穴を通して見えた景色は、ヤシの木、白い砂浜、そして珊瑚に囲まれるライトブルーな海。

恐らく、あくまで推測だが…

「沖縄か?」

「そうよ。」

なんてこったい。
飛行機で片道約二時間のフライトを一瞬で、しかもタダで来ちまったってのかい?
この“瞬間移動部屋”が普及してしまったら航空会社は大打撃を喰らうだろうな。

まぁ絶対と言っていいほどあり得ないが。

ななみの背丈約150cmの高さに空いた穴を足から潜り、フカフカした砂浜に飛び降りた。

…見切り発車だった。
突然、空中に空いた穴に物珍しそうに群がる地元民か観光客か知らないが、俺がその穴から出てくる瞬間をバッチリ目撃されてしまったのだ。

およそ10個の視線が痛いぜ。
まるで珍獣を見るかのようだ。

「いやぁ…コレは~そのぉ~…ハハッ気にしないで下さい。」

飛びきりの愛想笑いで応えるが、…時既に遅し、だ。

「はやく行くわよ。」

トンッと軽やかに沖縄の地に足を踏み入れたアヤミは、資料質へと続く出入り口に手をかざすと、なんと…見る見るうちに塞がっていくではないか。

その光景を目にした村人Aがこう言った。

「う…宇宙人だ…!」

ハイ正解。
君に口止めという景品を贈呈したいが…口に戸は立てられないんだよな。

そそくさとその場から立ち去るアヤミの後ろ姿を見て、そう思った。