ラオスの食卓には多くの薬味が並びます。

本来、薬味というものは殺菌効果や整腸作用を期待したものであったものだろうと想像しますが、今ではそれが持つ味そのものを楽しむことが目的になっているようです。

 

人間の味覚には甘味、酸味、塩味、辛味、苦味、旨味の6種類があるそうで、そのうちの苦味は身体に毒となるものに対する警戒の意味があり、一般的には敬遠される味です。味覚としてはかなり違和感があるため、あまり楽しむ対象にはならないように思えるのですが、ラオスの人々は積極的に苦味を受け入れています。

「これ、苦くておいしいんだよー。食べてごらんよー」

なんて言われると、素直に食べて良いものか否か、戸惑ってしまう。

 

薬味として出されるものの中で、唐辛子やナス科植物の若い実などであれば特に躊躇なく楽しめるのですが、匂いが強烈なことで有名なドクダミやニームの葉などは口に含む時に小さな覚悟が必要です。両者とも有機農業では害虫の忌避剤として使われるほどで、かなり苦いんです。そのぶん含まれる薬用成分が多そうで頼りがいがありますが。

また、動物の内臓も苦い薬味になります。

食卓の小皿にどす黒い液体があるのでナニコレ?と尋ねてみたら「牛の胆汁」ですって。消化酵素を補助する作用があるそうです。舐めてみるとかなり複雑なお味。他の調味料も加えて味を調える努力はしているようですが、正直言って私には「おいしい」とは到底思えません。

植物性の苦味は鋭いけれども爽やかなものが多くて食欲増進が実感できることもありますが、動物性の苦味はまろやかではあるけれどもコッテリと強く、舌の根元にしつこく絡みついて尾を引くような感覚があります。

 

いろいろな苦味の素を経験しましたが、やはり苦味は基本的に「不味(まず)さ」につながるものなので、口中滞在時間は短め。最近では多少はおいしく感じられるようになったものの、やはりじっくり味わうことはせず、すぐに飲み込んじゃう。

やっぱり、我々にとって苦くておいしいものはブラック・コーヒーとか秋刀魚のワタくらいで充分なのかも知れませんね。