中学・高校の教科書とこの本を、ウェブ上であれば整合性をもってハイパーリンクすることは可能だ。それだけでもかつてない数学・物理のワクワクするようなページが完成する。しかし、このことと「ある適切な構造を持つインタフェース」の構築とは別である。ただ著者が標榜する「全方位」は、適切な構造にとっても重要だ。いつでもどこでも、どこにでも飛躍できるスプリングボードであること、それを「感じる」ことがこのインタフェースの一要件だからだ。SFではないが、集中度が高まり、学習速度が速まるほど、あらゆるものがフロントに集まって見え、展望が開ける。それがますます意欲を支えるという善循環が生まれる。いわばノッてる状態の維持である。この「ある構造」は、AIの教師データになぞらえて、1)「パソコン甲子園」の普通科高校の入賞者、2)エジソンのような公教育を否定した学習者などへのインタビュー手法によって、ラフスケッチを描き出すことになるだろう。


III.「学習塾」+文部科学省のタスクフォースへ
 ウェブに連動する「教科書一千頁革命」によって構築される学習環境は、まずは家庭の一角をベースとするホーム・ベイスド・エデュケーションの一環となるのかもしれない。ウェブを学習に活かす試みは文部科学省主導の「インターネット活用教育実践コンクール」が既にある。しかし、残念ながら「教科書の革命」には至らない。学習指導要領の枠を越え出ることは困難であり、加えて「通学」を前提にしている。

大学レベルでは、国内及び米国他の大学講義をインターネットで視聴できるコンテンツ検索・活用ポータルサイトNIME-glad、大学教材情報をインターネットで無償公開するOCW(OpenCourseWare)プロジェクトなどが立ちあがってはいる。しかし、これらはまだ「教科書」としての構造を備えていない。小中高大一貫教育を可能にするような「接続インタフェース」は、まだ用意されていない。今もっとも革命に近づいているのは学習塾での「個別」をコンセプトとする学習システムかもしれない。こうした学習塾の試みと、文部科学省主導の各学校のインターネット活用の試みをよりすぐり、「接続インタフェース構築」のタスクフォースを立ち上げることは不可能ではないだろう。ウェブに連動する「教科書一千頁革命」をベースとし、「通学」を従とするオンディマンドな学習環境の構築。

この革命は、従来の教師の質の向上のあり方、質と量のバランス、何よりもアタマ数を揃えるためにするような教員養成制度のあり方に対して、発想の大転換を迫るものにもなるはずである