言うまでもないことですが、赤道は北半球と南半球の境になるところです。
赤道直下の国・ケニヤでは数多くの道路が赤道と交差しております。その交差点にはたいていその旨を表す看板が出ており、記念撮影スポットになっております。

エンブから北上してメルーに向かう途中の道路脇にある赤道看板とノーブラの私。
ケニヤ山を挟んでエンブとはほぼ反対側に位置するナニュキという町付近にある赤道の看板の脇には「赤道博士(ドクター・エクウィーター)」を自称するオジサンがいて、観光客相手に小さなショウを見せてくれます。水中にできる渦の方向が北半球と南半球では違うことを実演して見せてくれるんです。
まず、赤道の看板から数十歩移動した南半球側で、底に小さな穴を開けたボウルに水を張ります。穴から水が抜けるために渦ができ、水面に浮かせたマッチ棒が時計回りに回転します。
「クロックワイズに回ってるよね。じゃ、ちょっと移動しよう」
渦の方向を観客に確認した後、赤道を越えて北上すること数十歩。先ほどと同じボウルにペットボトルの水を注ぎ、注目していると…。
うわー、逆回りだ!
本当に渦の方向が変わるんです。マッチ棒が反時計回りにくるくると回転する。あたりまえなのでしょうけれど、あからさま過ぎてちょっと感動してしまうほど。
地球上の円周4万キロの赤道が24時間で一周しますので、単純に計算して、
40000÷24=1666.66666…
我々の惑星は、実に時速約1667キロという途方もない速度で回転しており(赤道上)、その自転で発生する遠心力やコリオリの力などが複雑に関係して、南北の両半球で発生する渦が逆向きになるように作用しているのです。
そして、この渦の逆回転は、我々の生活のいろんなところに影響しているようです。
地球の自転による渦の回転方向が家電製品にもたらす影響は、もともとはオーディオ・マニアが唱え出したそうです。
北半球で作られたレコード・プレイヤーを南半球で使用して音楽を再生すると、回転方向の違いから速度が変化し、演奏が違って聞こえてしまう。つまり、時計回りに回転するターンテーブルに、同じく時計回りの南半球の渦の力が加わり、加速されてしまうんだそうです。
一時は南半球用を別に生産していたそうですが、生産効率を改善するためにストロボスコープが考案され、回転数の微調整が可能になったんだそうです。
また、回転式洗濯機は洗濯槽の底にある回転翼が回ることで渦を作り出しますが、北半球で製造された洗濯機を南半球で使うと効率よく渦ができず、洗濯効率が低下します。
洗濯・すすぎ行程では回転の向きが一定時間ごとに変わるためにさほど気になりませんが、一方向にしか回らない脱水過程には顕著に影響します。脱水槽の回転方向は反時計回りになるように設計されているそうですが、それだと南半球の自然の渦と逆方向なので、遠心力が効率よく働かないんです。脱水終了後の衣類を取り出してみると、水分がかなり残ったままで、手で絞ってもまだ水が滴る感じ。乾季である場合はすぐに乾くのであまり大きな問題にはならないのですが、雨季にはとても不便です。
そのため、ケニヤの南半球では洗濯機の改造が一般的です。脱水用のプーリーの径を小さいものにして回転速度を高め、更にVベルトを交差させて掛けて逆回転させるんです。大きめのスーパーマーケットにはメーカー別にさまざまな大きさのプーリーとVベルトがセットで売られており、ユーザーが必要に応じて別途購入するようになっています。
南半球での洗濯機の普及が一般的になるにしたがって、最近では最初から脱水槽が逆回転する新製品が売られるようになってきました。既存のものと明確に区別するため、南半球用新商品にはエコマークに似た「逆マーク」が貼られています。

これがギャクマーク。アルファベットの”G”を模したデザインです。
両半球で発生する渦の方向に関するトピックでは「北半球で生まれたヒトと南半球で生まれたヒトはアタマのつむじの向きが異なる」というのがあります。
真偽を確認すべく、ケニヤで実際に調べてみましたが、これは真っ赤な嘘でありました(赤道だけに)。