近年、日本における3大食物アレルゲンは、鶏卵・乳製品・小麦といわれています。(以前は鶏卵・乳製品・大豆) 

鶏卵・乳製品による食物アレルギーの多くは乳幼児期に発症し、成長とともに寛解していきますが、小麦アレルギーは成人してから突然発症する場合もあり、難治性であるといわれています。

古くからBaker’s Asthma(パン屋喘息)や稀に子供が小麦アレルギーを発症することは知られていましたが、昨今は大人のグルテンアレルギーが特に増えているそうです。

小児期には小麦アレルギーにてアトピー性皮膚炎が起きることは、よく知られています。

 

 

月見  原因となるアレルゲン

グリアジン・グルテニン・アルブミン・グロブリンというタンパク質であることが知られています。また、それらタンパク質の糖鎖部分に抗原性が考えられる事例や、炭水化物系のアレルゲンもあるという指摘もあります。

免疫力が低下をしていると、体内に入りこんだ物質を異物だと勘違いし、過剰に反応しやすくなるため、アレルギー症状を発症しやすくなります。特に摂取する機会が多い小麦粉は注意が必要と言われています。

 
 

月見 セリアック病、グルテン不耐症との違い

小麦アレルギーが小麦に対する免役反応なのに対し、セリアック病は小麦の成分「グルテン」に反応し、小腸を攻撃する自己免疫疾患です。

セリアック病と混同されがちなグルテン不耐症は、グルテンを消化する酵素の不足・欠如が原因で、セリアック病とは異なる疾患です。

 

小麦アレルギー

  • 小麦に含まれるタンパク質に反応
  • 小麦に対する免疫反応が原因(小腸だけではない)
  • 検査には即時型アレルギー反応(igE)、 遅延型アレルギー反応(igG)が利用される

 

 

セリアック病

  • グルテンに反応
  • 小腸の損傷を特徴とする自己免疫疾患
  • 検査には「igA」抗体検査が利用される

※グルテンフリーという言葉を一躍有名にしたテニスのジョコビッチ選手は、セリアック病だそうです。

 

 

グルテン不耐症

  • 非セリアックグルテン感受性とも呼ばれる
  • 酵素不足・欠如などが原因
  • 抗体検査では発見できない
 
 

ヒヨコ  検査方法(血液検査)

まずは血液検査(igE検査)を受けるのが一般的ですが、「遅延型」食物アレルギー、セリアック病グルテン不耐症の場合はigE検査では発見できません。

検査方法については、アレルギー検査についてもご参照ください。

 
 検査方法保険適用
即時型アレルギーigE検査 ※1○ ※2
遅延型アレルギーigG検査×
セリアック病igA検査
小腸の内視鏡検査
グルテン不耐症igG検査×

 

※1 igE検査では自己申請により小麦の成分である「グルテン」「ω5グリアジン」も調べることができます。また洗顔石鹸などに含まれる「加水分解小麦タンパク」に対するアレルギーは「グルパール19S」という成分に対して調べます。(限られた医療機関のみで検査可能)

この中で「ω5グリアジン」の値が高い場合、小麦粉を食べてアナフィラキシーショックを起こしたり、原因食物を食べた後に運動をすると誘発される「食物依存性運動誘発アナフィラキシー」を起こす可能性が高いといわれています。
逆に数値が低い場合は「小麦が食べられるようになる可能性が高い」と言われています。

 

※2 アレルギー症状がみられる場合のみ保険適用となります。

 

 

ヒヨコ 治療法

小麦アレルギーだけでなく、アレルギーを完治させるのは、現代ではとても難しいと考えられています。一般的に、小麦アレルギーに対する治療は「小麦」が含まれている食品を制限する予防療法です。症状に応じて、完全に避けなければいけない場合や、少量であれば問題ない場合などがあります。

 

小児期から予防療法を続けた子どもの場合は、胃腸が成長しきると「グルテン」をアレルゲンだと認識しなくなる場合もあります。それに伴い、症状が軽くなったり、完治したりする場合もあるようです。
 
少量ずつ「小麦」の成分を体内に取り込む免疫療法である「経口減感作療法」もありますが、まだ研究段階の治療法です。現在は上記のように予防療法である食事制限をして、症状を軽減させるのが一般的で、完治させる治療法が確立されていないのが現実です。
 
小麦の低アレルゲン化法については、酵素処理あるいは加熱処理による方法と低あるいは無アレルゲン品種を開発する方法が試みられています。