【以下weblogconcent3の許諾を得て引用。異なる2つのスクラップブックに同時投稿はできないらしく。】

梅田望夫氏の2月の新刊『ウェブ進化論』を読んだ。

あとがきも含めて249頁ほどの新書だが、SNSや、Web2.0などウェブの現在がコンパクトにまとめられている。半分近くがグーグル論で、これにはかなり教えられるところが多い。

「グーグルはコンピュータメーカーである」という分析紹介などは実に明快・爽快である。

「アドセンスがもたらす経済格差の解消」など、著者自身が言う「楽観主義」による楽観が過ぎると批判する向きもあるかもしれないが、これは英語圏の発展途上国に現れている現実のレポートであるから、それが今後、どれだけ現実的な効力を持つものになっていくかどうかにかかっている。

無論、こうした「現実」を現時点で取り上げる視線こそが、オプティミズムであるのだが、こういう楽観はあって良い。

ネットが当たり前のものになって、とにかく使い倒せばいい道具であって、別段そこに新たに発見されたりするようなものはない、せいぜいがリアル社会が繰り返して来たことをフルに踏襲するだけさ、といった「分かったような」顔をしたがる論調が多いなかで、実に瑞々しいのである。

ほかにロングテールの今後など「これから」を感じさせる記述が鏤められているのだが、棋士の羽生善生との会話からまとめられた「インターネットの普及がもたらした学習の高速道路と大渋滞」は、実に未来的示唆に富んでいる。

将棋を学べるサイトや、アプリケーション、オンライン対戦などを通して、ネットで学んで奨励会二段の強さまでには高速で到達できる学習環境が用意されているという話である。

パソコン甲子園の入賞校に普通科高校が登場 していることについて、プログラミングの独習環境としてのウェブの重要性を先にエントリしたが、似たことが、他の分野でも起きているということだ。

Wisdom of Crowdや「総表現社会」という概念には異論があるものの、あらためてネットにしっかりと向き合ってみようという元気をくれる本である。

梅田 望夫
ウェブ進化論 本当の大変化はこれから始まる