“あなたを~見る度強~く~な~れ~るぅぅ~♪”

「う…」

俺のケータイがけたたましく鳴り響き、浅い夢の世界から深い現実世界へと呼び戻された。
いや、あれは夢じゃない…1時間前に行われたやり取りを夢で見ただけだ。

「電話よ。」

パイプイスに座るアヤミは本を読みつつ着信を知らせる。

「わかってるよ…。」

でも電話じゃなくて正しくはメールだけどな。
この曲はメール着信用に設定してあるのさ。



メール着信
“ななみ”



サブディスプレイに映し出された名前を見て俺は血の気が引いた。


___________
今どこ?
アキトくん家についたんだけど…
___________


やっべぇ…
確か今夜逢う約束してたっけ…。

「彼女から?」

相変わらずアヤミは本から目をそらさず、無関心そうに聞いた。

俺は力無く返事をした。

「今日…逢う約束してたんだよ…」

「そう。それは残念ね。」

「…。」

マジかよ…。

「言ったでしょ?危険回避のため、あなたを外へ出さないって。」

……マジかよ~。

俺はガックリとうなだれ、ななみになんて断りの電話を入れようか考えていると

「ていうかあなたホンっト最低ね!!!」

アヤミはイスから立ち上がり、ベッドへズイズイと押し掛けてきた。

「な…なんでだよ?」

「あなた、彼女がいるのにデリヘルなんか呼んだの!?」

「ち…ちがう!」

「何が違うの!?」

アヤミは鬼の形相で俺を睨む。
蛇に睨まれたカエルの気持ちが今初めてわかった。