私が初めて金縛りを体験した話、後編です。

誰かが私の両足首を握り、勢いをつけてグイ!と引っ張っているんです。間隔を置いて何度も。
私の両足は確かに掛け布団の下にあるはずで、実際そのようにも感じているのですが、なぜか別の足の感覚もあって、そちらの足首は何者かによって強く握られ、上方およそ30度の角度で強く引っ張られている。
その力の掛け方は、まさしく重く動きにくいものをヒトが渾身の力で動かそうとする時の間隔そのもので、ちょうど「せーの!」という合いの手が入るくらいの感覚でした。
グイ!
と引かれるたびに、私の身体には強い衝撃が走ります。
初めての経験で、何をどうして良いのかわからず、絶望感と焦燥感で脳内ぐちゃぐちゃ。
その間にもグイグイ攻撃は続き、そのたびにあろうことか敷き布団と尻がズズ!と擦れるように感じ始めました。精神が身体から離れようとしているのです。

あ、抜かれる・・・。なんだかわかんないけど魂を抜かれちゃう・・・。

幼児の頃に楽しんだ幽体離脱ごっことは格段に違う状況です。
このままじゃホントにヤバイ、と感じた私は胸の上で交差されたままの腕が原因であると決め付けます。胸の上に手を置いて眠ると悪夢に苦しむ、と聞いたことがありましたし、とにかくこのツタンカーメン状態になっている腕をほどこう。腕が自由になれば何とかなるはず。しかし、いくら力を込めても相変わらず金縛りで動けない。
足首をことさら強く引かれた拍子に尻だけでなく背中にも摩擦感が生じ始め、
うわー、ヤバイでしょー!
このままじゃ、ホントにどっかに連れて行かれちゃうでしょーっ!
アセリから一気に集中力が高まり、気合一発!

「うおおおりゃああああっ!!」

雄叫びとともに腕をほどきました。
自分としては御近所の安眠を妨げるほどの大音声のつもりでしたが、実際の発声は意外にも、
「ほえぇぇ・・・」
という非常に情けないものでした。
でもおかげで金縛りは解け、嘘のように楽になった私は恐怖心から逃れるように布団の上に跳び起きました。両足首を掴まれていた感覚も無くなり、部屋の様子も眠る直前と何も変わっていません。

助かった・・・。
ああ、ホントに良かった・・・。

あのまま土壇場で気合を入れそこなっていたら、何者かによって強引な幽体離脱を経験させられることになっていたと思います。その結果どういうことになっていたのか・・・。何もわかりませんが、あまり良い状態ではなかっただろうな、と漠然と思います。

荒い呼吸を続ける私が最初にしたことは、当時も同じ部屋で布団を並べて休んでいた弟を叩き起こすことでした。

「てめーっ!となりで俺が死にそうになってるのにグースカピースカ寝てやがってー!」

深夜の八つ当たり。