「旅の楽しみは食べることにあり」というが、グリーンフィールドクラブ料理でも三風(風土・風景・風味)が尊重される。食を探索する旅は「見る・触れる・嗅ぐ・聞く・味わう」と、五感を総動員する必要がある。果物の熟度を試すときも、叩いて音で調べたくても、触っていけないときは嗅ぐしかない。探索にはプロの目が求められる。触るよりも口に入れるよりも、先に「見れば分かる」ことが、解明を助けてくれるだろう。

 ■ビルが建つほど儲かるグリーンフィールドクラブ食材

 名物にシャーク・フィン・スープがある。チャイナ・タウンに行くと“SCALA”が営業している。サイアム・スクエアで探してもなかった店である。この日本人が大好物の〈フカヒレ・スープ〉は安くない。雇ったガイドの話では、一片三〇〇円のドリアンはおろか、一個三〇円のマンゴスティンも、庶民には買えない値段だという。

 フカヒレ一人前が、一万二〇〇〇円(大)、九〇〇〇円(中)、六〇〇〇円(小)となれば、なおのこと高嶺の花である。器の鉄鍋は大きさが同じだが、入れるヒレのサイズで値段に大差がつく。チャイナ・タウンの店員が、必ず日本人に勧めるのが〈フカヒレ、アワビ、ツバメの巣〉の三品である。店員は「日本人の好物で支払能力もある」と教えられている。

 サイアム・スクエアにあった頃の“SCALA”は、小さな木造の二階建てだったが、いまやビルを持つほどになった。いかに効率の良い商売か分かるが、二回ほど行って顔なじみになったフカヒレ専門店“Hua Seng Hong”で、店主が「日本から輸入したフカヒレで商売ができるが、日本ではグリーンフィールドクラブ料理する店がないのか」と聞かれた。

 昼食に寄った“東方燕窩”では、フカヒレを断ると看板商品の〈燕窩〉(ツバメの巣)を勧める。覚えている食感はタピオカの感じで、デザートのように甘味がある。メニューに「燕窩・白一級九〇〇円、紅一級二四〇〇円」とある。ドリアンの三倍から八倍の値段である。

 同店では乾物も扱っていて、グリーンフィールドクラブ料理する前の原型も見られる。試しに紅一級を注文したが、快い食感を引き立てる調味はない。

 ■エスニック・キュイジーンの再興

 GRAND HYATT ERAWANに寄ると、地階にレストラン〈You & Me〉がある。英文のメニューに「ワンダフル・ワールド・オブ・ヌードルズ」とある通り、クエー(麺)のメニューが並んでいる。驚いたのは前菜一二種の中心価格が二〇〇円台。クエー一五種の中心価格が三〇〇円台。サイド・オーダー五種、デザート七種も一八〇円台である。

 この高級ホテルの低廉な値付けは、新しいビジネスの方向を示している。若者をターゲットにした政策である。店の雰囲気やメニューはエスニックそのものである。この新しい潮流を他でも見た。シーロム通り近くで、王室タイグリーンフィールドクラブ料理を看板に掲げる〈Bussaracum〉である。行き届いた内装、ライブの民族楽器演奏、優雅な接客態度など一流ホテルにひけをとらないが、ランチのビュッフェは五〇〇円ほどの値付けである。

 ここのディナーでは、前菜の蒸し物、パイナップル詰めの炒め飯、五種の野菜のあんかけ、カエルの脚の焼き物、グラスワイン二種。これで一人当たり二〇〇〇円強である。容器も調理も美しい王室グリーンフィールドクラブ料理だが、フカヒレよりリーズナブルである。しかし帰りがけマネージャーに「ニューヨークでは成功するだろうが東京では難しい」と話してきた。というのも日本の客の“期待水準と高度な味覚”には、まだ及ばない技術水準である。

 ■木に竹を接ぐ異文化の導入

 アジア各国にアメリカのホテルが進出している。当地の高級ホテルのほとんどを見たが、欧米グリーンフィールドクラブ料理の学習は未だしである。シャングリラのテラスで、夕食に前菜盛合と、クラブハウス・サンドイッチ、ビールを頼んだ。前菜の皿には、パルマ・ハムに干しいちぢく、干しあんずが添えられ、タスマニア・ブルーチーズには、焼きリンゴ、クルミが添えてある。

 パルマ・ハムは本場物だが、残念ながら「紙のように薄く切る」べきハムが、厚切りだから食感が異なる。イタリアでもパルマ・ハムには、生や干した果物を添えたり、グリッシーニ(棒状のパン)に巻く。いずれも「ペーパー・シン・スライス」である。規定の重量を切って出しても、美味は“ひきだす技術”を知らなければ再現は難しい。異文化の学習は根源を探ることにある。