日本では桜が開花する頃だと思います。
桜の色ってきれいなピンクですよね。
ずいぶん前の話ですが、私の妻は自動車の修理工場で働いていた経歴があります。車体整備士の資格を持ってるんです、あのヒト。
当時の花見時、ふと思いついて桜の花を摘み取ってすりつぶし、それを塗料用のフィルターで漉してアクリルと硬化剤を混ぜ、さらにシンナーで薄めて自分の愛車の白い車体に吹き付けてみたことがあるそうです。
ごく僅かな量の塗料しかできなかったため、ボンネットの一部をほのかな桜色に染めただけでしたが、そのぶん元の車体色の白が映え、華やかではあるけれども上品な印象になったとか。
とても気に入っていたそうですが、秋口には元通りの白いクルマに戻ってしまっていたそうです。
というのもピンクは非常に飛びやすい色で、日光にさらされると短時間で色褪せてしまうんです。色褪せを防いで長持ちさせるためには塗料の調合を派手めにせざるを得ず、そのため巷にあふれるピンク色の多くはどぎつくケバケバしく見えてしまうのだと思います。
上品な色に染まるけれども、長持ちしない。そんな「はかなげ」かつ「おとめチック」な特徴も気に入り、その後の数年間、妻のクルマは春には桜色に染まり、夏が終わる頃には白に戻る、というサイクルを繰り返したそうです。
それが友人たちのあいだで評判になり、「あたしのもやって」という注文がいくつも舞い込むようになりました。そうなると桜の花をいかに調達するかが問題になってきます。
で、私が花泥棒となりました。
何しろ万人が楽しむ花見時の桜を摘むんですから、おおっぴらにはできない行為です。人目を忍ぶ深夜の作業となりました。額にヘッドライトを装着し、手には軍手をはめ、竹籠を背負って桜の木に登ります。桜を摘んではせっせと籠に投げ入れてゆく。
最も鮮やかな発色をするので、開花直前のつぼみを狙って摘みました。開花が始まってしまうと花見客が夜遅くまで陣取って騒ぐので仕事にならず、そういう意味ではつぼみを摘む方が都合が良かった。
また、一箇所で集中して摘んでしまうとその場所の開花量が激減して問題化してしまいますから、バレないように花見の名所をいくつか回ったりするなど、それなりに苦労したものです。
花泥棒は罪にならない、なんていいますが、これは「美しい花を欲しがる気持ちは自然なことなので責めるのは難しい」ということでありましょう。
私の場合は完全に商目的でありましたから、責められても文句は言えません。
あんなことすべきじゃなかった、と、この季節になるたび、今更ながらに猛省しております。
なーんちゃって。
今日の話は全部ウソ。