 

カズは悪戯っぽく笑った。

笑うと笑い皺がとてもセクシーだった

細い眼はさらに細く優しく

 

「響子」

 

私を呼び捨てにするカズの優しい声が好きだ

 

正常位の時、

カズの柔らかい髪をくしゃくしゃにするのが好きだ

 

カズのタバコ味のキスが好きだ

 

指を絡ませてくる肉厚の手と指が好きだ

 

広い肩幅のシルエットと

カズは気にしている少しぽっこりのお腹も

私を包む長い手も

長い脚も

 

好きで仕方ないのに

 

「私のこと好きなの?」

 

とは聞けない

 

 

ガソリン代をかけて、

1時間半運転して、

蕎麦を食べに連れていってくれる

 

ただのセックスだけのセフレに

そんなことはしないだろうから、

少なからず私に好意を持ってくれているのは

わかるのだけど

肝心なことが聞けない

 

私のことが好きだと

私が特別だと

言ってほしい

その唇で

 

手が届きそうで

手が届かない

 

駆け引きはもういや

 

「響子」

 

もう一度私を呼んで、

カズは私の胸に口付けた

 

強く吸って痕をつける

 

もう決して

消えない痕を

つけて

 

あなたの脳裏に焼き付いて離れないほどの

消えない痕を

私もつけるから

 

to be continued...

 

 

 

アキラさんと別れて、

自暴自棄になっていた私は、

マッチングアプリで、誰彼構わず会って、

ワンナイトを繰り返していた。

 

一瞬だけでも優しくされたい。

嘘の優しさでいい。

 

そうして帰り道に相手の連絡先をブロックするのを

繰り返し、

私は自分の心を傷つけていた。

 

20人以上会っても、

私の心は満たされなかった。

 

そんな時、

快彦さんに出会った。

 

いつも通り、いつもと同じような会話を

メールでして、

会って、セックスしてさようなら

きっとこの人ともそうだろうと思っていたのに

 

快彦さんは私の眼を見て、

本気で口説いてくれた

快彦さんと別れた今でも、

あの時のことを思うと自然に頬が緩む。

カズに賭けてみようと決心した私だけど、

快彦さんは、やはりとても優しい人で、

20人のマッチングアプリの遊びの男とは

一線を画す素敵な人だった。

 

「こんなことを繰り返して

傷つくだけだろ

 

キョンのことを

この先寂しい思いはさせない

 

もう泣かなくていいから

 

俺と付き合ってほしい」

 

そう言って私にキスをした快彦さん

 

とても好きになった

 

とても好きだった

 

彼と付き合えて、

本当に良かった。

 

実際のところ、快彦さんには寂しい思いもさせられたし、

気持ちが伝わらなくて

泣いたりもしたけど

本当に一生懸命に恋をして、

アキラさんのことも、

ハルキのことも、

傷がすっかり癒えて、

私は私らしさを取り戻していた。

 

これが最後の恋と誓ったのに

 

嵐のようにカズが現れて、

私を奪っていった。

 

3度目のさよならを告げて

私はカズの胸に飛び込んだ

 

これからどうなるかなんて分からない

 

ただ、ハルキにも、

アキラさんにも、

快彦さんにもない特別なものを

カズには感じていた。

 

to be continued...

 

 

アキラさんとは、

月に2回程度会う仲になっていた。

 

ホテルに直行直帰。

 

ホテルに向かう車の中と、

事が終わった後のピロートーク、

送ってくれる車の中の

優しさだけが頼りだった。

そんな僅かな優しさに、私は縋っていた。

 

ただのセフレ。

 

簡単に切り捨てられそう。

でも、

アキラさんに私はゾッコンだった。

 

時折見せる優しさや

大人の男性らしさ、

都会的な容姿、

彼のセックス。

 

彼はなかなか連絡をくれない。

一日、二日、

3日目くらいに

 

”やあ

今残業中だよ”

 

気まぐれに連絡が来る。

 

”あまり放っておかないで”

 

今思うと、相当なかまってちゃんだったと思う。

 

自由にしていたい彼と

いつもかまってほしい私

 

”なかなか連絡がないのが寂しい”

 

そんなことを言う様になっていた私のことを、

アキラさんはウザく思っていたんだろう

恋人でもなく

ただのセフレの私、

都合のいい女のまま、

自分の連絡を待つだけの女でいて欲しかったのだと、

今になって痛いほど分かる。

 

クリスマスに会う約束をしていた。

私は特別な日を過ごせるのだと、

指折り数えていた。

 

ネイル

メイク

ワンピース

 

その日、アキラさんから連絡は来なかった。

 

1日半後、

 

”俺はもっと自由でいたい

かまってほしい君と俺とでは

合わないと思う

これで最後にしよう”

 

そんなLINEが届いて、

4ヶ月の私の恋愛が終わった。

彼はセフレでも、

私には恋だった

セフレに恋するなんて

一番苦しい

心はないのに

体だけ繋がって

 

こんなあっけない幕切の恋を

私は泣くまいと思っていた

 

実際、涙は出てこなかったのに、

1週間か2週間して、

街で彼と同じ車とすれ違った時、

思わず振り返ってしまった。

 

通り過ぎた夜風に、

涙が煽られた。

 

to be continued...

 

 

ハルキと別れたのは、後悔していないけれど

(そもそも会ってもいないのに、

付き合う定義に当てはまるかは不明)

少し私は自暴自棄になっていた。

 

生まれて初めてマッチングアプリに登録した。

アプリには、

信じられないほどのメールが殺到した。

(殺到、という言葉を使っても差し支えないと思う)

 

最初は、プロフィール写真を載せている人を

中心に見ていたが、

正直、

見た目がちょっと素敵だなと思う写真はそれほど無かった。

申し訳ないけれど。

 

吟味したわけではないけれど、

たまたま目にしたメールで、

文面が普通で、年収も高く、

常識人ぽい人と連絡を取った。

写真は載せていない。

 

名前はアキラさん。

50歳。

金融関係。

 

駅前のスタバで待ち合わせをしたアキラさんは、

仕立ての良いスーツと、革靴、

ネクタイを締めて、

とても素敵なスーツ男子だった。

手に持ったスマホのスマホケースは、

どこかのブランド、革のケースだった。

長財布はボッテガヴェネタ。

 

彼の都会的な振る舞いと、

それとは正反対の、親しみやすい話口調に、

私は舞い上がっていた。

 

彼も私を気に入ってくれた様だった。

 

その日のうちに私はアキラさんと寝た。

 

町外れのモーテル。

 

アキラさんはスポーツマンで、

筋肉質だった。

焼けた滑らかな肌。

 

こんな素敵な人に抱かれるの、私?

 

キスと絶頂と、

私は思わず、アキラさんの背中に爪を立てた。

 

   半年間、毎日毎日電話をしていたハルキと、

一瞬も触れ合わず、

指さえ繋がず、

出会って2時間のアキラさんと肌を重ねる。

 

でも、実感として、

アキラさんが私をただのワンナイトだか

セフレ扱いなのかは分からないけれど、

愛されていないアキラさんと触れ合った方が、

何倍も、アキラさんを知ったような、

愛されている感覚を覚えるような、

理解できるような気になる。

 

この世にプラトニックラブなんてない。

 

事が終わり、

アキラさんはベッドで私の長い髪を撫でた。

 

「また会える?」

 

アキラさんは言った。

 

「たぶん」

 

「連絡する。

来週のどれか会おう」

 

私の悪い癖

 

気持ちが暴れ出す。

 

すでにハルキは遠い彼方だった。

 

相手の男にすぐに本気になってしまう、

愚かな女。

 

 

 to be continued...