20代の半ば、ケニヤに住んでいたころの話です。
ある日、水産局に勤務する友人(日本人)がオートバイで我が家にやってきました。何故かニヤニヤしながら思わせぶりにヘルメットを取ると、彼の髪はクリンクリンのアフロヘアになってました。急に思い立って街の美容院に行き、一番細いカーラーを巻いてくれと注文したんだそうです。やはり髪型が変わると印象は大違い。パーマで髪がまとまったせいか輪郭がはっきりして、見慣れた顔がなんだか若返ったように見えました(現在と比較すれば当時の我々は、それはもう夢のように若かったわけですが)。
「お前もやってみろよ」とそそのかされて、すぐにその気になった付き合いの良い私です。場所を教わって同じ美容院に行き、全く同じ注文をして、その日のうちに私の頭もクリンクリン。もともと長髪だったので頭部のボリューム増加率はすさまじく、「近所で爆発でもあったの?」という感じの髪型になってしまいました。
初めてのパーマネントは新鮮ではありましたが、私の場合、若返ったというより幼くなった感じです。「カッコ良い」というよりも「コミカル」。同じ髪型の友人と並ぶと、なんだかコント用の小道具が二つ並んでいるようです。ちょっと後悔しましたが、やっちゃったものはしょうがない。しばらくはこのままシャバダバ。
翌日、いつものようにオートバイに乗って村に向かいました。稲作普及の仕事をしていたので、ほぼ毎日、農村を巡回していたんです。
ヘルメットを取った途端、顔なじみの農家のオジサン・オバサン達が私の爆発アタマを見て歓声を上げました。
「やったー!」
「カッコいい―!」
中には踊りだす人もいたりして、まさかこんなにウケるとは思っていなかった。
えー? どうしちゃったの、みんな?
その騒ぎには、単にコミカルな容貌を笑いものにしているのではなく、もっと温かい雰囲気がありました。騒ぎを聞きつけた村長さんまで出てきて、
「おめでとう! これであんたも俺たちの仲間だ」
なんて肩を叩かれたりして。
アフリカの人たちの多くは縮れた髪の毛にコンプレックスを抱いているそうです。
私は単に新しいおしゃれを試すつもりでパーマをかけたのですが、農家の人たちは「大きな歩み寄り」と受け取ってくれたようでした。その効果は絶大で、以前に増してみんなにこやかにやさしく接してくれるようになりました。
だからと言って還暦も近くなった現在、モザンビークでのウケを狙ってもう一度アフロヘアにしようとは思いませんが。