軽い肥満の人は標準体重の人より早死にしない?
アメリカ政府が運営している疾病予防管理センター(CDC)の調査結果が話題になっている。
調査によると、体格指数(BMI)が25から30の人は標準(18.5から25)の人よりも死亡リスクが6%低かった、ということだ。。
この調査結果は1月2日のジャーナル・オブ・ジ・アメリカン・メディカル・アソシエーション(JAMA)に掲載された。
日本のニュースでは、「軽い肥満の人は標準体重の人より早死にするリスクが低い」という紹介の仕方をしている。
この話を聞いて、「太ること」に危機感をいだく意識が希薄になってしまうとしたら、ちょっと問題だと思う。
調査では「BMI」を指標にしている。
「BMI」は体重(キログラム)を身長(メートル)の2乗で割って算出した数値だ。
筋肉と体脂肪の重量に着目する「体成分バランス」は肥満傾向を知る上で重要なのだが、「BMI」からは「体成分バランス」は見えてこない。
「BMIの数値が標準よりやや高め」という状態のとき、
★筋肉量が多いのか
★体脂肪が多いのか
で、その人の肥満傾向はまったく異なってくる。
体脂肪に比べて筋肉のほうが比重が高いので、筋肉量のわずかな変化でも「BMI」の値は大きく変動する。
一方、「BMIの数値が標準よりやや高い」ことの原因が、体脂肪によるものだとしたら、「余分な体脂肪の量は相当多い」と理解する必要がある。
スポーツクラブなどには体成分検査の測定器が設置されていて、筋肉と体脂肪の割合を定期的に計ることで自分の肥満傾向をチェックすることができる。
測定結果レポートでは、標準体重の範囲に収まっている場合でも、筋肉と体脂肪の割合で下記のように区分して表現してくれる。
【1】標準体重普通型
【2】標準体重強靭型(筋肉量が多い)
【3】標準体重肥満型(脂肪量が多い)
【2】の、標準体重強靭型(筋肉量が多い)という人は、ちょっと運動(特に筋トレ)を強化するだけで「BMIの数値が標準よりやや高い」グループにシフトするだろう。
そのグループと、アメリカ疾病予防管理センターの「BMIの数値が標準よりやや高め」のグループが重なりあうものと仮定すれば、いかにも納得のいく調査結果ではないだろうか。
スポーツトレーニングの現場や、健康管理の意識の高い人の間では、疾病予防管理センターの調査を待つまでもなく、健康なカラダの理想形は先刻承知済み、と言えなくもない。
健康意識が高いので、生活習慣病への配慮もあり、結果的に死亡リスクが減っていると想像できる。
問題は【3】の標準体重肥満型(脂肪量が多い)の人が、さらに脂肪を増やしてBMIの数値が標準よりやや高くなっているケースだ。
「多少太っているほうが死亡リスクが低い」
などと安心していられるだろうか?
「標準体重肥満型」はいいかええば「太りやすい」ということ。
「多少太っているグループ」を通りこして、「正真正銘太っているグループ」にシフトしてしまいやしないか。
アメリカ疾病予防管理センターの統計サンプルが、「標準体重肥満やや超過型」のグループが少なかった可能性が高い、と想像したら・・・・・