◆第82回センバツ高校野球第9日 ▽準々決勝 帝京0―5興南(31日・甲子園球場) 琉球のトルネードが吹き荒れた。“沖縄のドクターK”こと興南の大会NO1左腕・島袋洋奨(ようすけ・3年)が帝京を5安打完封斬り。強豪ぞろいの“死のブロック”を脱出し、初の4強入りを果たした。日大三(東京)はエースの山崎福也(さちや・3年)が、敦賀気比(福井)を3安打完封の好投。準優勝した72年以来、38年ぶりに準決勝に駒を進めた。広陵(広島)は7年ぶり、大垣日大(岐阜)は3年ぶりにベスト4へと進出した。
スコアボードを振り返れば、0の山が9個積み上がっていた。「全国ベスト4なんて考えてもなかった」と、3試合連続完投勝利で“死のブロック”を乗り越えた島袋。甘いマスクの裏に潜む強心臓で、2試合連続2ケタ安打で勝ち進んできた帝京打線を、散発5安打に封じ込めた。
5回、3四死球で招いた2死満塁。リードは1点のみだ。打席に迎えたのは1回戦(対神戸国際大付)で本塁打を放っている鈴木昇太。「マウンドに上がったら帝京をゼロに抑えることしか頭になかった」とエース。全6球、直球勝負を挑んだ。カウント2―2から、打ちごろの134キロは外角高め。それでも中飛に打ち取れた。鈴木が「甘いボールが来て力んだ」と振り返ったように、島袋が、縦スライダーの残像を打者の脳裏に刻み込んでいたからだ。
1、2回戦で計25三振の山を築いたこの伝家の宝刀は、甲子園での苦い経験から生まれた。2年生エースとして昨年、春夏出場を果たしたが、ともに1回戦敗退。「ほとんど真っすぐだけで押していたから打たれてしまった」と島袋が決意したのは、新たな決め球のマスターだった。「打者を立たせて、ひたすら投げ続けた」。スライダーを深く握ってフォークのように抜けば、面白いように落ちまくることに気づいた。そのあまりの落差に捕手の山川大輔が捕り切れず、昨秋、1試合に4度の振り逃げを許すほどの“魔球”だった。
173センチと小柄なことがマイナス材料と見られていたが、快投を続けることでにわかにプロの目も集まりだした。2月には「プロ入り? 甲子園がアピールの場と言えばそう。いい投球を夏にも維持できれば考えたい」と話している。同じ左腕で、島袋よりさらに6センチ小さなヤクルト・石川を「尊敬する」とまで心酔。「オレだってやっていけるはず」と秘めた野望を持っているに違いない。
我喜屋優監督(59)が、沖縄が日本に返還される前の68年夏に4番打者として母校を導いて以来の4強。「監督を抜くチャンス。興南のベストから、そのまま優勝を狙いたい」とトルネード左腕は言い切った。準決勝は通過点。紫紺の優勝旗をつかむまで、小さな体がマウンドで躍動し続ける。
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