楽器店は楽しいところです。
新しい楽器特有の木材の良い匂いが漂い、新製品に関する情報も豊富です。買い物の予定がなくて、単にブラブラしているだけでも充分楽しめる。
珍しい高価なギターを弾かせてもらったりするのも楽しい。
しかし買う気も無いのに高級ギターを試奏させてもらうのは、やっぱり気が引けるものです。

アメリカのカリフォルニア州コンコード。
この町のギター・センターに行った時、ちょっとビックリしました。ギターに対する考え方というか、商慣習があきらかに日本と違うんです。
広い店内の湿度が保たれたアコースティック・ギターのコーナー。高価なアメリカ製のギターがたくさん展示されています。でも周囲には店員が一人もいなくて、日本に良くあるような「試奏なさる時は店員にお声をおかけください」なんていう張り紙も無い。
つまり好みのギターを好きなだけ試奏してもいいんです。
開店と同時に店内に入って、展示してあるマーティンを手にしてソロを弾き始めるおじさんがいました。通りかかった店員や他の客との会話から察するに、どうも毎日来てるようです。かなりのマニアです。かなりの暇人とも言えますが。
ラックに納めてあるギターはどれも控えめながらも弾きキズが多数ついていて、日本の楽器店だったらこれはもう新品としては売れない状態です。

日本の楽器店は楽器を売っていますが、アメリカの楽器店はあくまで音楽の道具を売っているのだ、と感じました。もちろん楽器をキレイなまま店頭に置いておければそれに越したことはないけれど、出音を確認するために試奏してキズがつくのはしょうがない、と割り切っているのでしょう。

私も壁にかかっているギブソンのSJ-200を見つけ、弾かせてもらうことにしました。
やはり弾き傷がついていて、でも値札に明記された値段は$3,300でした。当時のレートでは30万円以上。たぶん新品の定価です。
手に取るとすでにチューニングが済んでおり、すぐに弾ける状態になっています。
Eのロー・コードを、じゃん! と鳴らしてみました。Eのコードは六弦の開放(一番低い音)が良く響くので、いつも私が最初に試す音出しです。

おお! いい音!



各弦の音色が独立していて、どの音がどの弦から出ているのか良くわかる。音の独立感が歯切れの良さにつながり、ワイルドな印象がある。にもかかわらず音が散らからず、まとまり良く響く。
ほほー、これがギブソンの音かー。さすがに良いギターだー。
ラーメンにたとえれば、もっちりと太い縮れ麺です。麺が太くて噛み応えがあり、口中でも一本一本の存在感がある。その麺が全体的に縮れているためにスープがうまく絡んで味が良く馴染む。

お気に入りのフレーズをいくつか弾いて楽しんだ後、他のギターも弾かせてもらおうと思い、SJをラックに返しました。その途端、今までマーティンを弾いていた常連のおじさんが手を伸ばし、私が弾いていたSJを抱えてズンチャカとストラミング。
他人が弾いているのを聴いても良い音。これは30万円するのもうなずける。
聴いているうちにもう一度弾いてみたくなりました。でも常連おじさんはギブソンを手放しません。いつまでも気持ち良さそうに弾いている。

んもー、いい加減に返してくれよー、俺のギブソン。
・・・いや、俺のじゃないや・・・。