「こちらです。」

と案内された場所は、お世辞にも広いと言えない薄暗い部屋だった。
ルームプレートに資料室と書かれている。

「アキトさん、きっと驚くわよ。」

悪戯に笑う彼女は俺にそう宣言した。

すでに俺はあなたの金縛り術で度肝を抜かされてますけどね。
…コリン星人は全員、あの術使えるのかな?

そんなことを考えていると

「では、いきます。」

武田は合図をした後、部屋の入り口付近にある電気のスイッチをパチンと入れた。

「!?」

彼女の予想通り、俺はかなり仰天した。

確か俺がいた部屋は四畳半ほどの狭い部屋だったはずなのに…
なんだここは…?

俺の目の前に広がる光景は、床壁が真っ白に塗り尽くされた、先ほどの資料室の約50倍は広い近未来的な機械がたくさん設置された研究室であった。

パソコンに向かう白衣を着た研究員は目測で100人近くはいる。

「嬢たちが採集したエルスの精子はデータ化され、ここに転送されてきます。アキト様が疑問に思われている精子データとはこのことです。」

武田は説明をしながらゆっくりとした足並みで歩き始めた。

「嬢の仕事は精子を採集しそれをデータ化することです。」

説明を続ける武田に研究員は目もくれず、ひたすら作業をしている。

「精子をどうデータ化するかは企業秘密ですが、資源とエネルギーさえあればエルスにも容易くできますよ。」

あなた方は頭がいいですからね。
と武田はニコリと笑った。
捉え方によっては馬鹿にした笑みに見えるぞ。

「二つ目の質問いいっスか?」

俺は挙手して言う。

「なんで俺、命狙われてるんスか?」

アヤミちゃんは“俺の精子が特殊だから”と言った。

精子が特殊だと何故、俺んちに爆弾が仕掛けられなきゃならんのだ。
訳が分からん。

武田は質問に答えず
約10メートル先にある大きな扉を指差し、こう言った。

「あなたが抱く全ての謎の答えは、あの扉の向こうにあります。」