歴史ってのは大抵、破壊、侵略、殺戮と過つ出来事の中に入り浸っている。

沖縄戦もその中の一つだ。

小学校の歴史の授業で初めて沖縄戦の大惨事を聞いた時、俺は教科書で顔を隠し声を殺して泣いた。

人が人を撃ち殺し、焼き殺し、子供までもが犠牲になり、恐くて、恐くて泣いた。

「アヤミ…」

俺は彼女の隣に座り、頭を撫でてやった。

「異星である地球の歴史に涙するなんて…お前は優しいんだな。」

「ううん…違うの。」

「?」

俺は撫でる手をとめた。

「秘密事項なんだけどね…アキトさんには話すわ。」

彼女はグスンと鼻をすすった。






暗闇の山中にBGMとして流れる波の音。
満天な星空が綺麗だ。
…皮肉なほど綺麗だ。

アヤミは

“じきに宇宙規模の大戦争が起きる”

と言った。

何故?

“エルスの影響”

はぁ?

「地球人に影響されて戦争を始めるってか?馬鹿じゃないのか?」

「あたしもそう思うわ…。みんな、戦争をすれば精鋭なエルスの民のごとく、限りない知恵が身に付くと思ってるのよ…。」

馬鹿だ。
実に馬鹿だ。
そんな脳足りんなヤツらがよくここまでやってこれたもんだ。

「でもおかしくないか?」

精子データの話はどこに行った?

「流出した精子データと俺のDNAを採集して自分らの遺伝子に組み込むことが最終目的なんじゃないのか?」

「勿論そうよ。でもそれだけじゃエルスに近付けない…。」

「はぁ…」

俺は深々と憤りの混じるため息をついた。

「…で遺伝子を組み替えた上に、もはや地球の文化となってる戦争の真似事をして、憧れのエルス様に近付こうってか?」

「真似事ではないわ。星と星があげる全面戦争よ…。」

「なら“じきに戦争が起きる”って言葉は間違っているな。」

「え?」

え?じゃねぇよ。
それじゃあまるで俺らが敗北宣言してるようなもんじゃないか。

「俺が奴らに捕まんなきゃ戦争は始まんないんだろ?」

絶対逃げきってやるさ。