仕組みを知らないと資産を失う? 暗号資産を守る2つの鍵の話

 

前回、「ウォレットは財布ではなく、鍵を管理するツール」だとお話ししました。

では、その「鍵」とは具体的に何をしているのでしょうか?

Web3の世界には、常にセットで扱われる2つの重要なデータがあります。

公開鍵(Public Key / パブリック・キー)

秘密鍵(Private Key / プライベート・キー)

この2つの鍵の役割の違いを間違えると、一瞬で資産を盗まれてしまう可能性があります。

新しい時代の自由を手に入れるために、この「2つの鍵」の仕組みを完璧にマスターしましょう。

1. 最強の例え:「銀行口座」で考える
専門用語は脇に置いて、身近な「銀行」に例えてみましょう。

公開鍵(パブリック・キー) = 「銀行の口座番号」
誰かに教えても大丈夫?: はい、大丈夫です。

役割: 誰かに送金してもらうときに伝えます。

「ここに振り込んで!」とSNSや名刺に書いても平気な情報です。

秘密鍵(プライベート・キー) = 「銀行印」または「暗証番号」
誰かに教えても大丈夫?: 絶対にダメです!

役割: 口座からお金を引き出すための「決定権」です。これがあれば、誰でもあなたの口座から自由にお金を移せてしまいます。

結論: Web3では、この「口座番号(公開)」と「暗号番号(秘密)」が、数学的にペアになって発行されているのです。

2. 仕組み:なぜ「暗号」技術は安全なのか?
「口座番号から暗証番号がバレることはないの?」という疑問が湧くかもしれません。

ここに数学の魔法があります。

一方通行の魔法: 「秘密鍵」から「公開鍵」を作ることは、コンピューターで一瞬でできます。

しかし、その逆である「公開鍵」から「秘密鍵」を逆算することは、現代のスーパーコンピューターでも不可能とされています。

ネット上に「公開鍵(口座番号)」をさらしても、そこから「秘密鍵(暗証番号)」が漏れることは絶対にありません。

これが、ブロックチェーンが世界中で信頼されている理由です。

3. 実践:普段は見えない「秘密の署名」
「普段スマホを使っていて、秘密鍵なんて見たことがないけど?」と思うかもしれません。

実は、あなたがウォレットで「送金ボタン」を押した瞬間、裏側ではこのようなことが起きています。

ウォレットが「秘密鍵」を使って、電子的なハンコを押す(署名)。

「これは間違いなく本人が送金しました」という証明書がブロックチェーンに送られる。

本来なら毎回、何十桁もの複雑な暗号コード(秘密鍵)を入力する必要がありますが、それをウォレットがあなたの代わりに安全に代行してくれているのです。

4. 注意点:リカバリーフレーズとの関係
前回の記事でご紹介した「12個の英単語(リカバリーフレーズ)」を覚えていますか? 

実は、彼らには親子関係があります。

リカバリーフレーズ(親) > 秘密鍵(子)

リカバリーフレーズは、いわば「秘密鍵を生成するための種(シード)」です。 そのため、リカバリーフレーズが漏れるということは、そこから作られたすべての秘密鍵(全財産のアクセス権)がバレてしまうことを意味します。

結論:鍵の管理者は「あなた」しかいない
これまでのWeb2.0の世界(銀行やSNS)では、暗証番号を忘れても窓口で再発行できました。

しかしWeb3.0の世界では、秘密鍵やリカバリーフレーズを忘れたり盗まれたりしたら、世界中の誰も、たとえ開発者であっても助けることはできません。

「自由」を手に入れる代償として、「自分の鍵は自分で守る」という責任を持つこと。

それが、Web3.0時代という新しい「生き方」を選択するための、唯一の条件です。