文部科学省所管の財団法人「日本青少年研究所」が3月1日に発表した、日本、米国、中国、韓国4カ国の高校生の生活意識に関する調査「高校生の友人関係と生活意識-日本・アメリカ・中国・韓国の4ヶ国比較-」の結果を受けて新聞各紙は、日本の高校生の勉強への意欲低下、“勉強離れ”を盛んに報じた。
他の3カ国との大きな差が出たのは、問8「あなたは(原文ママ)現在、大事にしていることは何ですか?」に対する回答。16の「大事にしている」ことの候補が列挙され、あてはまるものに○をつける複数回答方式だ。<br>
用意された16の事柄について、日本の高校生には特に大きく票を集める事柄がなく、最も多かった「友人関係がうまく行く」でも39.8%。全事柄にわたって、なだらかなラインを描いている。対して米・中・韓は、「成績がよくなること」が突出しており、それぞれ74.3%、75.8%、73.8%で、日本は33.2%だった。
最も高いパーセンテージを示したのは「希望の大学に入学する」で、韓国が78.0%と高く、中国76.4%、米国53.8%と続き、日本は29.3%だった。新聞報道は主に、これを踏まえて報じたようだ。
しかし、「友人関係がうまく行く」ことに次いで日本の高校生が選んだのは「思い切り遊んだり、好きなことをしたりする」で34.6%だが、4カ国のなかでは最も低い割合となっている。
注目されるのはむしろ問6の関心度調査で、日本の高校生でクラブ活動に「非常に関心がある」は33.2%で、4か国中最高となった。「まあ関心がある」を含めると米国が65.3%で最も多く、日本は64.7%。中国60.4%、韓国42.9%だった。また、この関心度を聞く問6では、日本の高校生で「勉強や成績」に関心を持つ割合は「非常に」「まあ」を含めて73.8%で、他の3カ国と問8のような極端な差は現れていない。さらに「将来の進路」については、関心ありと答えたのは「非常に」「まあ」を含め各国とも70%台であり、目だった差はない。
ではなぜ、「勉強離れ」が強調されたのか? だいたいこの調査の眼目はなんなのか? 「高校生の友人関係と生活意識」という表題が眼目なのだとすれば、日本の高校生は、調査側の意図に実に忠実に回答を選んでいるのではないか? そのような誘導があったのか?
念のために、問8「あなたは(原文ママ)現在、大事にしていることは何ですか?」が、英語ではどう表現されたのかを、電話で尋ねたのだが、窓口に留守番しかいなかったのか、片言の日本語でアジア人らしいお姉さんが出て来て、全く要領を得なかった(この研究所はいったいどういう素性のものなのか?)。
調査の対象となった高校生の実数は、日本が1,342人、米国1,008人、中国3,221人、韓国1,714人。男女の内訳は、日本が男子41.9%、女子58.1%、米国男子51.4%、女子48.6%、中国男子42.2%、女子57.5%、韓国男子55.5%、女子44.5%で、日本・中国と米国・中国で男女比が逆転しており、日本・中国の女子の割合は約6割になっている。
また、学年別に見ると2年生のみが対象となった韓国以外は、いずれも1年生が最も多く、日本は34.9%が高1生(米国47.1%、中国31.9%)。高2生が33.2%、高3生は31.9%だった。回答者の学校での成績自己評価は、日本は「上・中の上」が24.8%(米国41.9%、中国45.0%、韓国24.3%)「中」が41.4%(米国50.5%、中国45.0%、韓国43.7%)、「中の下・下」が32.9%(米国6.9%、中国12.7%、韓国31.3%)で、韓国と並んで7割以上が「中」以下と回答している。
最大の謎は、調査時期である。
調査の実施時期は、2005年の10月から12月。高3生は、センター試験出願が始まる時期であり、受験勉強が本格化するタイミングである。
「ゆとり教育」は、彼らにとっては不可抗力的に降って湧いた制度であるに過ぎず、その点において、彼らには何んの責任もない。
「ゆとり」を批判したいのは、当方とてやまやまな気持ちであるが、その勢いで、なんでもかんでも高校生たちの現状にダメ出しをしたがるのはいかがなものか。
ともあれ、まったくもって良く分からない調査なのである。
ワケわからん小生にどなたか、わかりやすく御解説いただければ幸甚。