流れるように過ぎる日常。その中に置いてきてしまった”何か”が胸に迫る、爽やかで切ない大人の楽曲集に仕上がっています。
『テゴマスの青春』/1月22日発売
テゴマスって、身近な恋だとか、エールだとか、日常だとかの楽曲が多いイメージ。
たまに、当たり前すぎてなんだか照れくさくなっちゃうようなことまで丁寧に歌っていることもあれば、そんなまっすぐさが、逆に胸に刺さったりして。
今まではその純朴さゆえに、どこかテゴマスの印象自体に子どもっぽさがありました。(ただ、繰り返しになりますが、そこから放たれるメッセージはいつも大人に受け取られることのほうが多いような、そんな感じの。)
しかし、今作。
タイトルの「青春」は、大人になってしまった自分が自分へ贈るメッセージであり、はじめから対象年齢はいつもより高めに設定してあります。
歌唱技術も高くなり、自身もひとつふたつと年齢・経験を重ねた、いまのテゴマス。いまの2人にしかできない試みがギュッと詰まった傑作です。
☆蒼色ジュブナイル
なにかの岐路に立ち、青かったジュブナイル(少年時代・・・こんな言葉があるんですね、知らなかった。)を思い出しつつ、いままさに前へ踏み出そうとする一曲。
あの頃 僕らはいつでも ジュブナイルのかけら抱いて
それでも叫んで走った 無我夢中で
輝いてたばかりじゃない 抱えきれない希望と
一緒に悩んで進んだ 自分を信じて
風が運んだ声は僕らからのメッセージ
抱いていたのは「かけら」。なにもかも不完全だったけれど、ただがむしゃらに突き進んだあの頃。
若かったという一言だけで片付けられない熱量は、大人になったら失ってしまうものでしょうか。
☆ハルメキ
始まりの陽射し さえずる鳥
桃色の坂道 無我夢中下ってく
冒頭から、先ほどと同じ「無我夢中」というワードが入ってきます。
まるで青春の象徴とでも思わせる存在。我を忘れて夢中になれることがある、それだけで青春なのかも。
ナデシコだって ヒマワリだって
ドキッとするね 春の匂い
閉じてしまった 心の扉 君が開けてくれた
虹をのぼって 見つけにいこうよ
背中に 羽根はえたみたい
忘れていた 気持ち目覚めた
描かれているのは、暗いところから手をひっぱられて春の陽だまりに飛び込むような、キラキラまぶしい恋と疾走感。まっすぐすぎて直視できない、ザ・テゴマスワールドな一曲。
☆いつかの街
コートを脱ぎ捨て 草木が色を変え
空から落ちる雲が 僕を染める そんな気分さ
巡り 君を忘れていく 瞬く星に背を向ける
夜空を待った いつかの街は まるで夢の跡
巡り 遠くかすれていく それでも想いは残される
消えない景色 いつかの仕草 きらめいた
情景が美しい。これもテゴマスの世界観に欠かせない要素のひとつ。
ずんずんと突き進む風のような恋を描いたあとで、このしっとりとした未練を歌うのが、何と言うか、ますます儚い。
☆DONUTS
ゴスペラーズさんのつくった曲をテゴマスがうたう。なんて贅沢なの・・・。
軽快なクリスマスソングのような、「君と離れない!」・・・甘い一曲。
もし君が 僕に出会わなきゃ
恋の切なさも 愛しい痛みも 知らずにいたかもしれない
でもねもし僕が 君に出会わなきゃ
生まれない歌が こんなにあるんだ 今夜も歌ってあげるよ
このメロディーで 始めるのさ 君と
”恋愛を歌っている”という前提を外して聴いてみると、もう、最後の三行あたりがテゴマスの二人を指しているようで。それはそれで物語だなぁと、思ってしまったり。
もしも、テゴとマスがテゴマスになっていなかったら。どちらかが今ここにいなかったら。
この曲もあの曲もぜんぶ生まれていないし、他の人に歌われた場合のその曲は、もはや私たちの知るソレではないわけです。
こんなに素敵なハーモニーがあって、今こうして噛みしめることができるという奇跡に、なんだか感謝したくなっちゃいます。
☆ファンタジア
物語の最後は必ず 続きを匂わせるけど
僕に見えるリアルはいつでも 思い通りにいかないみたい
ビルの谷間 交差する人 誰もが欲しがる
愛がどこにあるか教えて サインはないかな
世界が騒ぎだした あなたを愛したから
せつない胸の痛み 感じてるよ
ここにあるのは、文学的で美しく、もの悲しい現実。
悲哀、模索、空虚。大切な人を失った暗い瞳に映る世界が、モノクロの映像で再生されます。
またしても、あんなに明るいラヴソングのあとにこの配置。制作側のなんかしらの意図なのか。
☆タイムマシン
失って気づく 何より大切な物に 今さら後悔 馬鹿だね
タイムマシンはないから 時間は戻せないから
子供じみた自分に サヨナラしなくちゃ
痛みさえ抱きしめ 季節を進んで行こう
君といた証だから
テーマは「決別」。前半じっくりと歌われる未練に、なんとか踏ん切りをつけて未来を見ようとする葛藤がストレートに表現されています。
前の曲「ファンタジア」の彼の話かな。そうだったらいいな。
☆サヨナラにさよなら
シングルとしてリリースされた一曲。やっぱり耳によく馴染んだこの曲にたどり着くと安心する。
まっすーの声の甘さが最大限に活きていて(こういう系にやっぱり強い)、こちらもザ・テゴマスなワールド。
約束しよう 君のことを悲しませるすべてのもの
ひとつ残らず忘れさせよう 「サヨナラ」にさよなら
僕らふたり これからもう忘れていい言葉がある
それが何かわかるだろう 「サヨナラ」にさよなら
うん、やっぱ恥ずかしくなっちゃう(笑)
・・・とここまで並べて、甘い恋→失恋→甘い恋→失恋、の曲順サンドイッチの話に戻るんですが。
”青春”に恋愛は不可欠というか、ある種それが全てみたいなところもあるので、このアルバムにも恋愛を歌った楽曲がたくさん収録されている。
けれど恋愛には、究極言うと上手く行くか行かないかの二択にしぼられちゃうところがあって。
だから、甘い→甘い→甘い→失恋→失恋・・・と並べちゃうとあまりに単調で味気なく、なんとも締まりのないものに仕上がってしまう恐れがあるというわけですね。まあ当然なんだけど。
聴くほうはあっちへこっちへグラグラ揺すられてHP減るけど、順番としては仕方ないのかな。
☆少年~Re:Story~
切り取った 季節の中に 忘れた物語
あの日 見かけた少年に 自分を重ねたよ
きっと いつかの僕なら 夢の続きを描くのに
今はまだ 昨日と ここにいる
いつのまにか自由に選択できる選択肢はなくなっていき、気づけば望んでいなかった場所でがんじがらめになっている時がある。でも、
少年の見た その夢に
応えないままでは まだ終われないから
もう一回 もう一回 この手を伸ばしていくよ
今はまだ 今はまだ 辿り着けなくても
僕だけの 物語 まだ続き 描きたいから
よく、ドラマとかで「○歳の自分が今の自分を見たらどう思うだろうか」みたいなセリフがあるけど、大半の人は、成長する過程でなにかを諦めてしまうんだと思う。
もしかしたら達成できるかもしれないのに、失敗したら恥ずかしいし、リスクもあるし、なんだかんだと言い訳してつまらなくして。
「しまうんだと思う」と書いたのは、私自身がようやく成人を迎えた程度の端っこの人間で、ちょうど今が、子どもと大人の入り混じった時期だからだけど。
それでも成長するにつれて感じることはある。自分はこんなに頑張れない人間だったかなと。
この曲の主人公が、もう一度抗おうと殻を破る瞬間を見届けながらも、自分を振り返ってはちょっとさみしい気持ちにさせられる。
”眩しい”テゴマスワールドのなかでも、大人味のアルバムなだけあって、身につまされる物語の多い今作。
☆innocence
冴えない気分 無いような自分 僕は何処にいる?
曖昧な日々 迷宮入りだ 君は何処にいる?
人ゴミにまた 埋もれる僕に気付いて
もうさ・・・今そのこと考えて落ちてんだから、ちょっと、傷抉らないでよね!!!とそろそろ叫び出しそうなわたし(笑)
それでもテゴマスは逃げるなと歌う。
ありのままの自分に向き合えと、目をそらすなと歌う。
欠けたハートのまま行こうぜ この夜の向こうへ
痛みも過去も 未来も明日も 全部道連れにして
ただ続いてくこの矛盾に 答えなど無くても
日々という名の仮想迷路 道標は無くても
失くした物に 落とした愛に また逢えると信じて
矛盾したままでも、前に進めばまた違う答えが見えてくるかもしれないと。
もしかしたら全部正しいかもしれないし。
ただ。道標も無しに行けっていうのは、『武器も持たずに丸裸で行こうとする』手越さんくらいの人間じゃないとなかなか難しいよね。
☆猫中毒
なんだろう、この、箸休め的な安堵感は!(笑)
いい意味で、この曲がここにあることに、とてもホッとします。
見ての通り、今回はきちんと歌詞と向き合えばそれなりに胸に刺さりエネルギーを消費することが多く、ねこちゅーのぶっ飛び感が与えてくれる”ホッ”がまさかこれほど偉大だとは。
やがて陽も沈んで 夜も段々更け始めて
眠くなったら甘えだして 前足フミフミ足踏みをして
冬なら毛布の中に入って 夏なら涼しい布団の端で
いつも振り回されてるのに ぼくらは”ねこネコ猫中毒”さ
ただ、この曲も「テゴマスの青春」という作品の中で開くと、違うイメージを受容できる。
自由奔放な猫の描写は、自由に未来を描けない大人たちの窮屈さの正反対にあるもの。
それは、二度とは手に入らない【青春】の象徴にも思えてくるから不思議です。
そこにむかって手を伸ばすか、そうしないかは自分次第で、もしかしたら、伸ばした手は届くのかもしれないけど届かないかもしれない。
分かってはいるけど、なかなか簡単にはいかないものです。
☆色鮮やかな君が描く明日の絵
夢から覚めた君は大人になったけど
今は眠らなくても続きを見られる
この手を掴んで
白く光る月を見上げてる 君の隣 横顔を見てる
白く光る心に触れて描く明日の絵
色鮮やかな君が描く明日の絵 キラリ輝いた
その光が誰かの色になる
「青春」という魔法が解けたあとも一緒にいる二人。
この二人は、二人が一緒にいるという、そのことさえあれば彼らは彼ららしく未来を夢見れる、という素敵な関係。
何かを失っても、誰かと共有することがそれを補う色になることもある。
煌びやかで軽いサウンドにのせて、途中で出てくる「ラララ・・・」のハーモニーがジブリ映画のような、ファンタジックな優しさを醸し出している一曲。
☆ヒカリ
PVが解禁になった時から数えきれないほど聴いたはずなのに、やっぱり私はこの曲ばかりリピートしてしまいます。
全編にわたって散りばめられたことばの欠片。そのどれもが痛くて痛くて、苦しいんだけど、同時に胸にしまっておきたいような強い衝動。
いつの間にか 夢見た未来で立ちすくんで
やがて「あの日に戻れたら」 そんなこと思って
無い物ねだりばかりで 今日をいつも蔑ろにした
何年経っても色褪せないような大事な大事な一日にしよう
もう二度と同じ日は来ないから
いつしか僕らは見失っていた こんなに世界が美しいコト
もう二度と忘れたくはないから
これからも僕は歩いていく 笑って泣いて歩いていく
この視界の全て 胸に刻んで
思い出がいつも背を押して 憧れがいつも手を引いて
ヒカリが道を照らしてる 果てしない旅は続いていく
当たり前だからこそ、改めて考えないと手のひらからするっとこぼれてしまうものってたくさんある。
「こんなに世界が美しいコト」も、「もう二度と同じ日は来ないから」、だから「大事な大事な一日にしよう」ってことも、みんな分かっているはずなのに忘れてしまう。忘れて、疲れてしまう。
当たり前のことに気付いてそれをそっと掬い上げることって、実は一番難しいのかもしれない。
そして解禁されたPVではカットになっていた後半部。
初めて聴いたときは、この壮大な世界が瞬く間にどんどんと広がっていく様子に、驚きました。あそこからここまでの伸びる余地がまだあったんだと。
転調してから終わりまでの全力疾走に心が震えること間違いなし。
これからずっと先も、歌詞をかみしめて一日の始まりにも終わりにも聴きたい、大切な曲になりそうです。
☆きれいごと(通常盤 Bonus Track)
自分を守るために 誰かを盾に使う
そんな自分は 要らない
決して ならない
つらくても つらくても
絶やさない 腐らない 偽らない
「きれいごと きれいごと」って
誰かが 僕らを 笑ったとしても
息吹く芽を 信じたい
何度でも 自分に種を蒔こう
自分が自分を諦めてしまうのは悲しい。せめて自分だけは自分の一番の味方でいてほしい、そんな思いのこもったストレートな応援ソング。
関係ないけど、私、「ドヤ顔」って言葉が好きじゃないんですよね。他人に対して使う場合は特に。
「ドヤ顔」。たった一言で、人の頑張りや誇らしさを一瞬にして辱めの底に落とすような、そんな悪意があるじゃないですか。
それ、頑張れない人が選んで使う揶揄の仕方だと思うんです。
☆月の友達(通常盤 Bonus Track)
相変わらずのまっすーワールドに、手越さんの手がけたロックなメロディーが加わり化学反応を起こす様は、まるでテゴマスの歌声そのもの。
単純に、テゴマスが作る楽曲は聴いていて楽しい。この曲で締められる幸せが通常盤にはある。
世界一周軽々 お前の元へカンガルー
いつも光照らすから 眩しくってサングラス
泣いてなんかないよ 目にほらホコリがボワっと
こんなの取ったらすぐに ぱちぱちトレビアン
ほらもうなんか、歌詞眺めてるだけで小気味良い呪文のよう。楽しくなっちゃいませんか?
この世界中で お前を一番幸せにね
してみせる必ず 俺の声で そうドリームはジャンボがいいじゃん
遠くで大きく見えた月も きっといつかは届くはず
いつまでも夢見た心で 届ける音楽 テゴマス
初心を忘れず、これからも進化した音楽を届け続ける。
コミカルな世界観の中に込められているのは、テゴマスなりの宣誓。
【テゴマスの青春、挑戦、そして脱却】
今回のアルバムに対しては、テゴマスの二人も今までにない自信と思い入れをのぞかせています。
これは彼らの挑戦であり、また、一段上へと旧イメージを脱する足がかりでもあると、これまでのタイトルロゴを並べて見てみてもよく分かります。
歌詞を読みながらきちんと向き合えば、一曲一曲からひしひしと伝わるものがあり、それは今後生きていく中で役に立つかもしれないものばかり。
テゴマスの歌は、地味だと言われます。
しかしそれは、あるべき姿での歌詞と旋律の出会い、語りかけるように織り重なる響き、そして素早く耳に馴染むということの結果ではなかろうかと今回思いました。
インパクトがあるわけではない。中毒性が高いわけではない。
そのかわり、耳を滑っていくだけの音楽とは違う、ちゃんと聴き込んだ者にしか与えられない深い感動がある。
歌詞と旋律の融和性。これを実現しているのは当然テゴマスの二人のハーモニー。
だから二人の旋律が溶け合うほどに、楽曲の中に浮かび上がる物語が色濃くなっていく。
歌詞と旋律と歌声が一体となって織り成すことの結果が「地味」だとしても、テゴマスが目指す音楽としてはそれは見かけにすぎないのだろうと思います。
このままテゴマスサウンドを突き詰めることに多大な未来を予見させた、この「テゴマスの青春」。
歌詞カードをオムニバスの小説のように紐解きながら少しずつ消化することが大切な体験となりそうな、メッセージ性の高い作品になっています!