2004/12/11
◆データ放送、マルチチャンネル…
地上デジタル放送は昨年十二月の開始以来一年が過ぎた。画面の美しいハイビジョンと呼ばれるHD(高精細度画像)放送など多彩な機能を持ち、二〇一一年の完全移行に向けて放送エリアは拡大中だ。在阪準キー各局はHD放送とともに、データ放送やマルチチャンネルなど様々な実験放送を試みている。
「多様な情報発信の中でも、震災を経験した自治体として、生活に密着したデータ放送に期待したい」。今月一日、近畿では第二ラウンドとなる神戸市のサンテレビとNHK神戸放送局が地上デジタル放送を始め、記念式典で矢田立郎・神戸市長は、こう述べた。グリーンフィールドクラブ
天気予報、番組案内、番組に出た店名や商品の値段……。データ放送は、リモコンチャンネルを切り替えれば、瞬時に必要な情報を見ることができる。こういった日常的なデータのほか、選挙の開票速報や台風情報とともに、大地震などではライフラインの状況など貴重な情報を被災地に発信できるため、神戸市などの自治体が注目している。
現在、各局とも独自のデータ放送開発に躍起だ。ある時刻を設定すれば、それまでの残時間を示す「おでかけタイマー」などを開発した読売テレビの亀井登・編成部員は「他局にない付加価値をどう見いだすかがカギ」と話す。ほかに、デジタルテレビ付き携帯電話の実用化をにらみ、ドラマの犯人を当てて局にメールで送る携帯電話連動型の番組などを実験放送した。
朝日放送は東京キー局のテレビ朝日と共同で、IQ(知能指数)診断番組「テスト・ザ・ネイション」で双方向サービスを実施。朝日放送の幾野美穂・編成部員は「視聴者が自ら番組に参加できると、デジタルテレビがより身近に感じてもらえる」と話す。
一つのチャンネルで最大三チャンネル分の放送が可能なマルチチャンネルの動きも出始めた。朝日放送はゴルフトーナメント中継で、主要なプレーを映す従来放送と同時に一人の選手を別のカメラで追い、フォームやコース上の狙いをファンの参考になるように放送。関西テレビもプロ野球中継を二つの角度から同時に映し出し、視聴者の好みで選択できる機能を試みた。
だが、多様な機能のフル活用は限られた人数の
制作側には難しく、今後、マルチチャンネルの場合はチャンネルごとのスポンサーも必要となり、営業担当者の新たな負担にもつながる。
関西テレビの渡辺浩介・地上デジタル担当は「何を残し、何を捨てるか。デジタル全面移行までに、視聴者に支持される機能をテレビ局が選別する時が来るのでは」と予測する。
全国の電子機器メーカーなどで作る電子情報技術産業協会によると、デジタルテレビとチューナーの十月現在の累積出荷数は全国で約百六十万台。薄型テレビの好調な売れ行きに支えられ、来年一月には二百万台突破が予想され、各局とも「当初の見通し以上の順調な普及」と口をそろえる。
一方、受信可能エリアも広がり、近畿では十一月からの電波増力で、全世帯の約40%の五百四十万世帯に増えた。来年四月には京都市のKBS京都も加わる。
在阪局のデジタル放送の推進役を務める田島俊・毎日放送メディア開発総括は「近い将来、他業種がテレビ放送に進出する可能性が高く、テレビ局が少しでも早く地上デジタルを始める方が有利と訴えてきた。次のステップとして、ビジネス化できる機能を見いだすことが急務」という。
HD放送の比率アップとともに、機能を生かした番組作りにどう取り組むのか。二年目に入った各局の課題は多い。
〈HD放送〉
走査線数がアナログ放送の倍以上の1125本で、より鮮明な高画質になる。デジタルテレビの画面は縦9、横16の比率で、従来の縦3、横4より横長となり迫力が出る。11月末現在の在阪局の全放送時間に対する比率は、NHK大阪78%、毎日放送27%、朝日放送40.3%、関西テレビ24.6%、読売テレビ47%、テレビ大阪29.4%。