たとえば、『すぐできるカンタン ホームページのつくりかた』という本があるとする。現実に似た書名の本はゴマンとあるはず。

こういう本と、同じテーマで、レベルがかなり高い本と、二冊揃える。で、二冊を目の前に置いて、文字どおり重ね合わせるように読む。この読書術の効果には、段階があるのだが、その詳細に入る前に、複数の本を並べて読む、少なくともその構えに入るチャンスはしょっちゅう起きていることにあらためて気づいた。なんのことはない、本屋にぶらりと立ち寄って、目についた本を二、三冊購入するときが、それだ。 目的買いで、ある本めがけて本屋に走る場合は、この限りにあらず。まったく異なるジャンルの本であっても、それは起きている。もちろん、普通には順番に読んでいくはずだから、重合はない。が、まとめた買ったということには、何か繋げているものがかすかにでもあったはず。そういう場合があるということだ。


西早稲田の古本屋で、店先で3冊100円の文庫を買った。


『賃労働と資本』

『天皇の影法師』

『タイムスケープ』


この場合、新刊本屋でウィンドウショッピングとは違って、「持ってけ」ワゴンのなかから3冊を辛うじて選び取るという制約がある。

それしかない。表に積まれた古本に期待すべき掘り出しものはめったにあるものではない。それでも、なんとか受容できる本を選ぶ。


で、上の3冊。目的買いではないので、全く関連づけは存在しない。だが、パラパラめくっていくうちに、ある相関が浮き上がってきたりする。これはこれで面白い。いや、実はこれ、重合読書の究極、なのである。


『すぐできるカンタン ホームページのつくりかた』と『ユニバーサルHTML/XHTML』の重合といったレベルは、これに比べれば実に実用的な初歩の初歩に過ぎないのだが、それさえきちんと方法として話されているのを聞いたことがない。切り出していくことにした。


ついでに、読みの速さは重ね合わせにおいても相当重要だ。自分でそういう「術」を意識したことはこれまでないが、あらためて思い返してみると、石膏デッサンをみっちりやらされたのも、読みの速度に貢献しているような気がする。

1分間で何文字、読み取っているかという読書スピードの平均は600文字だそうだ。話すほうは1分に200文字程度だから、読みは3倍速か。読書スピードの速い人は、1分間になんと10000文字は平気で読むという。自分では計ったことがないが、「理解」ということとからめて、検証しておきたい話ではある。


新日本速読研究会