時々親子3人で連れ立って映画館に行きます。
これといって決まった娯楽がない娘にとって、大きなスクリーンとクリアな音響で映画を楽しむことは貴重な機会です。もちろん、引率者である私にとっても楽しい機会であります。
娘が楽しめそうな平和な内容の作品を選んで劇場に行きます。ミュージカルやファンタジックなストーリーが無難です。暴力シーンのあるアクションものは嫌がりますし、ホラー映画なんてもってのほか。今まで見せたことはありませんが、きっとショッキングなシーンでパニックになってしまうと思います。
金曜日の夜のレイトショウは週末の始まりであるにもかかわらず割と空いていて、館内の雰囲気も落ち着いており、私たちのお気に入りの時間帯です。
チケットを購入し、カウンターでポップコーンやドリンクを買い求め、暗くなる前に入場して客席に着きます。
もう娘はニッコニコ。3人でシェアするつもりで買ったポップコーンを抱え込み、笑いながら口に運んでいます。天真爛漫に楽しそうな娘と一緒にいるとこちらも楽しくなり、「食べるか笑うかどっちかにしなさい」などと言いながらも、気が付くと娘からポップコーンを横取りして笑いながら食べていたりします。
場内が暗くなり、映画が始まり、娘もスクリーンに注目します。
ストーリーが進行するにしたがって音楽や効果音が盛り上がります。目まぐるしい展開に娘も夢中になっているのでしょう、スクリーンに注目していますが両手は「むすんでひらいて」を繰り返しています。
そしてクライマックス。その後の展開を目撃することがこの映画の目的ともいえる場面。平和な内容の映画でもクライマックス・シーンにはそれなりに緊張感が高まります。重低音が効果的に響いて座席が震え、観客の不安をあおります。
ここでとうとう娘の緊張感が限界に達してしまいます。我々には十分楽しめるレベルでも、自閉症の娘には耐えがたい緊迫感なのでありましょう。過度の緊張から不安が高まり、どこか安心できるところに逃げ込みたくなってしまう。
「あたし、おしっこ…」(実際は”トイレ”を意味する手話)
んもー! またかよー! いいところなのにー!
今いいところなんだからちょっと我慢しなさい、と言いたいのを我慢して、トイレに同行する私です。
トイレで一息入れると安心できるのでしょう、その後は再びニッコニコの笑顔で客席に戻ります。その時には私が一番見たかったシーンは終わっていて、スクリーン上はお話のまとめの大団円。
わざわざ劇場に足を運んで観た映画なのに、結末については非常に曖昧な印象しか持ち合わせていないことが多い、最近の私の映画鑑賞であります。