皆さん、こんにちは。

本当にクソ暑い中東京ではオリンピックも開かれてしまった昨今、いかがお過ごしでしょうか。

 

僕は連休中ほぼ家にいて午後になってからちょくちょく買い物に行ったりしていましたが、乗っていた電車で人身事故が起こった結果車両に1時間閉じ込められ、その後更に1時間近く運転再開まで外で待たされるという散々な目に遭いました。

事故の瞬間を見ていたわけではないのでどんな風にぶつかったのかは知りませんが、フロントガラスにヒビが入っていたので相当な衝撃だったでしょう。

……できればこういうことは起きてほしくはないし、飛び込みだったならそういうことをする人が出てこない世の中になってほしいと切に思います。

最近では飛び込み防止用のフェンスがついている駅もありますが、あれがいかに有用かということもなんとなく分かった気がしました。

 

 

さて、今回は映画感想。

取り上げるのは、4連休の初日に観に行った『セイバー+ゼンカイジャー スーパーヒーロー戦記』

 

 

ニチアサ(日曜朝)でお馴染みの「仮面ライダー」「スーパー戦隊」による夏の劇場版が、今年はまさかのコラボレーション作品に。

「仮面ライダー」生誕50周年を記念して、「仮面ライダーセイバー」「機界戦隊ゼンカイジャー」に加え、歴代のヒーローがスクリーンに集結!

監督はこれまで数々の東映ヒーローを手掛けてきた田崎竜太、脚本は「仮面ライダーオーズ」以来東映ヒーローに関わってきた毛利亘宏が担当。

公開日のお昼頃の回に観に行きましたが、スクリーンには子供から大人まで結構な人数が入っていました。

 

 

・どの面下げて帰ってきた!むしろ大人が騒ぐヒーロー集合映画の再来!

 

去年は新型コロナウイルスの感染拡大によって撮影活動そのものがストップし、それぞれ別々の興行として冬以降に映画が上映されることになったライダー×戦隊のいわゆる「夏映画」

今年は実に2年ぶりの夏映画としての興行になるわけですが、なんと21年目にしてライダーと戦隊の本格コラボが実現しました。

 

が、実はこの「ライダーと戦隊のコラボ」「ヒーロー集合もの」というフォーマット、実は既に先例があることは忘れてはいけません。

……主に負の遺産的な意味で

 

始まりは実に9年前。

2012年、「仮面ライダーディケイド」「海賊戦隊ゴーカイジャー」というメモリアル作品の共演が話題を呼んだ『スーパーヒーロー大戦』が公開。

新旧ヒーロー揃い踏みということで発表された情報に多くの人が湧きましたが、実際の出来はというと5分に1回展開にツッコミどころがあるような散々なクオリティ。

ドラマパートもキャラクターの扱いが滅茶苦茶な上、なんせ数の多い東映ヒーローを明らかに作り手側が扱いきれておらず、常にどこかピントのボケたような映像を100分近く見せ続けられるというのが苦痛で苦痛でしょうがありませんでした。

 

それでも映画として興行が成り立った以上、この「大戦」作品はいわゆる「春映画」としてシリーズが続いてしまいます。

しかし現行のニチアサシリーズに加え夏映画、冬映画、Vシネマ等のスピンオフ作品と、制作シフトが既にパンパンなのも東映特撮の実情。

途中で監督が変わり、演出面が改善された時期もあったものの、上記の悪い面は直りきらなかったというのが正直なところです。

結局このシリーズは2017年の『超スーパーヒーロー戦記』を最後に作られなくなり、ライダーと戦隊の本格コラボは、そこから数えて実に4年ぶりということになりました。

(ちなみに2016年には、「藤岡弘、主演」と銘打って『仮面ライダー1号』が製作・公開。これはどちらかというと藤岡弘、映画なので、高純度の藤岡弘、が見たいという方にはオススメです)

 

そんな訳で夏の枠を占拠して「帰ってきてしまった春映画」と言われているのが、この『スーパーヒーロー戦記』。

PVの歴代ヒーロー達が採石場に雑多に並ぶ、身に覚えがありすぎる絵面だけでもう青春時代に培われた春映画センサーが反応してしまい、俺が見なきゃ誰が見るんだ!と勇んで初日に鑑賞しにいきました。

実際のところは『仮面ライダー 平成ジェネレーションズFOREVER』以降、この手の集合作には何らかのサプライズが仕込まれているというのが本音でもありますが。

 

 

・正に実家の味!な前半

そういう訳で鑑賞した本作。

 

結論から言うと、ぼく個人としては「大好き」な作品になりました。

 

まず前半の正に「春映画」的な冒険パートが、本作では真っ当に面白い

今回は「仮面ライダーセイバー」をメインに、これまでのライダー、戦隊シリーズが「禁書」、つまり物語として存在しているというメタフィクション的な世界観でスタート。

本来は禁書の守護者であった敵・アスモデウスが反乱を起こし、まぜこぜになった物語の世界を「セイバー」「ゼンカイジャー」のそれぞれのメンバーが駆け巡るというのがこの前半の主な内容です。

 

仮面ライダーセイバー/神山飛羽真はゼンカイジュラン/ジュランと共に「里見八犬伝」の世界で犬士となるヒーローを探す。

ゼンカイザー/五色田介人は仮面ライダーブレイズ/新堂倫太郎と共に「西遊記」の世界で天竺を目指す。

 

それぞれ過去の戦隊のメンバーやライダーが現れては変身して戦う(割と1人1人の出番は短い)というのがいかにも「春映画」らしくも、キャラクターの出てくるシチュエーションやセリフ回しがしっかりと考えられており、また2つの視点が交互にテンポよく切り替えられていくため「春映画」の悪いところだった「緩慢な話運び」はある程度解消されています

 

特に僕がグッと来たのは再登場自体がかなり久しぶりなシンケングリーン/谷千明

「侍戦隊シンケンジャー」自体もう12年前の作品ということで今の子供向けのキャスティングとは言い難いものの、戦隊におけるいわゆる「成長枠」として置かれていた彼が非常に貫禄のある、しかし彼らしくもある絶妙な塩梅のキャラとして描かれているということに今回の映画の姿勢が現れていてとても好感が持てました。

 

ライダーからは仮面ライダーゼロワン/飛電或人、仮面ライダージオウ/常磐ソウゴ、そして仮面ライダー電王でおなじみのイマジンズが登場。

人気キャラと最近のキャラに絞ったキャスティングでしたが、生身で登場する或人とソウゴは短い出番ながらキャラの解釈としては満点だったと思います。

しかし或人社長、ギャグのテンポがとうとう福田雄一映画みたいな領域に達してましたね……。どこへ向かっているんでしょうか。

 

 

・ヒーローの歴史でぶん殴ってくる後半

 

そして物語の本題となるのが後半。

「「仮面ライダー」も「スーパー戦隊」も、全て1人の作家によって生み出された物語上の存在である」ことが判明!

自分達「仮面ライダーセイバー」すらもそうであることを知り、主人公である飛羽真が衝撃を受けながら、敵に一度完敗するという展開です。

 

この展開、先行作品である『平ジェネFOREVER』『仮面ライダージオウ Over Quartzer』と構造としてはほぼ全く同じなので、大人であればだいたい予想できます(伏線もこれ見よがしに置いてあるので)。

ただこの2つと大きく違うのは、「では誰がこの物語・世界を作ったのか」という問題に大きく踏み込んでいる点。

そしてそれこそがこの映画の正に主題でもあります。

 

「この世界を作ったのは誰か」に対する究極の解答、それは……

 

 

原作者・石ノ森章太郎(1938~1998)!

 

 

 

……おっしゃる通りでございます!

もうそれしか言えないぐらいのド直球の解答です。

そして既に情報公開されているのでこの記事ではその辺も言及します。

石ノ森章太郎を演じるのは、事前予告では「謎の少年」として発表されていたベテラン若手俳優・鈴木福さん。

ぶっちゃけこの映画のキーパーソンということもあって超重たいキャスティングです(福さんがライダーオタクであることも踏まえての起用だったでしょう)が、やはりそこはベテランということで「仮面ライダーができる前」の石ノ森少年を丁寧に演じており、本来雑多なヒーロー達が画面を埋め尽くす類の作品であるこの映画の格を一段上げてくれています。

あとは石ノ森章太郎の特徴として「シスコン」を取り上げてくれたのが面白かったですね。

「セイバー」のヒロインである芽衣ちゃんがまたしっかりと「優しい姉」像を演じきっていてこれもまた好演でした。

全く相手にされなかった「ゼンカイジャー」のヒロイン、榊原郁恵さんもまたいいコメディ演技で僕は好きです(介人が異世界に消えた後の慌てた演技も細かくて好きです)。

 

 

敵に一度敗北した後、ヒーローを描くことに挫折した石ノ森少年とそれを説得する飛羽真のやり取りは本作の白眉(色んな意味で)。

「石ノ森章太郎が目指したのはどういうヒーローだったのか」をクリエイターの視座に改めて立ち、問い直していく一連の会話はこれが「仮面ライダーセイバー」の映画だから成立した場面でもあり、ヒーローものを語る上で色んな人に見てほしい場面でもあるので、ここは具体的な言及は避けます。

画にも強力なパワーが宿っているシーンなので、ぜひ劇場に足を運んでください。

 

そしてそのシーンを乗り越えた末の、アスモデウス率いる怪獣軍団との再戦が本作のクライマックス。

正直この辺は悪い意味での「春映画」がちょっと漏れ出してます

アカレンジャー「戦隊の力を見せてやれ!」

仮面ライダー1号「ライダーの力を見せてやれ!」

の下りとか、完全に運動会ですからね。

ただ、石ノ森少年とのやり取りも踏まえてここに至るまでの「物語の強度」が文字通り非常に高まっているので、多少の悪ふざけや開き直りは全然許されるぐらいのバランスにはなっています。

中でも追い詰められたアスモデウスがヒーロー達にぶつける「オワコン」宣言はある意味衝撃。

「お前たちの平成って醜くないか?」に続き、何かしらの流行語大賞でも狙ってるんでしょうかこの悪役共は。

 

 

・1ヶ月早いお盆。21年の時を経て、「石ノ森章太郎に捧ぐ」メッセージ

更にこのクライマックスを終えた後が、運動会に付き合ってきた人たちへのご褒美シーン。

 

ここまで見事に仕上がってきた石ノ森章太郎(演:鈴木福)に、最後にぶつけるべきキャラクターとは誰か?

 

……そう、元祖「仮面ライダー」、本郷猛(藤岡弘、)です。

 

実に5年ぶりとなる、公式作品での本郷猛の再演。

藤岡さんの濃すぎるパーソナリティもあって、作品によってなかなか扱いの安定しない本郷猛でしたが、今回はとうとう藤岡さんと本郷猛が完全に一体化していました。

それぐらいに凄まじい演技だったのです。

 

なぜならそれは、映画を通して行われる「故・石ノ森章太郎」への言葉だったから。

 

既にこの世を去った者がスクリーンの上で蘇り、今も生きている人との邂逅を果たす場面。

皆さんも思い浮かべるものが他にあるかもしれませんが、「現実と空想が入り混じる」本作ほどそれがピッタリハマった映画は他に無いのではないでしょうか。

まさかお祭り映画だと思っていた本作で、こんなにも「映画」としての役割を十二分に活かしたシーンに巡り合えるとは思いませんでした。

 

色々な粗があっても、もうこれをラストに描いてくれた時点で僕の中では100点、いや1000点の映画です。

細かいことはグチグチ言いません。

 

8月からは副音声上映も行われるので、映画自体を1度見た上で、できればお盆の時期、「石ノ森先生」が帰ってきているかもしれない頃合いを見計らって、また嚙みしめてみるのも一興かと思います。

 

 

 

 

……さて、『スーパーヒーロー戦記』の感想は以上になるのですが、今回はもうちょっと続きます。

 

・ところで楽しそうだった新作、「リバイス」

 

 

なんと今回、9月からスタートする新作、「仮面ライダーリバイス」のお披露目もありました。

2年ぶりの夏映画ということで忘れていたのもありますが、今回はなんと、『スーパーヒーロー戦記』終了後にだいたいTVシリーズ1話分ぐらいの短編がついてくるという「サプライズ2部構成」

 

先日製作発表会見も正式に行われたので言えますが、「ホバーバイク」とか、「ディケイドがサメだった」とか、「CV:木村昴のうるさい奴が相棒」とか、作品の持ち味となる色々と濃い要素を前面に押し出した感じの内容でしたね。

「カメラを止めるな!」の夫婦キャスティングとか、どちらかというと大きなお友達向けに要素を散りばめてバズらせたいみたいな思惑もありそうながら、主人公が銭湯を拠点にしていたりとまた今までに無い雰囲気の作品になりそうで、今から楽しみにしています。

 

……しかし、『スーパーヒーロー戦記』の方に出てきた時の鴻上会長(「仮面ライダーオーズ」のキャラクター)の扱い、正気か?となりませんでしたか?

自分はなりました。

デンライナーのオーナーといい大物をピンポイントで使ってくるの、東映だからできる職人技なんでしょうね……。

 

 

そんなわけで、とにかく濃い98分でした。

本当に楽しいので皆さんぜひ観に行ってください。

ここまでのお相手は、たいらーでした。