明日オーディションライブで朝早いってのに、参っちゃったよ。

DVDに録画したビートルズ特集に魅入っちゃって寝れやしないよ。

上田一家は専らビートルズびいきでね、兄に至ってはデッカいレコード盤まで持ってるほどなんだ。

ビートルズの他にも有名どころは幼かった僕の耳の中に詰め込まれ、頭の中に叩き込まれたんだ。

…今思うとドローウィンの音楽は僕の家族と大きく関わっているかもしれないな。

堀畑クン一家は音楽にあまり興味がなくて、僕とバンドを組むまで堀畑クンはビートルズもサイモン&ガーファンクルも知らなかったんだ。

あん時は驚いたよ。
急いでCDを貸したよ。

そして堀畑クンの感想は

「外人すげぇな」

当たり前だバカチンが。

そこからだよ。
堀畑クンはサビがはえるようなAメロBメロを作り始めたんだ。

歌詞は相変わらずトンチンカンな暗号みたいだけど、それが彼らしさなんだ。
絶対誰にも真似できないし、よくあるありきたりな歌詞よりだいぶ素敵だ。

そんな堀畑クンの歌詞を馬鹿にするやつにはこう問い詰めたい。

“りんごを違う言い方で呼んでみろ”

どうせ
“禁断の果実”
とかベタな答えが返ってくるに違いない。

堀畑クンはなぁ

“りんごを違う言い方で呼んでみろ”

と問うとなぁ

“お赤飯”

とか

“カブトムシの交尾”

とか

“振替休日”

とか

普通そんなこと思い付かないだろう?
って答えをバシバシ投げつけるんだ。

堀畑クンを馬鹿にしていいのは僕だけなんだ。