自動車部品工場で制御エンジニアとして20年働いてきた私にとって、PLCは空気のような存在でした。朝出社すれば制御盤を開き、ラダー図と向き合う。それが当たり前の日常だったのです。ところが今年配属された新入社員の田中君は、情報工学科出身でPythonやC言語が得意な若者でした。
ある日、田中君が私のデスクにやってきて言いました。「先輩、なぜこの工場ではまだPLCを使っているんですか。もっと新しい制御方法があるのでは」。正直、カチンときました。しかし彼の質問には続きがありました。「IoTプラットフォームやエッジコンピューティングが普及する中で、PLC 時代遅れなのかと大学では議論になっていて。でも実際の現場を見ると、PLCがすごく重要な役割を果たしていますよね。その理由が知りたいんです」。
彼の真剣な眼差しに、私は考え込みました。確かに新しい技術は次々と登場しています。しかしPLCが現場で支持され続ける理由がある。それをちゃんと言語化したことがなかったのです。私は田中君を生産ラインに連れて行き、説明を始めました。PLCのリアルタイム性、ノイズ耐性、保守性の高さ。何より、機械が止まったら数千万円の損失が出る現場で、数十年の実績がある信頼性は何物にも代えがたい。
田中君は熱心にメモを取りながら聞いていました。そして「新しい技術とPLCを組み合わせることができれば、もっと面白いことができそうですね」と目を輝かせました。その言葉に、私も新しい可能性を感じました。古いものを守るだけでなく、進化させていく。それが私たちの役目なのかもしれません。