肺がんは肺の気管、気管支、肺胞の一部の細胞が何らかの原因でがん化したものです。肺がんは進行するにつれて周りの組織を破壊しながら増殖し、血液やリンパの流れに乗って広がっていきます。肺がんは喫煙との関係が非常に深いがんですが、たばこを吸わない人でも発症することがあります。周囲に流れるたばこの煙を吸う受動喫煙により発症リスクが高まることもわかっています。

近年、肺がんは日本人のがんによる死亡原因のトップとなりましたが、まだ増加する傾向にあります。


肺がんのリスク要因を考える上で、喫煙習慣を切り離して考えることはできません。

欧米では、喫煙者の肺がんリスクは、非喫煙者の20倍以上とされていますが、日本人を対象とした研究(2008年)では、喫煙者の肺がんリスクは男性で4.8倍、女性で3.9倍という結果でした。


さらに詳しく説明すると


肺がんのリスクを組織型別に見ると、扁平上皮がんについては男性12倍、女性11倍であるのに対し、腺がんについては男性2.3倍、女性1.4倍と大きな違いが示されています。欧米では、たばこが肺がんの発生原因の90%とされていますが、日本では男性で69%、女性では20%程度と推計されています。

また、受動喫煙によって肺がんのリスクが高くなるという科学的根拠は十分あると評価されています。受動喫煙者は、受動喫煙がない者に比べて20~30%程度高くなると推計されています。日本人で欧米に比べて喫煙の相対リスクが低くなっていますが、その原因のひとつとして非喫煙者でも受動喫煙の影響によってリスクが上がっていることが、特に女性において考えられます。

また、喫煙による発がんリスクの大きさは、同じタバコを吸う人でも遺伝子素因で変わる可能性が指摘されました。ほかに遺伝的素因として、発がん物質の代謝経路(たいしゃけいろ)にある酵素の活性などを決める遺伝子多型が、いくつか候補にあげられています。遺伝子関連の研究はまだ初期の段階にあり、根拠としては不十分です。