日本では明るく元気な女性をヒマワリに例えることがありますが、同じような女性を英語圏では「キンポウゲのようなヒト」と呼ぶそうです。キンポウゲは英語ではバターカップ(Buttercup)。9月に飼い始めた犬を、そう命名しました。
命名してはみたものの、バターカップはなんとなく呼びづらく、結局「バタコさん」とか「バーちゃん」などと短縮して呼んだりもしています。生後2ヵ月半で「婆ちゃん」と呼ばれるのも、ちょっとかわいそうですが、本人が全然気にしていないので、ま、いっか。
バタコさん、ウチに来た頃はまだ生後2週間でありました。幼すぎて体温調節がうまくできなかったようです。晩夏の暑さに呼応して体温も上昇するのか、苦しげにピーピー鳴く夜には、ペットボトルに入れた水を冷凍庫で凍らせたものを寝床に入れてやりました。私からすれば、長時間は持っていられないほど冷たいものですが、バタコはそれにぴったり寄り添ってスヤスヤ眠るんです。冬の雪の中でも丸まってそのまま眠ってしまう動物ですから驚くにはあたらないのかもしれませんが、でもやっぱりすごい。逆に、次回私が熱帯に赴くことになったら、果たしてこやつは同行できるのか、ちょっと心配。
夜鳴きの原因は残暑だけではなかったようです。まだ赤ん坊の時に親犬から離してしまったので、当初はかなり寂しかったのではないかと思います。体温上昇時とは若干ニュアンスの違う悲しげな鳴き声を出す時がありました。
そんな時、効果あるかも、という家内のアイディアで寝床に入れてやったのは「ぬいぐるみ」。セイウチを模した大き目のぬいぐるみがあったので、寝床に置いてやりますと、大成功。抱きついておとなしく眠るんです。なんか健気でかわいい。ペットボトルとセイウチで寝床は狭くなりましたが、バタコさんの幸福度は増したようでした。
体格はぐんぐん巨大化。餌食って寝て起きると、寝る前に比べてちょっと大きくなっており、まるで芽生えたばかりの植物のように旺盛に成長しています。当初はわずか数百グラムだった体重は、現在は10キロ弱。ふわふわで柔らかかった体毛も太く硬くなり始めました。
そんな彼女が最近熱中しているのは、家族の転失気(テンシキ)吸引です。転失気とは、世間一般で言うところの「屁」でございます。
自宅でくつろいでいる私が「Pu!」などと放屁した途端、その音を聞きつけたバタコが「おっ♪」という表情を見せ、まっしぐらに飛んできて私の尻に鼻を押し付け、肛門の臭いをクンカクンカと嗅ぐんです。おふざけなどまったく感じさせない態度で、真摯に真面目に切実に一心不乱に。
犬の肛門周辺には肛門嚢(こうもんのう)という、匂いを出す部分があり、この匂いは個体特有らしく、犬同士の個体識別は主にここの匂いによるものである、と、以前飼っていた犬が言ってました。ですから我が家のバタコも、一緒に暮らす家族の識別データをインプットしている最中なのでしょう。
肛門を刺激されると、ものすごくくすぐったいのですが、バタコのあまりの切実さに拒んではいけないような気がして身悶えしながらも悪臭を提供する私です。当然、娘の放屁にも速攻の反応を見せ、ぶっ飛んで行ってクンカクンカ。娘もやはり当惑気味で、しかし彼女もまたNoとは言えない自閉症児。あからさまには拒めず、何かを訴えるような視線を私に向けてきます。
ごめんな。でも、ちょっと我慢してやって。きっとすぐ飽きるだろうから。