WEB小説[タイトルはまだ未定]
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CHAPTER1---俺と女の話

夕方くらいにふらりと現れ、少女漫画を買って行く、大人の女。
別に目の眩む美人でもなければ、ぐっとくるスタイルなわけでもない、普通の女。
俺はなぜかそんな女が気になっている。
俺はと言えば、小遣い稼ぎと暇潰しに本屋でバイトをしている平凡な高校三年生で、
特技もなければ不自由していることも何もない。
適当に付き合うそこそこな彼女がいて、まあ今までもそれなりにやってきて、
なんであの女が無性に気になるのか、正直自分でも自分を疑う。
その女のことについては、何も知らない。
たまに、週一回くらい店にやってきて、足早に少女漫画コーナーに行き、
迷わず商品を手に取り、さっさと会計を済ませて帰って行く。
わかっていることは、「漫画好き」と「年上」。それだけだ。

本屋の近くに家か学校があるのか、もしくは会社があるのかもしれない。
二十代前半くらいに見えるけれど、社会人なのか学生なのか。
いつもおしゃれとは言えない無難な服装をしていて、色白で薄化粧でぽっちゃりしている。
会計する時も愛想が良いわけでもなく、当たり前だが事務的にお金を払って去っていく。
知らない女をこんなに観察してしまうなんて、俺って気持ち悪いだろうか。
決して口外はできないこの秘密。なぜ口外できないかというと、タイプが違い過ぎる。
俺とあの女は共通点がなさ過ぎる。ベタな表現をすると、永遠に出会うことはない2人。
なぜだ。なぜなんだ。あんな女、全然好みじゃないんだ。

そして出会いは唐突に訪れた。本屋の前で。
「あのー、もう閉店ですか?」
バイトを終えて、店のシャッターを閉めていると、後ろから話しかけられた。
「あぁ、すみません。もう終わりなん・・・」
言いながら振り返ると、あの女が立っていた。いつもと同じ、さえない格好で立っていた。
あまりの不意打ちに硬直する俺。不思議そうに俺の顔を見る女。
なんでこんな時間に来るんだ。いつも夕方がお決まりの時間だろう。
こんな夜にわざわざ漫画買いに来なくてもいいじゃないか。
そんなに読みたいなんて、どんなに面白い漫画なんだよ。
頭の中でそんなどうでもいいことを考えていたら、女が口を開いた。
「終わりですよね?」
「あー、えーと、そうなんですけど、いいですよ。はい」
ぎりぎり意味不明の受け答えをして、俺はシャッターを開けた。
女は明らかに「?」という表情をしながらも、店の中に入り、
慣れた足取りで漫画を取ってきてカウンターに持ってきた。
俺はいつも通りの接客をして、女もいつも通りお金を払った。
いつもと同じ距離なのに、今日は一段と近くで見ている気がする。
見れば見るほど素朴な顔だ。どこにでもいる、平凡な女だ。
「帰るところだったのに、すみませんでした。ありがとうございました」
帰り際に頭を下げてそう言って去っていった。
なんだこれ、こういう出会いなのか。出会うつもりもなかったけれど。
帰り道、なぜか遠回りをして、漫画好きの女について考えた。
気になる理由は見つからなかったけれど、心は意外に浮かれていたかもしれない。