米アドビシステムズの事業展開が注目を集めている。今年に入り文書作成・管理ソフト「アクロバット」の新版と05年に買収した旧マクロメディアのマルチメディア技術「フラッシュ」の後継版の提供を相次ぎ開始。今後はインターネット時代の新たなビジネスモデルへの対応も強化する。ブルース・チゼン最高経営責任者(CEO)に戦略を聞いた。
 ―新製品のリリースに意欲的ですね。
 「今年出した二つのソフトは基幹をなす製品。特に『アクロバット8』は、これまでの最高の出来だ。経営統合後、短期間に成果が出せたことに誇りを持っている」
 ―アクロバットとフラッシュの無償プレーヤーソフトを統合する予定はありますか。
 「今週、米ラスベガスで開く会議で新しいソフトを披露する。『アポロ』というプロジェクトで開発したもので、フラッシュのSWFファイルもアクロバットのPDFファイルも、(従来のウェブサイト記述言語である)HTMLのファイルを表示できる」
 ―それはブラウザー(インターネット閲覧ソフト)の一種ですか。
 「ブラウザーではない。アポロ単独でも使えるが、従来通りほかのブラウザーに機能追加しても使える。文書をダウンロードしてオフラインで作業するのも可能だ。人々のコミュニケーションを豊かにするという戦略を推し進めるソフトになり、年末から来年初頭にかけて無償配布を始めたい」
 ―経営面における統合の成果は。
 「財務面でも成果は出ている。旧マクロメディアの営業利益率は旧アドビにくらべ低かった。しかし今は合併前の利益水準まで向上してきた。アドビの業務プロセスを旧マクロメディアに持ち込んで改善したためだ」
 ―マイクロソフトは次期基本ソフト「ビスタ」にPDFと競合する「XPS」という印刷フォーマット機能を盛り込みますが、どう対応しますか。
 「マイクロソフトは、長年にわたって我々の事業分野に入り込もうとしてきた。しかしXPSはうまくいかないだろう。PDFはXPSと違って(多くの会社が支持する)オープンな規格。対抗は難しいはずだ」
 ―インターネットを通じてソフトの機能を提供するSaaS(ソフトウエア・アズ・ア・サービス)の流れについては。
 「SaaSは伸び続けるだろう。我々も近い将来、欧米で新しいサービスを始める。無償配布のリーダーソフトにテレビ会議ソフトの機能を付ける。画面上のボタンを押せば、音声や映像をやりとりすることが可能になる。リーダーソフトはパソコンだけでなく携帯端末からゲーム機まで搭載されている。重要なのは氾濫するデジタル情報をいかに魅力的な形で配信可能にするかだ」
 【略歴】米ニューヨーク市立大卒、80年米マテルエレクトロニクス入社、83年米マイクロソフト入社、87年米クラリス入社、94年アドビシステムズに副社長として入社、00年CEO就任。
 【記者の目/ビジネスに創造性持ち込めるか】
 マクロメディアの買収により、アドビはユニークな会社になった。クリエーターにファンが多いのが旧マクロメディアの強みで、フラッシュで作られたゲームやアニメは日本でもネット上にあふれかえっている。こうしたクリエーターコミュニティーの自由な世界と、文書管理ソフトに代表される厳格な企業向けのビジネスをどう並立させていくのかが見どころだ。
 (清水信彦)