太宰治によると、食通とは大食いのことだそうです。
もしそうなら私も立派な食通であります。
世に食通は多いでしょうが、ラーメンどんぶりに飯を盛って食事をするほどの食通はそう多くはおりますまい。



これは陶芸を趣味とする私の父が以前作ってくれたラーメンどんぶりです。
大盛りラーメンを余裕で受け入れるその大きさ。
熱々のラーメンを入れても手が熱くならない、肉厚の本体。
そして、いかにも味噌ラーメンのスープが似合いそうな色合い。25円のトムヤムクン・ラーメンもこれに盛れば何故か高級ラーメンに見えてしまうという、魔法のラーメンどんぶりであります(でも食べてみればやっぱり25円のラーメンの味しかしませんけど)。
このスタイルを何焼と称するのか、その方面に詳しくないので知りませんが、ラーメンどんぶりとしてはかなり高品質であり、気に入っています。
もちろんラーメンを食す際にも愛用しておりますが、最近はゴハン茶碗としても使用しているとは、制作者の父もよもや思いますまい。

このどんぶりにメシを盛ると二合とちょっと入ります。より正確に記しますと、2カップ(400cc)の白米を炊いたゴハンです。



近所の中華料理屋で買ってきたトージャオニョウロウを「コンニャロウ!」とブッカケます。トージャオニョウロウは青椒肉糸(チンジャオロウスー)に似た料理で、ピーマン(青椒)の代わりに唐辛子が入っています。かなりインパクトのある味がゴハンに良く合うので、最近の私のお気に入り。



いただきます! と合掌したあとは、スプーンですくってひたすらワシワシと食い込んでゆく。
トージャオニョウロウには唐辛子だけでなく、細かく刻まれたニンニクやネギといった薬味も程よく混じっており、飽きの来ない味です。
粘り気の少ないインディカ米と肉と薬味をスプーンでサクサクと混ぜて山盛りにすくい、「あーん」と大きく開けた口に放り込んで「ウムウム」と咀嚼します。
口中で混ざり合う炊き立てのメシと出来立てのトージャオニョウロウ。
いろんな材料が舌に触れ、いろんな味を残してはどこか口中の別の場所に去ってゆきます。

パラパラとしたインディカ米は未舗装の林道をオートバイで走る時に似た食感があります。
メシに混ざる他の食材は路面に浮く石ころのよう。咀嚼するたびに舌の上をころころと転がります。
思いがけず奥歯で噛みしめてしまった唐辛子の辛さは、路面に散在する大きめのデコボコ。高速度で走るオートバイの前輪があたったショックが、ガツンとハンドルに伝わるように辛味が口中で爆発します。
そのショックは強烈迅速で、味覚が「辛い」と感知するより早く、額に汗が浮きます。そんな我が身の反応の速さが不思議に思えます。

15分で完食。
唐辛子のせいで汗びっしょり。辛さで舌の感覚が無い。
二合のメシを消滅させたのですから満腹感はもちろんありますが、それよりも充実した気分があります。なんだか思い切りスポーツを楽しんだときの爽快感に似ています。

こんな食生活の私を、妻は人間扱いしてくれません。
ブタだって。

んもー、食通なのにー。