「…。」

中は至って普通だ。
ホント、普通のオフィスって感じ。

「イメージとちょっと違うな…」

「デリバリーだもん。どこもこんな感じよ。」

そうなんだ…。

1つ雑学を得たなと店内を見渡していると

「アキト様、お待ちしてました。」

後ろから聞き覚えのある男性の声がした。

「私、武田と申します。」

ビジネススーツをバッチリと着こなした男が俺に挨拶をする。

「あ、初めまして。僕アキトと申し」

「この度は大変申し訳ございませんでした。」

自己紹介の途中、武田さんは俺に深々と頭を下げた。

あっ
この人の声、電話の時に聞いたんだ。

どうりで聞き覚えがあるわけだと謎を解明したところで、俺は

「別にいいですよ。」

頭を上げてくださいと懇願した。

「…いえ、あなたの精子データを流出させてしまったのは間違いなく我々。その責任は必ずとります。」

一向に頭を上げる気配のない武田さんは謝罪し続ける。

う~ん
ここまで謝られるとさすがに気が引けるなぁ。
ていうか俺全然怒ってないんだけど。

「…あの、ちょっと色々と質問してもいいですか?」

謝罪するなら一応謝罪理由を知っておきたいからな。

俺は現時点で疑問に思っていることを全てぶちまけようかと思う。