会社に着くまでの1時間30分は憂鬱なものだった。
仕事の人に迷惑かけたくないと、早く治したいと思っていたことは本心だが、
いざ仕事に復帰となると不安しかない。
冷たい態度をされるのでは?仮病だと思われているのでは?
嫌な考えしか浮かばない。
こういう時に限って時間は早く過ぎる。
会社にもう着いてしまった…あぁ怖い。
顔を上げられないまま事務所玄関に入る。
先輩が私を見つけて声をかける
「え?もう治ったの?無理するなよ!」
先輩声デカいっす。ヤバいっす。
私はすぐ他の人にも見つかった。しかし、想像していた対応なんて1ミリもされなかった。むしろ優しい言葉しかなかった。
朝はみんな仕事の準備で忙しい中、声を掛けてくれるだけ優しい。
事務所に入り社長に挨拶をした
「この度は、ご迷惑………すみませんでした」
社長「急なんだけど、書いてもらう書類がたくさんあって〜」
労災の紙、事故報告書など、めんどくさい用紙を受け取った。
私はすぐに仕事の準備を始める。
配送業なので荷物の整理がある。
正直、まだ会社には来るべきではなかった。
商品を抱える度に痛みが走る。
でも、来たからには帰れない。やるしかない。
チームの朝礼が始まった。朝礼は上司の業務報告と交代制の1分間スピーチがある。
上司「今日のスピーチは、まぁ休んでいた…」
上司が私の方を見る。
私「私ですね!皆さん色々気になっていることでしょうから!」
明るく振舞ってみせた。それが会社のキャラクターだった。
スピーチの内容は、休んで迷惑かけ申し訳ないと、遅れた分は今から全力で取り返すと、すみませんでした、、と。
最後は泣きそうになって言葉が詰まってしまった。
謝罪スピーチが終わり
上司「今日も頑張りましょう!」と括って朝礼は終わった。
チームが解散した後、上司以外のメンバーが声を掛けてくれた。
「まだ治ってないでしょ、無理しちゃダメよ」「何かあったら連絡しろよ」「元気だせよ!」
ありがたい。でもそんな優しい言葉は逆に泣いてしまう。
泣くのを我慢している顔は見せられなかったが、頷いて
「頑張ります。」しか言えなかった。
この時、2月の下旬。
私が退職するのは3月中旬。
退職のことはまだ誰にも言っていなかった。
この頃から、上司の冷たい態度が分かるようになる。
怪我で3週間休んだから。だと思っていた。
私の穴は上司が埋めてくれた。他の仕事もある中、カバーをするのは大変だったと思う。
上司は新人の私を可愛がってくれた。
誰よりも期待してくれていた。素直に嬉しかった。でも、私に仕事の話をしなくなったし、何も言わなくなった。今までそんな日、1日もなかった。
溝ができたことは辛かった。
もうすぐ3月。
休んでいたとはいえ、そろそろ退職を伝えるべきでは!?
私「社長、退職の話はいつしてもいいですか?」
社長「え?もうしてもいいけど…」
私「え?してよかったのですか…分かりました。上司と話す時間頂いても?」
社長「え?もう俺から辞めること伝えたよ。上司だけ」
私「分かりました。今から他の人に伝えてきます…」
これはまずい。大問題であった。
上司には私から直接退職の旨を伝えることが私にできる唯一の誠意の見せ方だと考えていた。
それなのに、社長がもう伝えていると…
どこまで?同棲も?海外も?どこまで言ってる??
怪我をしたのは私の不注意なので私が悪い。
でも、休職中に2日に1回は連絡するぐらいなら言ってよ、社長ーー。
そんなこんなで
気がつけば退職日になっていた。