2005/04/13


Macと相乗効果生む

 米アップルコンピュータのデジタル音楽プレーヤー「iPod」。世界では昨年末に千万台を突破。日本でも今夏に二百万台を超える勢いだ。日本法人の前刀禎明代表は米社のマーケティング副社長も兼任する。ソニーやディズニーなどブランド企業を経て腕を振るう日本市場の開拓。注目の音楽配信も控え「今年は最高にエキサイティングな年になる」とブームの加速に自信を見せる。文章執筆代行


納得できる

配信料金に

 ――デジタル携帯音楽プレーヤーの店頭販売シェアが二月にMD(ミニディスク)プレーヤーを逆転。iPodの白いヘッドフォンも街中で目立ちます。

 「業界では汚れるからと黒が当たり前で、白はおきて破り。しかし革新性を訴えるためにもあえて白を選びました。目立つヘッドフォンはそれだけで宣伝にもなります」

 ――音楽配信を日本ではいつ始めますか。

 「公式には年内としか言えません。ただ日本の音楽ファンが満足できる十分な楽曲数をそろえるつもり。価格も日本のユーザーが納得する設定で始めます。米国ではクレジットカードが使えない若年層でも楽しめるプリペイド方式が好評で、日本でも検討します」

 ――これまで日本で配信が広がらなかったのはなぜでしょうか。

 「一つは大きなレコードレンタルの存在です。日本市場で強かったMDを支えていたのがレンタル市場。このためiPodの日本向け販促では『グッバイMD』と訴えました。もう一つは既存の配信サイトが楽曲数も少なく使い勝手が良くなかったという点です」

 「レンタル市場がある環境は今後も変わりませんが、デジタルプレーヤーの利便性を実感している人は着実に増えています。オンライン書籍販売のアマゾンも書店がこれだけある中で伸びた。ライバルといわれる携帯電話の音楽配信も若い人がダウンロードの世界に足を踏み出す契機になっています。携帯電話は便利ですが、携帯ならではの限界もある。最後はやはりパソコン経由です」

 ――iPodで販売網も広がりましたか。

 「アップルの専門コーナーがある量販店は全国で約四百六十店。このほかにiPodを販売するレコード店などが約二百三十店あります。これまでは既存の取引先にいかに量を届けるかに力を割いてきたが、今年は新たな販路を開拓する年。雑貨を扱う西武百貨店系のロフトやHMVといったレコード店、総合スーパーの家電売り場にも広がりつつあります」

 「大型直営店で政令指定都市を押さえていく感覚ですが、ディズニーストアのように大量に出すつもりはない。日本の消費者は飽きやすいからです。米国にはスクール機能などを省いたミニストアもある。日本でも展開する可能性はあります」

ブランド力 

革新性が源泉

 ――iPodの人気はパソコン販売で相乗効果を生んでいますか。

 「これまでは『MacのアップルがつくったiPod』でしたが、昨年九月、iMacG5を発売するのを機に発想を転換、『iPodのアップルがつくったパソコン』として売り出しました。iPodミニのヒットで『ミニ』というブランドも確立。小型パソコン『マック ミニ』につながりました。価格は五万円台でインテリア製品としても使えるデザインは衝撃的だったはずです」

 ――ただブランド力ほど、パソコン市場でのシェアが伴っていない。

 「確かに全体の中でシェアは決して高くないが、特定の分野に限れば圧倒的な強さがある。私はソニーやウォルト・ディズニー・ジャパン、AOLジャパンでも仕事をしてきました。その中でアップルらしさを挙げるとすれば革新性へのこだわりです。時代の先を見通す目と形にする技術が強み。かつてのソニーにもそれがありました」

 ――法人需要の開拓も課題になりますね。

 「企業向けも積極的ですが、教育機関の方に力を入れています。東大の情報基盤センターへの納入を機に学校関係者の関心が一気に高まりました。今春だけでも約五十校がアップルのシステムや製品を採用します」

 「授業にMacのパソコンを使うだけでなく、iPodを語学学習の教材として活用するなど製品の利用の場は広がっています。六本木ヒルズにある森美術館では音声ガイドにiPodを使っている。米国では大学に加え、高校や小中学校の市場も大きい。日本でも専門チームを立ち上げています」

スコープ

リンゴマーク、繁華街に続々

 アップル製品を一堂に集めた直営店「アップルストア」。〇三年十一月の東京・銀座店=写真=を皮切りに大阪・心斎橋や名古屋・栄に出店。今夏に東京・渋谷、年内に福岡・天神に進出する。

 街の顔を狙い次々リンゴマークを掲げるアップル。「Mac」ブランドの威光が薄れている十代の開拓を課題に挙げる。日本法人の意向が強く反映されるという渋谷店の動向に関心が集まる。

業績データから

販路多様化で急成長

 日本国内の販売実績は二〇〇一―〇三年度はほぼ横ばいだが、iPodブームの効果が出始めた〇四年度に入り、上向いている。iPodミニを投入した七―九月は直営店を含めると、前年比一二%増、十―十二月は同二六%増と急伸した。

 今年に入っても一万円台の「シャッフル」が予約待ちの人気。ブームを追い風に直営店やネット直販に加え、レコード店や総合スーパーなどにも販売チャネルが多様化。「今は出来過ぎなくらいの好循環」(前刀禎明日本法人代表)という。

 課題はブームの波を“本業”のパソコンに広げられるか。七年ほど前にも半透明の斬新なデザインで「iMac」が人気を集めたが、国内シェアは三―五%程度にとどまったまま。ブランド力のある数々の企業で成功と失敗を経験してきた前刀代表の手腕が問われる。(高橋祐司)

 さきとう・よしあき 1958年(昭33年)愛知県生まれ。83年慶大大学院修了。同年ソニー入社。ウォルト・ディズニー・ジャパン、AOLジャパンのマーケティング&コンテンツ統括副社長を経て99年にライブドアを設立。04年4月米アップル入社、同年10月から日本法人代表。米本社のマーケティング担当副社長を兼任。